第1102話 昼食後の客間。(エリカの相談。)
「タケオさん。聞きたい事があるのですけど。」
エリカが聞いて来る。
「はい。何ですか?
『3都市間の流通において定期輸送体制の確立案』はレイラさんに却下されましたけど。」
「何じゃそれは?面白そうな題材じゃの。」
エルヴィス爺さんが食いつく。
「内容的には難しい事ではないですよ。
まず3都市に集荷場を新設する。
そして毎日最低1台の幌馬車を他の2都市の集荷場に向けて出発させる事を事業とする。
集荷場に荷物が届いたら集荷場から各店、個人宅に届ける。
定期的に幌馬車を出すことによって、今まで各業者が各々に準備していた警護兵、輸送人員、幌馬車を一元化するとともに集荷、配達する荷物の大きさの規格化を実施する。
そうする事によって3都市間での輸送の確実化と輸送日数、輸送料の固定化を目指す。
以上をなす輸送事業という輸送に特化した部署は作れますか?という部署の設立案です。」
「・・・ふむ・・・
それは現時点では無理じゃろうの。」
エルヴィス爺さんが顎に手を当てて考えながら呟く。
「そう思いますか?」
「うむ。
街道の治安状況がまちまちじゃからの。
品物を確実に届けるという信頼性の確保を国が保証するというのがの・・・
定期的に出す事がわかっているならそれ目当ての盗賊が出て来るじゃろう。
確実に積み荷を守れるという保証がの・・・無理だと思うの。」
「その分人員がかかるというのはレイラさんに言われました。」
「そうじゃの。
じゃが・・・メリットもわかるの。」
「そうですね。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが頷く。
「ふむ・・・領内でやってみるかの?」
「それも良いかもしれませんね。」
「え?」
エルヴィス爺さんとフレデリックが簡単に実施する方向に動くことにエリカが驚く。
「ん?エリカ殿。どうしたのじゃ?」
「いえ・・・その・・・警護や送り先の住所の登録等々事前の準備が大変になるという結論を殿下達はしたのですが・・・」
「うむ。それは各家庭に行きわたらせれば・・・じゃの。
むしろ送り先を1つにすれば・・・4町のどの村の誰に送れば良いかを書いておいてくれればわしらは町間の庁舎に送り、町で村々に分配し村長宛に一括に送る。
あとは村長が家々に持って行けば良いじゃろう。
それに警護についても別に巡回の兵士がいるからの。
毎日とはいかないかもしれぬが、2日に1回は出来そうじゃ。」
「・・・んー・・・」
エリカが悩む。
「・・・」
フレデリックは何も言わないが「オルコットから確か各領地の総務局同士で書類送付の一元送付のような話の手紙が来ていましたね。」と考えていた。
「領内でやり取りですか。
まぁとりあえず試験的には良いかもしれないですね。」
武雄が考えながら言う。
「うむ。
頭から否定するよりも出来る事をまずした方が良いじゃろう。
それにどちらにしても各町間で週に1度程度は物の行き来をしておるようじゃしの。」
「そうですね。
主。いきなり2日と言わずに・・・例えば3日に1回程度で書類や民間の輸送も請け負うという企画は少し考えましょう。」
「うむ。
頼むぞ。」
「凄い・・・すぐに決めるのですね。」
エリカが呆気に取られる。
「ふむ・・・ウィリアム殿下領ではこうはいかんというのもわかるがの。
わしらはずっとこの領内で仕事をしておるからの。
どこに何があるかというのは大概わかっておる。
領内に限って言えばそこまで問題はないの。
むしろ領内でそこまで物の輸送の需要があるかというのがの・・・」
エルヴィス爺さんが悩む。
「大々的に告知してはどうでしょうか。」
「『毎月何日と何日は輸送日です』と言えば物が集まるかもしれませんよ。」
「ふむ・・・
なるほどの。送る日の数日前に兵士達の巡回をさせるようにすれば良いという事かの。」
「いや。むしろ一緒に行かせるのも良いかもしれませんね。」
「経費削減には丁度良いの。」
「ええ。それで企画してみましょう。」
フレデリックが頷くのだった。
だが武雄は「あ・・・王家の男性陣に話した盗難防止用に考えた幌を板張にした有蓋車の事は・・・別日で良いか」と考えていた。
「で。エリカさん。何をタケオ様に聞きたいのですか?」
アリスが聞いて来る。
「あ。そうでした。
えーっと・・・これなんですけど。」
エリカが武雄の前に書類を出す。
「あぁ・・・これですか。
エリカさんが聞いて来たという事はダメになったのですね。」
武雄が書類の中を見て言ってくる。
「そういうわけではないのですが・・・一度タケオさんに聞いておかないと議論のしようがないという結論になりました。」
「タケオ様。何をレイラお姉様に言ったのですか?」
スミスが聞いてくる。
「はい。どうぞ。」
武雄がスミスに書類を渡す。
「えーっと・・・『3都市間の意思伝達構想案』・・・
・・・??・・・タケオ様。これって・・・マリ達がしているやつですよね。」
スミスが考えながら言ってくる。
「ええ。そうですよ。
それを『領地間でしてみては?』という企画案です。」
「タケオ様。
『開発手段も未知数で開発費用も莫大だろうから決して殿下領ではやらずに王都にやらせる事』とありますけど。」
「ええ。開発には相当なお金がかかりそうなので王家専属魔法師部隊に任せてしまおうという物です。」
武雄が悪びれもせずに言い放つ。
「確かに殿下領間では遠いですものね。」
「ええ。遠いですよね。」
武雄が頷く。
「タケオさん。これはどう言った意図があるのですか?」
エリカが身を乗り出して聞いて来るのだった。
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