第1695話 宿舎に行ってみよう。(対象者に出会ってしまった。)
王立学院の宿舎に続く道。
「いや~ジッロさんの部屋何もありませんでしたね。
まぁ学業は順調なようですしね、生活を楽しんでそうで何よりでした。」
「如何わしい物が1つもないなんて男子の部屋なんでしょうかね?」
「2つや3つあっても良いはずなんですけど。」
「余程、隠すのが上手いんだろうな。」
「ん、次こそは見つけます。」
「あ~。」
「主、ビエラも頑張るって言っていますよ。」
「それは隅々まで確認出来ますね。」
武雄達がワイワイ話している。
「さてと、魔法師専門学院については、ジッロさんの近況確認と手紙を渡して、学院長にはエルヴィス家と研究所に関わる聞き取りも終わったと。
この道を行くと王立学院の宿舎でしたね。
マイヤーさん、合ってます?」
「合っていますよ。
ですが・・・よろしいのですか?」
「だって、マイヤーさんのみだと何かあったら鉄拳制裁しそうなんですもの。」
「あぁ、前にそれで息子さん家出したんですよね。」
「まったくすぐ手を出すんだから。」
武雄とオールストンとブレアがマイヤーを見ながら笑う。
「うぐっ・・・事実ではありますが・・・あれは話しに話しをして最終的にという感じです。
・・・では、すみませんが、息子の部屋の確認をして頂けますか?」
「もちろんそのつもりで来ているんですよ。
楽しみぃ♪」
「はぁ・・・」
武雄が笑顔で言うがマイヤーは疲れた顔をさせている。
「あの・・・失礼します。
この先は王立学院の宿舎です。
関係者以外立ち入り禁止なのですが。」
箒を持った女子生徒に声をかけられる。
「うん?・・・ん~・・・1年のルーク・マイヤー君の部屋はわかりますか?
こちらが彼の父親でね。
王都に仕事に来たので息子さんの生活状況の確認に来ました。
あ、私達は付き添いです。」
武雄が女子生徒に言う。
「はぁ・・・ルーク・マイヤーの・・・お父君ですか。
私、3年のキティ・エメットと申します。
受付というか職員が常駐する部屋がございますのでそこまでご案内します。」
女子生徒が綺麗な礼をする。
武雄が「ふーん、この子かぁ」と思いながら見ている。
「ええ、よろしくお願いしますね。
マイヤーさん、迷子にならなそうです。」
「はぁ・・・そうですね。
そう言えば所長、宿舎に来ると事前連絡していないんですよね?」
マイヤーがそう言うとキティがビクッとしている。
「ええ、していたら部屋が片づけられちゃうでしょう?
それにマイヤーさんの息子さんはラックさんの娘さんと懇意にしているみたいですし。
いろいろと物証が隠されそうじゃないですか♪」
「所長、凄く楽しそうに言いますね。」
ブレアが笑いながら言う。
「他人の恋路を見るのは楽しいね~。
応援はしてあげるけど、こういった試練も乗り越えないとね~。」
「まぁ気持ちはわかりますけどね。」
オールストンが同意する。
「あ・・・あの・・・もしかして・・・キタミザト子爵様であらされますか?」
キティがブリキのおもちゃのようにぎこちなく武雄の方を見て聞いてくる。
「え?何も荒らしてはいませんが、そうでいらっしゃいますよ。」
武雄が笑いながら答える。
「とんだ失礼を!」
「何も失礼されていませんが・・・案内をしてくれてありがとうございます。
あ、そうだ、エメットさんは明後日以降、時間を作れますか?」
「へ?あ・・・あります!
問題ありません!」
「うん、わかりました。
正式には人事局の職員の方と打ち合わせして連絡します。」
「あの~・・・何を?」
「エルヴィス家からの依頼をね。
進路でね。」
「あ~・・・問題が?」
「うん、問題ではないですけど。
エメットさんの志望動機とかを確認するようにとね。」
「キタミザト子爵様、下の名で呼んで頂いて欲しいのですが。」
「・・・いや、それダメでしょう。」
「いえ!お願いします!
今だけでも良いんです!」
「はぁ・・・良いんですか?
なら、キティさん。」
「はい!キタミザト子爵様!」
キティが嬉しそうに返事をする。
武雄は「変わった子だなぁ」と思う。
「でね。
エルヴィス家では王立学院の生徒さんが卒業後すぐに入るのは初めてなんです。
それに今エルヴィス家は忙しくて、いろんな部署で人手不足なんですよ。
なので新人はどこでも歓迎なんです。」
「はぁ・・・」
「キティさんがやりたい事をさせてあげたいという事で志望部署を聞きたいのです。
まぁ実際に仕事をしてみて能力的に別の部署に適性があるならそちらに異動もありえますけどね。
とりあえず私と打ち合わせを実施したいんですよ。」
「わかりました・・・臨ませていただきます。」
「ん~・・・そこまでの事ではないですからね?」
「はい!
あ、こちらが宿舎の入り口です。
正面右の部屋が職員の部屋になります。」
「はい、わかりました。
キティさん、ありがとうございます。」
「いえ、ようこそおいでいただきました。
いってらっしゃいませ。」
キティが武雄達を見送る。
・・
・
「ふぅ・・・」
武雄がちゃんと職員の部屋に入っていくのを確認してやっとキティが安堵の息をつく。
「キティ先輩、先ほどの方々はどちら様ですか?
宿舎に来客とかほとんどないですよね。」
ターラがキティに話しかけながら近寄ってくる。
「ターラ!聞いて!キタミザト子爵様と話せたの!」
「おぉう?」
「それでね!それでね!
今度面接してくれるって!」
「う・・・うん、キティ先輩落ち着いて!」
「あぁ!あのキタミザト子爵と話せるなんて!
自ら研究所の素案をまとめ上げて王家と王城に認めさせ、優秀な人材を求めて他国まで行き、国内では成績ではなく素質を持って採用をするという先見の明を持ち、領民の為と次々と新しい政策を発案し、対魔王国の実質的な外交を一手に賄っているキタミザト様に!」
「キティ先輩、本当に落ち着いてください。
場所変えましょう?
ちゃんと話聞きますし、声大きいですし・・・ね?」
「あれ?・・・ターラ?どこに引っ張って?」
「はい、行きますよ。」
興奮冷めやらぬキティを連れてターラが足早に宿舎に入っていくのだった。
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