第1368話 ゴドウィン伯爵邸にてご挨拶。(子供達に奴隷の首輪について説明しよう。)
武雄が湯浴みを終えて部屋で身支度を整えていると。
「帰ったぞー!」
玄関方面から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「意外と早かったという感想は失礼なんでしょうか・・・」
武雄はそう呟きながら部屋を出る準備をするのだった。
・・
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客間にて皆が一同に会していた。
そして自己紹介をしている。
「こちらからルフィナ、セレーネ、ルアーナ、ヴィート、ラウレッタ、マヌエルの6名です。」
「「「お世話になります!」」」
武雄の紹介に子供達が頭を下げる。
「うん、元気な声だ、そして良く来たな。
夕食までもうしばらくだ、それまでお茶でもしておこう。
さ、皆、座ろう。」
ゴドウィン伯爵がそう言い皆が座る。
だが、子供達は明らかに緊張していた。
アリスの方をチラチラ見ている者、領主の屋敷と知り緊張する者、「なぜ黙っていた」と武雄をジト目で見る者・・・様々だ。
「タケオさん、ご苦労様。
面倒な事に巻き込んでごめんなさいね。」
「いえ、孤児院を見学しただけですよ。」
「で、この子達をね・・・
・・・タケオさん、夕食後に子供達を寝かせたら話し合いをさせて欲しいわ。」
「それが子供達に関する事ならば子供達も出席させてください。」
「・・・私達は構わないけど・・・良いの?」
「アニータとミルコ・・・部下2名を採用した時も他の大人達には説明をしましたが、私は子供に対して嘘を言う必要も選択肢を与えずに大人達だけで議論して結果だけを言うといった事も基本的にする必要はないと考えています。
もちろん、時と場合に依りますけどね。
少なくとも今回はこの子達の行く末の話でしょう。
なら本人達が話し合いに出ていた方が良いと考えます。」
「子供達に・・・大丈夫かしら。」
「子供は確かに知識面では大人より劣っているかもしれません。
ですが、子供は子供なりに大人の言い分をちゃんと聞いています。
ちゃんと真実を言いそして自らに考えさせ、選択をさせる必要があります。
私達大人は手助けをするのが役割です。」
「そう言われるとそうなんだけど・・・わかったわ。
ゴドウィン伯爵家としての考えをタケオさんにも子供達にも聞いて貰います。
その上で選択肢を用意しますから選んでください。」
「私は了承します。」
武雄が頷く。
「「・・・」」
子供達は何も言わずに真剣に今の話を理解しようとしている。
「少なくともいきなりどこかに放り出すとかはしないわよ。
衣食住は満たすし、仕事も給与も用意しています。そこは安心してね。
ただ・・・ちょっと政治的な・・・大人の事情があるの。
その部分が結構面倒そうでね・・・その話し合いなのよ。」
ジェシーが困った顔をさせながら言う。
「夕食後なのですね?」
「ええ、夕食後よ。
じゃ、フレッド・・・行きますよ。
別室に文官達が来ています。」
「だろうな・・・まぁタケオ、子供達があまり不利益にならないような事を提案するからな。」
「よろしくお願いします。」
武雄が礼をする。
「ああ。」
「じゃ、一旦失礼しますね。
また夕食の際にね。」
ゴドウィン伯爵とジェシーが客間を後にする。
・・
・
「あぁ・・・面倒ですね。」
武雄がため息をつく。
「ははは、こればっかりは仕方ないですよ。」
アリスが苦笑しながら労ってくる。
「あの~・・・」
「どうしましたか?」
「私達どうなるのですか?」
ラウレッタが恐々聞いてくる。
「・・・ちなみにですが、何が問題だと思いますか?」
武雄が考えながら聞いてくる。
「私達が人間種でない事。」
「奴隷が問題?」
「子供なのが問題なのかも。」
子供達が次々に答えてくる。
「うん、そうですね。
アリス、賢いでしょう?」
「本当、タケオ様の引きの強さはお見事です。
では、私の考えを言います。
実は今回に関しては奴隷というのは然程問題にならないと考えています。」
「「「ん?」」」
子供達がアリスの言葉に首を傾げる。
「むしろ問題は貴方達が子供だという所です。」
「「「ん~?」」」
「あ、当たった。」
子供達が首を捻ったり、ちょっと喜んだりしている。
「現状を整理しましょう。
まずは奴隷契約という所から始めますね。
今回、アズパール王国の奴隷契約条項で規定してる『国内では奴隷契約を結ぶことを認めないが他国で奴隷契約をしてきた場合は契約日より最長25年で解除する事』に抵触しています。
これについては国内、つまりはタケオ様が貴方達を町で奴隷商から奴隷契約を引き継いだ時点で法を犯す、つまりは違反してしまっているのです。」
アリスが指を立てて説明している。
「じゃ・・・じゃあキタミザト様は私達の為に怒られるのですか?
私達を救ってくれたのに・・・」
「えー!?そんなー!?」
「キタミザト様、怒られるの?」
「不味い飯食べなきゃいけないの?」
「裸で牢獄?」
「死んじゃダメー!?」
子供達が武雄に同情している。
「はは、タケオ様、子供に大人気です。」
「・・・こういう子達ってお腹を満たしてあげると信用度が上がるんですよね・・・」
「それは・・・何回目ですか?」
「何回目でしょうね~?」
アリスの質問に武雄が目を逸らせて答える。
「はい、ではこれが現状です。
ですが、この事はタケオ様も知っています。
なのにこの冷静さ・・・さて、タケオ様、王都に何と言い訳をされますか?」
「・・・奴隷商を発見した際は子供達も含め瀕死であり、子供達より奴隷商が先に亡くなった場合、子供達の首輪の解除が永遠に出来ない事を不憫と考えた事、また子供達が最後の力を振り絞って民家を襲い回復並びに逃亡をする可能性がある事を鑑み一時的に奴隷契約を移行させ命令出来る体制にする為に奴隷契約を私に移行させました。
その後、子供達は回復しましたが、はぐれないようにする為に奴隷契約を継続している段階です。
この子達の今後としては執事等の研修を通じ、一般的な知識と礼儀を覚えさせてから解除いたします。
雇用期間は最大で15年を予定し、その間の給与は一般的な給与水準に即した物を考えていますが、王都の命令ならすぐに解除しますよ?命令ならね。
とか?」
「と、いうわけでタケオ様は奴隷の首輪についてこれといって困っていません。
貴方達の奴隷契約を解除した場合としなかった場合の対応方法の違いを洗いだし、どちらが国の為になるかを説明する事が出来れば問題ないという事なのです。」
アリスが子供達に答える。
「大丈夫なのですか?」
「キタミザト様、平気?」
「牢屋にはいかない?」
「美味しい物食べられるの?」
子供達が心配している。
「そこは何とかします。
なので、私の心配はいらないですからね。」
「「「はーい。」」」
子供達が返事をするのだった。
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