第1103話 昼食後の客間。(トンとツーの電信技術概要。1)
「タケオさん、殿下達は『冒険者組合では各事務所間で情報の共有は計られている。これと同様な仕組みを考えるのか』と悩んでいます。
タケオさん、冒険者組合が取っている方式を独自に王家で作るのですか?」
エリカが真面目に聞いて来る。
「・・・まぁそうとも言えるんですけど・・・
冒険者組合がしているのは情報の一元管理。
どこかに情報を溜めておいて、どこの事務所からでもその情報を読み取れるという方式を取っています。
凄い技術ですよね。
私はもう少し低くしていますよ。」
「今回タケオさんが持って来たのは、情報のその場でのやりとりですよね?」
「ええ。
こうやって話すように、領主間で意思の伝達が出来たら便利だなぁ、という程度ですね。」
「・・・タケオさん。この技術・・・どこかにあると思いますか?」
「知りませんね。
それを探す研究をしてみてはという企画案です。
それに会話をする必要はないですよね。
スイッチの入り切りで話をする事も可能でしょうし。」
「スイッチの入り切りですか?」
「例えば・・・スイッチを1秒間入りにするトンとトンを、3回分の長さのツーという2つの信号を最初に決めておきます。
そしてトンとツーの組み合わせで文字表を作るんです。」
「??・・・・という事は。
トンとツーで会話が出来るという事ですか?」
「ええ。
お互いにその文字表を持っていれば、何が話されているのかわかるでしょう?」
「・・・タケオさん。それは難しいですよ。
その文字表を完璧に覚える必要があります。
それに、その装置の前に四六時中居ないといけないとなります。
それは現実的ではないです。」
エリカが難色を示してくる。
「そうですね。
なら、王家専属魔法師達にはそれを送る方法と、受けて紙に記述する方法が求められますね。
トンとツーの信号を受信し始めたら自動的に紙が移動し、ペン先が紙に押し付けられて印字される物があると便利ですよね。
各王家でそれを定期的に来ていないか確認し、来ていたら了解の返事をすぐに送るルールを作れば良いのではないですか?」
「タケオ様。簡単に言いますね。
私でもこれは概念の企画としては良いとして、実施には難しいと思います。
それを王家専属魔法師部隊にさせるのですか?」
アリスが呆れている。
「ええ。
一研究所でするには規模が大きすぎますし、予算もありませんよ。
だから第3皇子一家でやるなと言ったのです。」
「それを王家専属魔法師に直接言わないのはなぜですか?」
「だって・・・研究者同士で話をしていたらリスクを取りたがらないでしょう?
『頭の中に浮かんだのならお前がしろ』と言われたらこっちに来そうですからね。
王家の方々が思いついて陛下がやる気になれば、やらざるを得ないでしょう?」
「タケオ様はしたくないのですね?」
フレデリックが苦笑している。
「技術は欲しいですけど。研究はしたくないですね。
それに一研と二研は研究する事を陛下達に教えていますけど、王家専属魔法師部隊は何の研究しているか、所長権限では今の所わかっていません。
どんな成果が上がっているのかもわかっていません。
もしかしたら同様な研究をしているかもしれませんし・・・秘密過ぎですよ。あそこは。
まぁ今回のは率直に言えば『研究成果を見せろ。お前らも公的な意義のある実験をしろ』という依頼ですね。
古くからある研究所なのに成果は陛下のみで、一般になんの見返りも出していない。
まぁ王家専属なのだからしょうがないと言えばしょうがないのでしょうけど・・・もう少し国の為の研究をしてくれても良いと思いませんか?」
武雄が言い放つ。
「ん~・・・タケオさん、それって二研が王家専属魔法師部隊に喧嘩を売るという事ですよ?」
エリカが難しい顔をさせる。
「でしょうね。
だからウィリアム殿下達に見せて『向こうに依頼してみては?』と言ったのですよ。」
武雄は頷く。
「はぁ・・・こっちに来て聞いて良かった・・・
王城で聞いていたらウィリアム殿下達は悩んでしまったかもしれません。」
エリカがガックリとする。
「そうですか?
レイラさんはやる気になりそうですけど。」
「レイラ殿下は楽しい物好きですから・・・」
エリカが微妙な顔をさせる。
「あ。レイラお姉様の性格をわかって来ているんですね。
まぁエリカさんの言う通り、レイラお姉様は結構面白そうと言って物事を始めるんですよね。」
「毎日一緒に居ればわかるのではないのですか?
でも・・・結構レイラお姉様って策士ですよね。」
「まぁ・・・そうよね。
でなければ王城で生き残れないんじゃないの?」
アリスとスミスがレイラを評している。
「はぁ・・・結構気を遣うんですよ?」
「気を遣わない部下はいないと思いますが。」
「え?タケオ様がそれを言いますか?」
「うんうん。」
武雄の言い分にアリスとスミスが言ってくる。
「・・・私がしたい事をエルヴィス家の予算度外視で何でもし始めたら・・・
国家予算並みを要求しますよ?」
「タケオ・・・やめてくれるかの?」
「するつもりはありませんよ。
今だって結構キツキツなんでしょう?」
「うむ・・・すまんの。」
「いえいえ。したい事は王都からの研究所予算内でしますから。
それに今だって十分楽しんでいますし。」
「そうか。
今はタケオが言ってくれている事を軌道に乗せることが先決じゃの。
これが終わったら次を考えないとの。
早く成果が出ないかのぉ!」
「すぐには無理でしょう。着実な事をして行くまでです。」
「私も無理はいけないと思っていますからこの程度なんですよ。」
エルヴィス爺さんの願望に、フレデリックと武雄が「着実が一番」と言うのだった。
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