第1608話 食事会始まる。(一喜一憂。)
食堂の扉前。
これから開始するのだが、エルヴィス爺さんと武雄、アリスがその時を待っている。
「伯爵様、キタミザト様、研究所の方々が全員入られております。
全メイド、準備終えております。
厨房より、問題ないとの報告が来ております。」
メイド長がエルヴィス爺さんと武雄に報告してくる。
「だ、そうじゃ。」
エルヴィス爺さんが武雄を見る。
「ですって。」
武雄がアリスを見る。
「と言われましても・・・コノハが厨房に遊びに行ったので・・・もうすぐ帰ってくるはず・・・来ましたね。」
アリスが厨房がある方向を向く。
「タケオー!」
コノハが小走りにやってくる。
「はい、偵察お疲れ様です。
厨房は?」
「問題ないわ!
それよりタケオ!ミルクレープがあったわよ!」
「・・・前に作りましたしね。」
「いや!私食べてないけど!
いつ作ったのよ!」
「・・・あ~・・・コノハはその時は居ませんでしたか。
一度厨房でクレープを作ったんですよ。」
「それは食べたわ!
挙式前よね!その時!?」
「ええ、試しに作ったんですけど・・・料理人が手間がかかり過ぎてしまって、通常で提供するスイーツとしては断念したんです。
確かあの時は代わりにクレープの具材を多くして皆に食べて貰いましたね。
今回は私が来てからの料理ということで作ったんです。
そして今回も手間がかかって・・・個数は少なかったはずですよ。」
「確かに!これは・・・・よし!各精霊に伝達したわ!」
コノハが少し目を瞑ってから決意を新たに言い放つ。
「コノハ、何しているの?」
「テトちゃんとペイトーに連絡したの。
あ、ちょっと待って・・・うん、スズネとエリカはやる気みたいね。
『絶対確保する』そうよ。」
「怪我の無いようにね。」
武雄が呆れながら言う。
「ちなみにコノハ、その『みるくれーぷ』ってどんな物なの?」
「アリス、挙式前に一回うどん食べたじゃない?
あの時のスイーツ覚えてる?」
「・・・薄く甘いパン生地にホイップクリームや果物を入れて巻きましたよね。
エリカさんとクリームの量で言い合った記憶があります。」
「そうそれ!
それの生地とホイップクリームを段々にしたケーキよ。」
「ん~・・・どんな食感かは気になりますね。
後日、作って貰って堪能しますか。」
アリスが残念そうな顔をさせながら言う。
「アリスは弱気ね!『今食べなきゃ!』ぐらい言ってよ。」
「言いたいのは山々ですが、私もお爺さまもタケオ様も終始皆さんと話さないといけないですから食べている時間はないと思うんです。」
「・・・という事は・・・」
コノハが目を細めながら思案する。
「コノハは私の精霊ですからね。
傍にいるように。
それに今日は研究所のご家族との懇談会ですよ。
私達が我先にとはいきません。」
「だよね~・・・」
コノハがガックリと項垂れる。
「今日は我慢しなくちゃダメね。」
「タケオ・・・また作ってくれる?」
コノハが悲壮感漂わせながら武雄に言ってくる。
「私よりも本職の人達の方が上手いと思いますけどね。
ちなみに今日出る料理はもう全部料理人達が作れます。
あとは材料とやる気があれば出来るでしょうね。
後日、私の方からも頼んでそれでも難しいとなれば私が作りますよ。」
「タケオ、期待する。」
意気消沈したコノハがチビ状態になりアリスの肩に乗る。
武雄の肩に居るパナは「近々スイーツ祭りかな?」と思っている。
「さて・・・行きましょうか。」
武雄がエルヴィス爺さんとアリスを見る。
「そうじゃの。
アリスは平気かの?」
「問題ありません。」
エルヴィス爺さんとアリスが頷く。
「はい、では始めましょう。」
メイドが食堂の扉に手をかけるのだった。
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食堂内にて。
今回はビュッフェ形式の食事で落ち着いていた。
いつも武雄達が食べている所には各料理が置かれ、壁や窓際に椅子とテーブルが用意されている。
初期の席は決められているので各家族は席に座りながら家族で歓談していたりする。
ここからバラけるかどうかはわからない。
「皆さま、長らくお待たせをいたしました。
エルヴィス伯爵、キタミザト子爵ご夫婦の用意が出来ました。
入室されます。」
執事の1人がそう言い、食堂内の皆に伝えると全員が起立する。
扉が開き、エルヴィス爺さん、武雄と腕を組んでアリスが入ってくる。
「「「・・・」」」
皆が軽く礼をして出迎える。
3人は一番奥のエリカが立っている所に行く。
「さて、皆、初めての者もおるの。
改めてわしがエリオット・ヘンリー・エルヴィスじゃ。」
「私がタケオ・エルヴィス・キタミザト。」
「妻のアリス・ヘンリー・エルヴィスです。」
3人が話し始める。
「今宵は第二研究所が開所したのでの。
王都からわざわざこの地に来たご家族を労おうと思うておる。
皆からすれば慣れない土地じゃ、見る物、聞く物が王都と違う事が多いとも思う。
出来るだけこの地にある物をまずは受け入れて欲しい。
その上で王都での事の方が良かったと、改善すべき事があるのならそれをわしらに教えて欲しい。
出来る出来ないは吟味が必要じゃがまずは知らない事には何も対応が出来ぬからの。
今夜は細やかじゃが、これからこの街では流行らせていく予定の料理を多く取り揃えた。
味については・・・各々で感じたままで良いじゃろう。
改善点があればこちらもよろしくの。
今宵は良く食べて良く飲んでゆっくりと休むのじゃぞ。
では、始めよう。」
エルヴィス爺さんがそういうと近くに控えていたメイド達が各々に飲み物を渡し始める。
「皆、行き渡ったかの?」
エルヴィス爺さんが食堂を見渡す。
「第二研究所の門出を祝し!」
「「「乾杯!」」」
食事会が始まる。
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