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第512話 王城での面談3(獣人の親子。)

武雄はまずはヴィクターとジーナを連れて入室していた。

ヴィクターとジーナはアズパール王の対面の席に座り、壁際に第3皇子一家、扉側に武雄とアリスとオルコットとクラークが座っている。

「さてと、来たな。

 タケオ、始めよう。」

「わかりました。

 ヴィクター、ジーナ、緊張しないで良いですからね。」

「はい。」

「わかりました、ご主人様」

「うむ。

 2人とも魔王国の貴族だと聞いたが間違いないか?」

「はい。私達は魔王国で爵位を頂き領地を治めていました。」

「そうか。タケオ、これが魔王国からの正式通告だ。」

アズパール王は懐から1通の書状を取りだし武雄に渡す。

「・・・これはヴィクター達に見せても構いませんか?」

「あぁ、構わない。」

アズパール王の許可を貰い武雄はヴィクター達の目の前に移動すると書状を広げ中身を見せる。

ヴィクターとジーナは中身を一瞥しても動揺しないでいる。

武雄は見せ終わった後に書状をアズパール王に返す。

「ファロン元伯爵、どう感じる?」

「領主の空白は避けるべきとの考えから魔王国の対応としては順当だと・・・ただ早いとは思います。」

「そうだな。我々の元に着いた日を考慮してもお主達がカトランダ帝国で売られていた時には既に後任を据えていた可能性がある。

 ・・・だが、他国の事情ではあるし正式に通告もされている。

 すまんが伯爵程度では我が国の利益にはなり得ないと考えている。」

「いえ、私もジーナも返り咲きたいという願望はありません。

 ただ・・・」

ヴィクターは若干顔付きが険しくなる。

「ふむ、その感情は正しいと我も思う。

 だがタケオの下で任期を全うしてから考えてくれるか?

 25年あればこちらの準備もある程度整うだろう。」

「わかりました。」

ヴィクターは頷く。

「それと魔王国のヴァレーリ陛下の種族は何なのか言えるか?」

「・・・」

ヴィクターは驚きながら黙ってしまう。

「お父さま?」

黙ってしまったヴィクターにジーナが心配そうな顔を向ける。

「・・・言えないか?」

「いえヴァレーリ陛下の出自は特に秘密にしているわけでは・・・あまり口外していない情報ですのでそれに・・・いえ、お答えするのに躊躇しました。申し訳ありません。」

ヴィクターが頭を下げる。

「構わん、いきなり質問をした我も失礼だったな。

 実はな、我が国から毎年年始に贈り物をしていてな。

 それが喜ばれているか、種族がわかればもっと喜ぶ物を渡せそうだろう?」

「・・・アズパール王国からは銀製の食器セットと瓶詰めのワイン50本程度が毎年来ていたと覚えていますが。」

「うむ。ただし詳しい目録は陛下や側近しか知らされていないので銀製の食器等としか見ていないんだが・・・」

アズパール王は顎に手を当てながら言う。

「質問の陛下の種族なのですが我々は『不死者』と言っています。

 人間種からは吸血鬼(ヴァンパイア)と呼ばれる者になるのですが、銀が苦手でして・・・」

「・・・それはすまないことをしていたな・・・」

アズパール王は難しい顔をさせながら言う。

「毎回『いつもの新年早々の嫌がらせだな!』と言いながら食器は食堂へ、ワインは嬉しそうに抱えて自室に持って行っておりました・・・返礼の品は見たことはございますか?」

「確か・・・剣と盾だったか?」

「はい。アズパール王は手に取られていられましたか?」

「いや・・・確か箱を開けさせて見ていたと思ったが・・・

 何か魔法がかかっていたのか?」

「はい・・・呪いや病気の類いではないのですが・・・

 その・・・持つと掌がむず痒くなる仕様になっていたはずです。」

ヴィクターの説明に武雄は「地味に嫌な仕様だよね」と思いアリスは「子供の喧嘩かなぁ?」と思うのだった。

「・・・アズパール王国(うち)から毎年銀製の食器を送るのは今の国王陛下になってからか・・・」

「はい・・・知っていて地味な嫌がらせを毎年していると魔王国の上層部と領主達は思っています・・・」

「では、今後は送る品を変えた方が良いだろうか?」

「・・・お義父さま、もう年越しなんですけど・・・準備は?」

「・・・発送待ちであと3日後に出立する予定だったと思う・・・」

「父上、魔王国のヴァレーリ陛下には申し訳ないですけど、今からは間に合いません。

 やるなら来年分から変えれば良いでしょう。

 それに陛下の裁可も必要でしょうし、どうせ時間がかかります。」

ウィリアムが苦笑する。

「そうだな。

 ヴィクターと言ったな。ヴァレーリ陛下が喜ぶものは何だと思う?」

「そうですね・・・アリス様でしょうか。」

ヴィクターがアリスを見ながら言う。

「え!?私!?」

アリスが驚きの声をあげる。

「ふむ・・・人間(・・)が趣味なのか?」

「いえ、そうではなくてですね。

 強者との戦いが趣味なんです。

 ヴァレーリ陛下は先の国王陛下の策略にハマったというか・・・正直・・・そのなりたくて国王になっていないのです。」

「策略とな?」

「はい。先の国王陛下が家臣に内緒で御前試合の副賞に『国王の後任』というのを入れまして・・・」

「ヴァレーリ陛下が優勝したと。」

「はい。

 事前に公表されていた目録にも小さく書かれており民の目の前でも宣言していたのでうやむやにも出来ず・・・最低任期を全うすることをヴァレーリ陛下は考えています。」

「そうか・・・で、その任期はいつまでなのだ?」

「再来年だったかと。来年中には後任が決まるはずですが、どうやって決めるかは私が領主をしている際には通知されておりませんでした。」

「はぁ・・・今更変えても不審がられるか?

 では、辞めるまで今の銀製の食器等を送らせて貰おうか・・・」

アズパール王がため息をつく。

「ちなみにですが、ヴィクター。魔王国の国王の選定はどうやっているのですか?

 名前が毎回変わるそうですが。」

武雄が不思議そうな顔をして聞いてくる。

「先の陛下が選定方法を決めるのが慣わしです。

 御前試合だったり領主間討議であったり、知略戦であったり・・・よほど変な事を考え付かない限り許可される見込みになっています。

 普通は事前に幹部程度には相談しているはずなのですが、前回は違いました。

 なので、現陛下はしがらみのない純粋な武力の頂点にいる方です。」

「そうですか。

 では、その現国王陛下を決めた御前試合の正賞は何なのですか?」

「宝物庫の中から好きな物を1つ選び、先の陛下より下賜されていたはずです。」

「何を下賜されたのですか?」

「確か・・・『銀聖』という銀のフルプレートだったかと。」

「??銀が苦手なのにですか?」

アリスが聞いてくる。

「はい。そのフルプレートはヴァレーリ陛下でも着れる特別製でして。

 魔法的な保護が何重にもされている物になっていたはずです。

 詳しい効果までは覚えていませんが。」

「銀のフルプレートは高価だし、いろんな魔法的な効果も出せると聞いたことはありますが・・・

 もしかして銀のフルプレートが欲しかったのでしょうか?」

「はい。ヴァレーリ陛下は御前試合で『銀聖』が欲しいと豪語されていました。

 それに退任時にも何か持って行くと言っていました。」

「そうか・・・とりあえず・・・魔王国については来年、再来年に国政の変更があるのだな?」

「はい。

 申し訳ありませんが、もう領主達や王軍幹部が国王選定に動いていてもおかしくなく。

 魔王国絡みでは現状で話せることはあまりないかと。」

「いや、とても有益な情報だった。

 ヴィクター、ジーナ、とりあえずタケオの下でしっかりと働いてくれ。待遇面で不満があれば我からも口添えをしてやるからな。」

「アランさん・・・ない物はないのですけどね・・・」

武雄がジト目でアズパール王を見つめ抗議をするが気にもされない。

「それに25年後なら私達も引き抜きをしても良いのでしょう?」

レイラが言ってくる。

「レイラさんはこの2人が欲しいですか?」

「ええ!タケオさんやエルヴィス家に鍛えられている執事ですからね。

 厚遇で迎えるわ♪ヴィクターさん、ジーナさん、その時に声をかけさせて貰いますからね♪」

「「はぁ・・・」」

ヴィクターとジーナが苦笑しながら頷くのだった。

「ふふ。将来はどうなるかわからんな。タケオも部下に飽きられないように待遇を改善させられるようにしっかりと働く事だな。」

「ええ、そうですね。」

武雄も苦笑するしかないのだった。

「では、2人への聞き取りは以上としよう。」

アズパール王の言葉に皆が頷くのだった。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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