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勝てない

 私は友人の永瀬悠陽(ながせはるひ)には何もかも勝てない。

 永瀬は顔は整っていて可愛いわ、スタイルは良いわ、勉強は出来るわ、運動もこなせる。

 少しぐらい、誰かに嫌われる要素があったって良いじゃないか。

 彼女は女子バスケ部に所属していて、三年の頃にはキャプテンを務めていた。

 バスケ以外のスポーツもそれなりにこなせていて、周囲にちやほやされていた。

 私は彼女より顔は可愛くないし、スタイルもそれほどではないし、勉強は出来ずに、運動も彼女に比べて出来ない。

 虚しくてつまらない。

 永瀬の傍に居て、笑えはするけれど、楽しくはなかった。

 無いものねだり、ばかり脳内を埋め尽くし、つまらないと思うばかりだった。

 私が好きになった高野という男子を、彼女がいつのまにか恋人にしていて、嫉妬を抱く羽目になった。

 そう言えば、中学生の頃も、彼女が私が好きになった男子と恋人になっていたこともあった。

 長続きはしなかったらしいが……


 体育の授業は彼女が目立ってばかりだったな。

 しなやかな脚で颯爽とコートを駆けて、ボールを独り占めしていたっけ。

 ある日の体育の授業の際、かっこよかったと伝えたら、そうでもないよぅと、なんでもなさそうに返答した彼女。


 私は結局、高校のときは彼女になにも勝てずに終わった。

 卒業式当日は泣かなかった。

 翌日も会う約束をしていたから、涙なんて出なかった。

 高校三年間は、悔しい思いばかりさせられ、泣くほど悲しいという感情は湧かなかった。

 私は悠かな距離にいる永瀬と友人だったのだ。

 今も彼女とは連絡を取り合っている。


 今は永瀬と離れて、悔しいという感情は湧かずに、安定している。

 恋人は居ないが、八津池と慈悲尾が友人でいるから毎日楽しい。


 沢水加杏奈は楽しい日々を送れていた。

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