第499話 もうすぐ町への帰還。
町の門が見える場所まで武雄達は戻って来ていた。
「マイヤーさん・・・今日はもう日も高いですし、隣町までは行かないですよね?」
「でしょうね。どうしましたか?キタミザト殿。」
「とりあえず・・・さっさと報告してゆっくりと寝たいですね。」
「ええ、確かに。
今日ぐらいなら飲酒も良いですかね?」
「おや?マイヤーさん、任務中は飲まないのでは?」
「あぁ・・・そうでした・・・今は任務中でしたね。
実務で戦闘をすると酒が飲みたくなるんですよ。」
「そうですか・・・
じゃあ、3杯までなら許可しましょうか?
そのくらいなら明日には残らないでしょう?」
「ええ。明日は隣の街までの移動ですので昼前の出立でたぶん夕方着だと思いますので、万が一、深酒をしても影響はないかと思います。」
「なるほど。
私もブランデーを探して、寝る前に少し飲んでみますかね。」
「では、町でツマミを探さないといけませんね。」
武雄とマイヤーが晩酌を語り合っていた。
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武雄一行の一番後方にいるアニータとミルコはヴィクター達と話をしていた。
結果は出ているようなのだが・・・最終判断をしようとしている。
「お姉ちゃん、キタミザト様に雇ってもらうのでしょう?」
「ええ、そこに異存は無いんだけど・・・どんな条件で雇われるか・・・
うちの国以外ではお金というのがないと生活出来ないと婆ちゃんは言っていたわよね。」
「言っていたよ。だけどお金は見たことないし・・・」
「2人は貨幣を見たことがないのですか?」
ジーナが聞いてくる。
「はい。」
アニータが返事をする。
「・・・謎ですね。
国家があるなら近隣国とのやり取りで金銭があると思いますが・・・」
「僕達の村では見たことがないです。」
「村と村とのやり取りはどうやっていましたか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「ん~・・・2か月に1回親達が荷車にいろいろ乗せていました。
で、帰って来たら村の回りで採れない野菜とかを持ってきていました。」
「なるほど。
物々交換が基本なのですね。
さて、貨幣をどう理解させた物か・・・そのお婆様は何と言っていましたか?」
「えーっと・・・欲しい物があるならお金を払って手に入れる?」
「正解です・・・正解なのですが、一抹の不安が残ります。」
ヴィクターが思案しながら言う。
「新人兵士がどのくらいの給金なのかは私では答えられませんので主に聞いては如何でしょう。
あと私達に聞いてみたい事はありますか?」
「ん~・・・実際は待遇はどうなのですか?生活出来るお金の量は貰えるのですか?私達でも仕事は出来るのですか?」
「少なくとも私もジーナも現状に不満はありません。
主が25年で解放すると言うならそれまでは一生懸命仕事をするだけです。
わざわざ主に反抗して25年を30年にする必要はありませんので。
それに新兵の待遇は豪遊出来る金額ではないと思います。
普通に生活が出来る金額でしょう。
新兵の仕事内容は基本どこも体力作りと規律の訓練がほとんどでしょう。
あとはキタミザト様の研究所の内容によります。
それと主は言っていませんでしたが、市場に出る前の防具を試すので魔法適性がなくなるかもしれない覚悟が必要ですね。」
「「ふ~ん。」」
アニータとミルコは素っ気なく返す。
「おや?この文言は結構人間種には覚悟を要する物のようですがお2人は怖くはないのですか?」
「いえ・・・僕達エアロウォールしか出来ないので・・・あまり実感がないです。」
「別に魔法が無くなっても今までの生活とあまり変わらない様な気もするし・・・ねぇ?」
アニータがミルコを見る。
「うん・・・魔法の適性(?)が無くなるとキタミザト殿は雇ってくれないのですか?」
「主は『魔法適性のありなしで賃金を変えずに本人が辞めると言うまで雇い・・・平等にこき使う』と豪語されています。
ですので、基本的には一生懸命仕事をすれば良いだけになります。」
「「わかりました。」」
アニータとミルコが頷くのだった。
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武雄達の少し後ろアニータ達との間にアリス達が話していた。
「あの~、アリス殿。」
ブルックが何気なく聞いてくる。
「何でしょうか?ブルック殿?」
「さっきの戦闘ですけど。
アリス殿の剣が赤かったように見えたのですが・・・」
「ええ、私も驚きました。
この剣を買った際に説明書に『魔法師がこの剣で本気を出したら炎の魔法が付与される』とあったので魔眼に反応したんでしょうね。」
アリスは顎に指を当てながら言う。
「えーっと・・・つまりは?」
「魔眼中に斬れば炎が出るのでしょう。
魔眼を止めたら赤から黒くなりましたのでそんな感じなのかなぁと思っています。」
「そんなに簡単に割り切るのですか?
魔法具ですよね?どこか違和感とかはありますか?」
「これと言って体調に不調はないですね。」
「きゅ。」
その話を聞いていたアリスのリュックに乗っているクゥが軽く鳴く。
「ん?クゥちゃん、何かありますか?」
「きゅ!」
クゥが鳴くと武雄の所からミアが飛んでくる。
「何ですかクゥ。呼び出したりして。」
「きゅ。きゅ。」
「え?そうなんですか?」
ミアがクゥの話を聞いて少し驚く。
「ミアちゃん、クゥちゃんは何て?」
「アリス様の剣はドワーフ製の剣なんだそうです。」
「はい。そこは買う際に聞きましたね。」
「で、その剣・・・クゥが言うには昔姉ドラゴンにやられた人間が持っていた物にそっくりなんだそうです。
で、その者は剣から火の鳥を出していたらしいのですが・・・レッドドラゴンである姉ドラゴンに火属性の攻撃をしても意味がなかったそうであっけなく返り討ちに。」
「・・・何と言うか・・・その人が使っていた物なんでしょうかね?」
「きゅ?」
「似ている形状だなぁとクゥは思っていたようです。
でもその者が簡単に出していたからアリス様も簡単に出せる可能性はあるようです。」
「へぇ・・・まぁ、それは特典として良いですね。
屋敷に帰ってから試してみましょうか。」
アリスは軽く考えながら言うのだった。
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