第3289話 武雄とヴィクターの雑談。(協力工房がすぐに動くのが当たり前になってきました。)
研究所の3階 所長室。
ハワース商会で打ち合わせを終えた武雄が戻り、書類処理をしていた。
実は武雄もマイヤーも通常業務中は扉は開けっ放しにしており、誰でも入って来て良いようにしていた。
「・・・」
書類から目を上げ、壁に掲げているアズパール王国地図に目をやる。
「失礼します。」
ヴィクターが入って来る。
「うん?お疲れ様です。
どうしましたか?」
武雄がヴィクターを見ながら言う。
「エルヴィス家より書類が回ってきましたので、届けに参りました。
主は悪巧みですか?」
ヴィクターが言う。
「ええ・・・あ、違う。
ヴィクター、悪巧みなんてしていませんよ。
私は与えられた仕事に邁進しつつ、家の収入を増やす事を考えているだけです。
地域経済に貢献しているので、エルヴィス家にも悪い事はしていませんよ。」
「国家に対してと言わないのが主らしいですが・・・まぁ、そういう事にしておきましょう。
先ほど、ハワース商会とラルフ様の仕立て屋から人が参りまして。」
「うん?さっき行って来た所ですね。
ヴィクターに行く際に説明していますが、結果、特に家としても率先して動く事はないと思ったので、報告はしませんでしたが・・・
リーザにモデルの依頼かな?」
武雄が首を傾げて言う。
「いえ、ハワース商会及びラルフ様の仕立て屋から新たな製造と販売の権利の契約書が持ち込まれました。」
「??・・・うん?何の?」
「木彫りの人形とヌイグルミやペナントと木版画等々についてのですが?」
「・・・え?そんな物まで契約するの?」
「みたいです。
断りを入れますか?」
「うーん・・・ヴィクターの考えは?」
「現状では、そこまで収入関係で困っていないのでどちらでも良いかと。
主の考え方次第ではあります。」
「2つの所から『この派生商品もしくは追加商品は自分達で』という意思表示・・・ですよね?」
「そうですね。
今までの商品がそうであるように、今回もという所でしょうか。」
「まぁ、私が頼む先が固定化出来るのは良い事ですし、収入元が少なければ、ヴィクター達の仕事もあまり増えないので事務処理等もメリットはありますよね。」
「代わりに主が他の工房に頼めないというデメリットはあります。」
ヴィクターが言う。
「・・・前にベッドフォードさんの所で『一業種一店舗が良い』とは言いましたけど・・・うーん・・・」
武雄が考える。
「他の工房に依頼をされますか?」
「いや、そうじゃなくて・・・今回の依頼品の中に将来に大変な仕事量になり兼ねない物があってですね。」
「・・・えーっと・・・木版画でしょうか?」
ヴィクターが考えながら言う。
「ええ、今はどうだかわかりませんけど、木版画を上手く使うと本や書類の増産が可能になります。
価格も今の販売価格より低くなるでしょう。
娯楽としても専門書としても売れ行きは伸びると想像しています。
印刷専門の工房、製本専門の工房が必要だと思うのですよね・・・ハワース商会はわかっているでしょうかね・・・」
「わかっていないでしょうね。」
ヴィクターがキッパリと言う。
「ですよね・・・・・・ま、良いか。
ハワース商会が困ったと言ったら、ハワース商会の下にそういった工房を付ければ良いだけであるとも言えるし。」
武雄が考えるのを止める。
「そうですね。
その時に考えましょう。
主の言ではありませんが、キタミザト家からの受付が今までと変わらないとなれば、キタミザト家としては収入が増え、手間が少し増えるだけですので。
問題はないでしょう。」
ヴィクターが言う。
「・・・大量生産するのを見越して、サテラ製作所のキャロルさんに木版画を使った大量印刷方法の概念を説明しておきましょうか。
ハワース商会の消しゴムとか鉛筆の製造ラインを作ったというのは話に聞いていますからね。
印刷の依頼が増えれば、おのずとハワース商会からサテラ製作所に依頼が行くでしょうし。」
「もう1つ契約が増えるという事ですね?」
「私から契約しましょうとは言いませんけどね。
したかったらすれば良いでしょう。」
「ふむ・・・身構えておくとしますか。
いつご説明に?」
「ふむ・・・大量生産の話は雑談程度という形で言っておくとして、ペナントの製造についての下打ち合わせとしますかね。
昼食後向かいます。」
「了解しました。
・・・今日の夕方には来そうですね。」
「よろしくお願いしますね。」
「はい、それとこちらがエルヴィス家からの書類です。」
ヴィクターが武雄の前に書類を置く。
「何かあったかな?」
武雄が書類の中身を軽く見始める。
「伯爵様と主との夕食後の話の派生かもしれませんね。」
「あー・・・いろいろと話していますからね・・・
・・・現状の第4小隊の業務範囲の拡大を検討したという話みたいですね。
会議の概要です。」
「第4小隊というと兵士方の備品管理や会計、軽いケアをする後方部隊ですね?」
「ええ・・・今度の大隊編成を機に増員するとありますが・・・無理でしょうね。」
武雄が書類を見ながら言う。
「その心は?」
「給料が他領に比べて低い。」
「あー・・・」
「一般募集はエルヴィス家がするので、王都の魔法師専門学院には私が説明して欲しいという依頼を出すとの締め括りがあるので、私にこの書類が来たようです。」
「なるほど。」
ヴィクターが頷くのだった。
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