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婚約破棄された公爵令嬢は、厨房で静かに生きていくつもりだったのに  作者: 京野きょう


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第8話|次に来た時に、とは言われたけれど

 今日の目覚めは最悪だった。

 昨日のことがどうしても気になって寝付けなかったせい。


 ──次に来た時には頼む。


 昨日のロヴァルド殿下の言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。


「よっぽどパンがお好きなのかしら……」

「ロゼリア様、動かないで下さいませ」

「あ、ごめんなさい」


 首を傾げながら呟くと、髪を結ってくれているアメリーに窘められるも、私は上の空のまま。


 パンが好き?

 美味しいパンが食べたい?

 それとも──


「……私に会いに?」


 思わず呟いた言葉に、自分で驚いてしまう。

 まさかそんなこと、あるわけないのに。


「ロゼリア様? どうかされましたか?」

「い、いいえっ! 何でもないわ!」


 我ながら自意識過剰もいいとこだわ。


「今日も何か作られるんですか?」

「えぇと、そうね……またパンでも作ろうかしら?」

「わぁ、楽しみです! またお手伝いしてもよろしいですか?」

「ええ、もちろんよ。助かるわ」


 髪を結い終えたアメリーがはしゃいで喜ぶ。


 そう、パンを作るのは焼き立てのパンが食べたいから。

 ストレス発散にはちょうどいいし。

 別にロヴァルド殿下に食べさせたいわけじゃないのよ?

 それに婚約を受ける受けないにしても、ロヴァルド殿下の心象を良くしておくに越したことないものね!

 ただそれだけ!


「ロゼリア様、大丈夫ですか……?」


 鏡台の前に座ったまま、ぶつぶつと独り言を言う私を心配してか、アメリーが恐る恐る近付いてくる。


「え、ええ! 早速キッチンへ向かいましょう!」


 そう言ってキッチンへ向かうため部屋を後にする。

 挙動不審を誤魔化す為とはいえ、ちょっと強引だったかしら……?




「さてと……。今日はたくさん捏ねるわよ!」


 お気に入りの私のキッチンで、いつもの三角巾にエプロンを装備して。

 何となくガッツポーズで気合いを入れてみる


 計量を終えて、捏ね作業開始。

 捏ねて捏ねて捏ねまくる!

 さすがアメリー、前回少しやっただけなのに手際がいいわ。


 あっという間に捏ね上がり、一次発酵。

 その間に、アメリーの入れてくれたお茶でちょっと休憩。


「私、パン作りハマってしまいそうです……!」

「本当? アメリーにもこの楽しさが伝わって嬉しいわ」

「最初はベタベタなのに、だんだんとまとまってきてツルンとしてきて……!」

「そうそう、生地が可愛く見えてくるわよね」


 キラキラとした目で楽しさを伝えてくる。

 疲れるから嫌だ、そんな風に思う侍女じゃなくて良かった。


「今日も前回のような形にするんですか?」

「いいえ、今日は少し変わったものにしようと思ってるの」

「わぁ……楽しみです!」


 休憩を終えて、生地の確認。


「うん、良さそうね」


 フィンガーチェックをした生地を分割し、それぞれを綺麗に丸め直す。

 計20個…… さすがに多すぎたかしら?


「これからどうするんですか?」

「ふふ、こうするの」


 生地を一つ取り、細長い楕円形になるよう伸ばす。

 そこに用意しておいたベーコンを入れ、マスタードを塗ってから包む。

 そして斜めの切れ込みを数箇所入れ、左右に開いていく。

 そうすると、麦の穂のような形になって──


「これで完成よ」

「ロゼリア様、私こんなパン初めて見ました……」


 感心するように呟くアメリー。

 前世でいうところのベーコンエピだけど、この世界じゃ珍しいわよね。


「……よし、完成ね。これでまたしばらく発酵よ」

「お疲れ様です、ロゼリア様。こんなに沢山凄いです!」

「アメリーも手伝ってくれたとはいえ、張り切り過ぎたかしら?」

「そんな! それに皆様、喜んでくれると思います」

「ええ、ありがとう」


 10分程発酵させたら、艶出しにミルクを表面に塗ってオーブンに。

 と思ったけど、私のキッチンじゃ6個が限界ね。


「このまま置いておくと発酵が進み過ぎてしまうわ……」

「それでしたら残りは料理人にお願いしてきましょうか?」

「……そうね、お願い出来る? 焼けたらその場で食べていいとも伝えてね」

「お任せください!」


 大きめの板に残りの生地を乗せ、アメリーはいそいそとメイン厨房へと向かう。


「……ふぅ。」


 椅子に腰掛け、残っている紅茶を一口。


 1種類だけとはいえ、量が量だけに疲れたわ。

 あぁ、なんてのんびりした日々なのかしら。

 幸せってこういうことを言うのね……。

 あ、良い匂いがしてきたわ!


 椅子から立ち上がり、オーブンの前に座り込んでその時を待つ。


 既に小麦の香りがふわりと辺りに広がっていて、その中に香ばしいベーコンの香りも混ざっている。

 いい匂い……。

 こんなのお腹が鳴っちゃうわ……!


 ──ガチャ


 ノックもなく扉が開いた。

 そちらの方を見ると、立っているのはロヴァルド殿下。


 …………。

 ………………。


「ろっ、ロヴァルド殿下!?」

「……お楽しみのところ、すまない」



 もう、もう!

 どうしてこんな、気の抜けたポーズの時に来ちゃうのよ!

読んでいただき、ありがとうございます!

現在コンテストにエントリー中です。

更新も頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

次回更新3月10日

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