第1371話 夕食中。(ドレッシング作りをしてみよう。)
ゴドウィン伯爵家の食堂。
ゴドウィン伯爵もジェシーも加わり武雄達が夕食を取っているのだが子供達は真剣な顔つきで黙々と食べている。
「ねぇ・・・タケオさん、子供達が静かよ?」
「さっきの客間では緊張で話してなかったが今は違うな。」
ジェシーとゴドウィン伯爵が子供達を見ながら言う。
「お二人が居ない間、子供達と現状のゴドウィン家の問題を考えていました。」
「うちの?」
「はい、何を困っているのか、ちゃんと現状を理解しようという事で想定問答をしたんですよ。
今回子供達を私が引き取った事でゴドウィン家が王都から言いがかりを受けるのを回避したいという事を学んだのですけどね。」
「子供達が解決方法を5個程、考え付きました。
お姉様、5個も思いついたんですよ?」
武雄とアリスがさっきの客間の事を説明している。
「うん、タケオさんの事だから上手く話を持って行ったんでしょうけど・・・
5個も出たのね、凄い物だわ。」
「そうだな・・・多分、全部上手く行かなかったはずだが?」
「ええ、その通りです。
子供達が考え付いた解決方法を言いがかりをつける役のアリスに返されていました。」
ジェシーとゴドウィン伯爵の言葉に武雄が答える。
「私は子供達から意地悪だと怒られましたよ。」
アリスが楽しそうに言う。
「はは・・・しょうがないわよ。
そういうものだからね。」
ジェシーがその場の光景が想像できたのか苦笑しながら言う。
「ゴドウィンさん、上手い解決方法はありましたか?」
「残念ながらないな。
その中でうちもタケオも痛手が少なく、家として割と有益な方法を提案出来るとは思う。
あとは正直、タケオへ負担が行ってしまうな。」
「それはしょうがありません。
子供達を見捨てるという選択は私にはあの時ありませんでしたし。」
「そうだな。
それでこそタケオだ。
そして俺もジェシーもそこは同じ気持ちだ。
後は王都に向けて報告書を送り、何を言われても良いように覚悟を決めておくだけだ。」
「そうですね。
まぁどう転ぶかはしてみないとわからないでしょうね。」
「タケオさん、他人事ね~。」
ジェシーが呆れながら言ってくる。
「私の場合はゴドウィンさん達とはちょっと立場が違いますからね。
何か言って来たら『瀕死の奴隷商から子供達を救い、領主に迷惑をかけない方法があるのなら是非聞かせて欲しい』と問い詰めれば良いですし、それでもグダグタ言うなら『交通費として私費で金貨5枚出すのでウィリプ連合国から異種族の子供達6名を救い出して来てから言ってください』と送り出してあげれば良いですからね。」
武雄がヤレヤレと両手を挙げながら首を振って言う。
「そんな事出来るのはタケオさんぐらいよ。」
「そんな事はないと思いますけども・・・まぁ批判のみをする者には少し難しいかもしれませんが。」
「まぁその辺は追々ね。
今はどう動くかを提案させて。」
「はい、夕食後にお聞きします。」
「うん、ありがとう。
で・・・タケオさん、ドレッシングはどう思う?」
「レモンの汁とこのピリッとした感じは玉ねぎのおろしですかね・・・あとこの匂いは何か香草を入れていますか?
変わった味付けだなぁとは思いましたけど、食べられますよ。」
「タケオさんには隠せないわね。
今日のドレッシングはオリーブオイルを使わなかったのよ。
ここ数日内で何回か出して貰っているのだけれども・・・私的には何か足りないのよね・・・
料理人も試行錯誤しているんだけど・・・なかなかね。」
「玉ねぎですか・・・
私なら用意した半分は擦りおろし、半分は細かくしておきます。
それに生のニンニクを擦りおろした物を和え、火にかけます。
そうする事で玉ねぎの辛味は取れるでしょうからね。
そこに出汁と塩と砂糖を少々入れて一旦煮詰めてから冷ましてソースを作り、最後に紅魚の干物の肉部分を細かく取った物を湯通しして軽く塩を落してからソースに和える・・・ですかね。
こうすれば辛味よりも玉ねぎの甘味を砂糖の甘味で補完したソースが出来そうですよね。
あとはお好みでレモンの汁を足してでしょうかね。
他には少しピリッとさせたいなら玉ねぎを火にかける際にトウガラシを少々入れてみるのも手ですよね。
それにこのソースにウスターソースを入れてみるのも良いかもしれないですよね。
あ、そうするとお肉用のソースになっちゃうかな?
ん~・・・ノンオイルのサラダ用ドレッシングかぁ・・・」
武雄が考えながら言ってくる。
「アナタ・・・メモ取った?」
ジェシーが笑顔は崩さないがコソっとゴドウィン伯爵に聞く。
「取れてない・・・ジェシーはどうだ?」
「ごめん、こんなにポンっとレシピが出るとは思ってもみなかったわ。
・・・メモ取り忘れたわ・・・どうしよう・・・」
ゴドウィン伯爵とジェシーが心の中で汗をかきながら話している。
「タケオ様、明日の休みはどうしますか?」
アリスが武雄に聞いてくる。
「明日は街中を散策して、厨房を借りて明後日からの旅路用の仕込みですかね。
ジェシーさん、厨房をお借りしたいのですが、どうでしょうか?」
「厨房は好きに使って良いわよ。
ついでに昼食か夕食を指導してくれるとありがたいわね。」
ジェシーが言ってくる。
「では、仕込みついでに夕食とドレッシングの試作ですかね。
街中で食材を集めて作りますか。」
「なら明日は買い物と試作ですね。
私も同伴しますよ。」
アリスと武雄が話しているのを見ながらジェシーが机下でガッツポーズを取っていた。
「マイヤーさんとベイノンさんはどうしますか?」
武雄が聞く。
「「・・・」」
マイヤーとベイノンが顔を見合わせ。
「今日は夜通し飲みますかね。
妻が居ませんし。」
「明日の昼まで2人とも寝ています。
その後は明後日の出立の支度ですね。
と言っても所長が食材を用意しますよね。
あとは寝具関係と馬車の整備と行った所ですね。」
「そこはお任せします。」
「はい、了解です。」
「ゴドウィンさん、ジェシーさん、すみませんが、明日は全員まったりです。」
「良いのよ、それが目的だしね。
子供達は私達の方で見ておくわ。
お酒については赤が2本、白1本、ブランデー1本はお出しするわ。
付け合わせはメイドに持って行かせましょう。
足らなかったら、そこから先は有償ね。」
「お酒ありがとうございます。
私の方には有償の方のブランデーをお願いします。
一応子供達には街には出られないから屋敷内で過ごしなさいとは言ってあります。」
「うん、ならアリスとタケオさんの部屋にも持ってくわね。
とりあえず皆ゆっくりしていってくれたら良いわ。」
ジェシーが笑うのだった。
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