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第2828話 第1中隊の奮戦。(残り時間はそう多くない。)

港町の門では。


「押せーーーー!」

「「「「せいやーーー!」」」」

第1中隊の兵士達が盾で群衆を押し込む。

「突け!」

号令と共に盾の隙間を作り、そこから無数の剣が突き刺す。

「あああ!!」

「ぎゃぁぁあ!!」

「ひゃぁぁ!!」

武器を持った者達が倒れる。

「押せーーーー!」

「「「「せいやーーー!」」」」

再び第1中隊の兵士達が盾で群衆を押し込み始める。


第1中隊は盾持ち10名が横並びに展開し壁の役目を果たし、その後ろに盾を押し込む補助が30名、隙間から狙う20名、交代要員ならびに倒した奴隷を盾の下から引っ張り出す40名でゆっくりとだが、門に向かって前進している。

引っ張り出された負傷した奴隷は即座に意識を刈り取られ、第5軍に渡され、第5軍の兵士達により捕縛後、スリープとケアを掛けられてから展開していた1個中隊に渡される。

待機していた中隊は門とは逆の方向にいる奴隷や敵兵に対し、盾を展開し、通りを封鎖している。

また前進した事で新たに面した路地や通りも封鎖し、後方支援を完璧にしていた。

この場に居る兵士達は油断なく、淡々と押し込み、突き、回収し、回復をさせている。

特に第2軍 第1大隊 第1中隊の面々は恐ろしいくらいに挙動を合わせて実施していた。


第1大隊の第1中隊と言えば、大隊行動では大隊長直轄、指揮官が動く際は指揮官直轄の中隊であり、ゆくゆくは、この中隊から大隊長か指揮官が生まれる確率が高いエリート集団だ。

だが、彼らはこの場にて無力さを噛みしめていた。

彼らは王軍に入る際に宣誓した「国家、国民の為に全力を尽くす」この言葉を再認識していた。

彼らはエリートだ、それは自他共に認識している。

体力、武力、事務仕事、思考等々、第2軍きっての多才集団だ。

そしてこの戦争は「拉致された国民を保護する」為に実施されている。

今こそ国家と国民の為に戦えるのだと、皆が高揚していたのは事実だ。

だが、目の前を見ると保護すべき国民が首輪を付けられ、泣きながら慣れない剣を振り回している。

剣を向けられれば応戦をするしかない、我々は剣を向けられたら自身を、そして仲間を守る為に相手を切り倒す術を高めて来た。

剣を向けてくる相手は敵だと、敵を一撃で切り倒す術を学び、高めて来た・・・なぜ守らなければならない我が国の国民相手にこんなことをしなくてはならないのか。

自分達は何も出来ない、困窮する国民を前に何も・・・今は盾で前進するしかない。

盾の隙間から剣で突きをする者達は第1中隊の中でも上位の剣技の持ち主達だ。

盾を持つ者達よりも歯を食いしばり、剣を突いている。

皆が思う「こんな事、すぐに終わらせなくてはならない」と。

しかし、そこは第1中隊、皆が焦りを感じながらもゆっくりと確実に前進する。

どこかで綻びがあれば今よりも長く苦しみを味わう、このゆっくりとした前進が最短で苦しみから解放する最善手だと皆が考えている。

だから、確実に、乱れなく、息を合わせて押し込んでいく。

奴隷となった国民を苦しみから解放する最短経路を進むのだった。


------------------------

デムーロ国 隣接の港町の門から300m地点の王軍陣地。


「報告!先行中の第4軍より。

 港町内の奴隷船の出航準備が開始された模様。

 以上です!」

第2軍指揮官に伝令が伝えてくる。

「・・・とうとう準備を始めたか。

 開門はまだ・・・だよなぁ・・・」

第2軍指揮官が門を見ながら呟く。

(中途半端に刺激して出航を早められる可能性も高い、いざとなれば、ワイバーンで奴隷船の破壊も視野に入れるしかないか。

 だがなぁ・・・食人共の方があるからウィリプ連合国とのやり取りはデムーロ王国にさせないといけないし・・・その為には奴隷船が必要だし・・・

 滞ると東側が不安定になりかねないんだよなぁ・・・)

第2軍指揮官が考えている。

「・・・」

伝令がジッと指揮官の命令を待っている。

「第1中隊の様子は?」

「第1中隊は門に向かい前進しておりますが、今のままでは、すぐの開門は難しいかと。」

「そうか。

 ・・・残りの奴隷の数は?」

「向こうを立つ前で12です。」

「12か・・・もう少し少なかったら良かったのだが・・・

 第1中隊に命令、作戦を変更する。

 第1目標を奴隷の保護から門の解放に移行する。

 門へ通ずる道にいる敵兵を突破し、開門をさせろ。」

「はっ!」

「私が考えるやり方としては、全盾持ちが各々で一気に奴隷を包囲と確保をする。

 それと同時に他の者達が敵兵に突撃、奴隷と兵士と分断させ、奴隷の確保をしなくてはならんだろうな。

 たぶん・・・機会は1度きりだ。

 奴隷船の出航は阻止しなくてはならない、第2大隊を突入させる。

 中隊長に伝えろ。

 行け。」

「了解しました。」

兵士が去っていく。

「・・・おい、第2大隊に突撃の最終確認を、第4軍のワイバーン部隊に上空待機をするようにと伝言をしてくれ。」

第2軍指揮官が控えている兵士に言う。

「了解しました。」

兵士が去っていく。

「さて・・・どうなるか・・・」

第2軍指揮官が門を見ながら呟くのだった。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  心が泣いている。  自分たちの無力さを、嘆いている。  相手を刺す行動 が、相手をいち早く救う結果につながる   矛盾に、心を殺している そんな心情と情景が、浮かんでくる、良更新であると思…
[良い点] チートでまるっと救うのでもなく、かと言って状況によっては切り捨てもやむ無しと割りきってしまうのでもなく、飽くまで同胞を救うことのみに注力し続け・・・それでも一旦は傷つけなければ助けられない…
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