第497話 想定していた魔法師の正体。
「アニータ、ミルコ、アナタ達は今何歳なのですか?」
武雄が何気に聞く。
「僕達は87歳になります。」
ミルコの発言にマイヤー達と武雄とアリス・・・人間達が一瞬驚き「長寿だなぁ」とため息をつく。
「・・・エルフは長寿なのですか?」
「はい。大体500~1000年くらい生きています。
肉体が大部分欠損するか生きる気力がなくなれば死にます。」
「生きる気力ですか?寿命ではなく?」
「はい。村にいた婆ちゃんは1000年以上は生きていると言っていました。」
「エルフは何をして過ごしているのですか?」
「基本的にのんびりと。
寝て魔法して遊んで食べて寝て。」
「村ごと引き篭り?」
アリスが首を傾げる。
「村と言うよりも国の雰囲気がではないでしょうか?」
マイヤーも首を傾げる。
「ん?アニータ、ミルコ、アナタ達は魔法が使えるのですか?」
武雄が質問する。
「はい。僕達はエアロウォールしかまだ習っていませんけど。」
ミルコが衝撃的な事を言い、その場の全員が固まる。
「・・・2人でエアロウォールをかけていたのですか?」
「木に登ってこないようにと思って交代で・・・」
アニータが言う。
「アニータ、ミルコ、頑張りましたね。
ちなみに2人の得意な系統はなんですか?」
「「系統?」」
アニータとミルコが同時に首を傾げる。
「あれ?・・・マイヤーさん、系統は一般的ではないのですか?」
「いえ、一般的なはずなんですけど・・・
それよりもあまり初対面の相手に系統は聞かないとは思います。
ちなみにキタミザト殿はどんな系統でしたか?」
「私は確か・・・突出がない・・・得意な系統がないでしたかね。」
「「んん!?」」
アーキンとバートが驚きの声をあげる。
「ん?どうしましたか?」
武雄が不思議そうに聞いてくる。
「得意な系統がないなんて初めて聞きました。
何かしらの系統に偏るはずなんだと思っていました。」
アーキンが言う。
「ん~・・・それに私は初級魔法しか使えませんからね・・・
魔法師になれない落ちこぼれです。」
武雄は苦笑をするが、アニータとミルコ以外の皆が「どこが!?」と心の中で思うのだった。
「キタミザト殿、歓談中失礼いたします。
町に報告に行った兵士が戻って参りました。
ニール殿下よりキタミザト殿、アリス殿、マイヤー殿に説明に来るようにとの伝言を承っております。」
兵士が伝えに来る。
「はい、わかりました。
マイヤーさん、アリスお嬢様。」
「はい、結構です。」
「お好きな様に。」
武雄の問いかけにマイヤーもアリスも肯定の頷きを返す。
「そうですか・・・
アニータ、ミルコ。」
「「はい!」」
「これから私達が滞在している町に皆で向かいます。
唐突で申し訳ないですが、2人には私の部下になるかどうかの選択をして貰います。
時間的には町に着くまでです。
2人でどうするかを考えて貰って構いません。
ヴィクター、ジーナ。」
「「はい!」」
「アニータとミルコにジーナの馬を与えなさい。
ヴィクター達は1つの馬に乗りなさい。」
「畏まりました。」
ヴィクターが返事をする。
「アニータとミルコの相談にも2人は乗るように。
私達、人間ではわからない感情もあるでしょう。」
「わかりました、ご主人様。」
ジーナが頷く。
「アニータ、ミルコ。
私から2人に示せる道は3つです。
1つ目、私の部下になる。
2つ目、町まで同行し、そこで別れる。
3つ目、道すがら別れる。
それだけです。」
「え?道すがら別れても良いのですか?」
アニータが驚きながら聞いてくる。
「はい、構いません。
今後どこかで私達と会ったとしても私はアナタ達を部下には誘う事はないでしょう。
酷な話ですけどね・・・運命を決める分かれ道は唐突に現れ、その分かれ道は二度と手にはできません。
ここにいる全員がその都度、分かれ道で選択をしてきた結果ここに居ます。
その分かれ道を思い出し『あの時こうすれば良かった』というのは良く聞く話ではあります。
ですが、その時点での判断はその人にとってその時の最善の選択なのです。
私はその判断を尊重するべきだと思っています。
なのでアニータ、ミルコ。
・・・2人がどんな決断をしても私は尊重します・・・だからちゃんと考えなさい。」
「「はい!」」
アニータとミルコが返事をする。
「ではマイヤーさん、帰りましょうか。」
「はい、わかりました。
総員帰投準備!監視隊の撤収準備完了とともに町に帰投する!」
「「「はっ!」」」
各々が帰り支度を始めるのだった。
「ミア、タマ。」
武雄がチビッ子を呼ぶ。
「はい、主。」
「ニャ。」
「コラとモモに食事の終了を伝えてきてください。
食べ残しはその辺に埋めるようにと言っておいてくださいね。
変な魔物が寄って来ても困りますから。」
「わかりました。」
「ニャ。」
「はい、お願いします。」
「クゥも行きますか?
散歩しに行きます。」
「きゅ?・・・きゅ。」
クゥは少し考えてから頷きミアとタマに近寄っていく。
「では、主。
コラとモモに伝えてきます。」
「はい、気を付けていってらっしゃい。」
武雄はチビッ子を見送るのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
 




