第十九話 春の空と厨二病
8:00
ドタバタしたお昼休みが終わり放課後。
俺はドッと疲れた身体をなんとか動かし、帰宅の準備を終えて祈里達と一緒に下駄箱へ。
しかしそこには……
「あ! 待ってましたよ如月さん!!」
こちらに大きく手を振りながら鈴置さんが駆け寄ってくる。
「あらあの子、よっぽど凛に御執心なのね。」
祈里が呆れつつも可笑しそうに言った。
むう、他人事だと思ってるな!
とはいえ無視する訳にもいかず、立ち止まり彼女を待つ。
そんなに長い距離ではないのですぐに到着し、鈴置さんはペコリと頭を下げた。
「すいません何度も。 ちょっと如月さんにお話しがありまして。」
そう言う鈴置さんの表情は真剣な物で、祈里はそれを見て恵美を引っ張っていった。
「じゃあまた明日ね。」 「凛ちゃんばいばーい!」
鈴置さんはそれを見送ってから俺と連れだって歩き出す。
しばし無言で歩いていたがやがて話し出した。
「あの三人のことなんですけど、如月さんはなにか聞いてます?」
あの三バカか。 そういえばどうなったんだ?
知らないと答えると、警察から聞いたんですけどと言ってから話してくれた。
「なんか幼児退行? しちゃったらしくて。 バブバブとしか言わなくてまともに事情聴取もできなくて困ってるらしいです。」
そう言って苦笑いを浮かべる。
「本当に三橋には迷惑掛けられぱなしでしたけど、今はなんか哀れと言うか…… こんな事言うべきじゃないんでしょうけど。」
俯きながらポツポツと話す鈴置さんの頭を、俺はおもむろに乱暴に撫でた。
「ひゃ!?」
鈴置さんは変な声を上げたが、それ以外は何も言わずされるがままだった。
「がんばってたんだな。」
ただそれだけを言った。 あとはしばらく撫で続けた。
駅に近くなり、人通りも増えて来たのもあって撫でるのをやめる。 鈴置さんがちょっと赤くなった顔をこちらに向ける。
「如月さん! ぜったいお役に立ってみせますからっ!」
そう言うと、ではまた明日! と言って走り去っていった。
ヤレヤレ元気だねえ。
そんな思いで彼女を見送るのであった。
~とある安アパート 第三者視点~
カタカタとせわしなくキーボードを叩く音が、狭いアパートの部屋を埋める。
そのキーボードを叩く男は一心にディスプレイを見つめている。
歳の頃は30手前くらいだろうか。 ボサボサの黒髪に眠たげな目を、今は鋭くさせ画面を見ている。
タンクトップの肌着は薄汚れ、しばらく着替えていない物と思われる。
不健康な痩せ方していると感じられる体型を、今は座椅子の上で胡坐を組んでいる。
やがて男は、ニヤリと笑うと高々と右手を振り上げる。
「これでっ! ズゥィ!! エンドだっ!!」
そう言ってその右手をエンターキーに叩きつける。
しばし画面を見つめた後フウッと息を吐きながら背もたれによりかかり独りごちる。
「まあ俺にかかればあんなセキュリティなんか紙同然だな!」
そう言って立ち上がり小さな冷蔵庫にあるミネラルウォーターを手に取りラッパ飲みをする。
男は窓に掛かっているブラインドを指で押さえ外を見る。
二階から見える景色は決して見晴らしのいいものではないし、周りには団地が多く家々が立ち並び景観を損ねている。
「昔は自然で溢れていたんだがな……」
男は懐かしいなにかを見ているような表情で外を見ている。
ここらの土地は、50年ほど前に都市開発の一環で海を埋め立てた埋め立て地であるはずなのだが。
男は頭を掻きながらミネラルウォーターをグビリと飲む。
その内男は空を見上げ呟く。
「そして世には悪が多すぎる。」
そう言うと飲み終わったペットボトルをゴミ箱に放り込み、昼飯を買うためにジャージに着替えるのだった。
そのディスプレイには意味のない文字が画面を埋め尽くしていた。
~凛視点~
家に帰りついて制服から私服に着替え、日課になっている街のパトロールに出かけることにした。
しかし、家を出てすぐに鈴置さんから連絡が来た。
「もしもし如月さん! 大変です、〇〇町で怪物が暴れてます!」
マジかっ!? 〇〇町ならここから近いな。
「分かったすぐ向かう。」
俺は電話を切ってすぐに向かう事にした。
しまった!? 自転車買うの忘れてた!
ま、まあいい兎に角すぐに向かわないと。
『しかし、彼女は明らかにこちらの事情を感づいているな。』
「やはりそう思うか?」
だよなあ。 じゃないと怪物の情報をこちらに教える必要ないもんなあ。
やはりあの時ついて来て見られたんだろうか?
……まあいい、今はクリミナルをなんとかする方が先だ。
そして俺がたどり着いた時、そこは戦場だった。
なぜなら、二匹の怪物が相争っていたのだ。
予想外の展開に困惑しつつも、ヤツラを止めようと変身しようとした時。
怪物の片方、ゴツゴツした岩のような皮膚の方がもう片方の白い羽毛のような体毛を持った方に攻撃するがヒラリヒラリと躱される。
そして躱された岩石男の攻撃が、ビルの壁をぶち抜いた。
その時、逃げ遅れたのだろう女性が、今まで隠れていたビルの陰から転がり出てしまった。
岩石男はその女性を見るや拳を振り上げ女性に殴りかかる。
「ヒッ!?」
まずい!? 今から変身してたんじゃ間に合わない!
俺はそのまま駆け出そうとした時、なんと岩石男の背後にいた羽毛男が回り込み、その攻撃を受け止めた。
そしてスピードはあるが腰の入っていないパンチを叩き込む。
その攻撃で岩石男は吹き飛んでいく。
あんな腰の入っていないパンチであの威力か。
スピードは大したものだと思っていたが、パワーまであるとはやっかいだな。
「女性に手を出すとは呆れたやつだっ! お前たちモンスターはこの俺、正義のヒーローであるユーベルメンシュ様が退治してやるぜっ!!」
そう言ってなにやらキメポーズらしき構えを取ると、猛然と岩石男に突撃していった。
それはまさに目にも止まらないスピードだった。
さっきまでのは本気じゃなかったってのかっ!?
前後左右からの、ほぼ同時に思える攻撃で岩石男は空を舞っていた。
やがて岩石男に背うぃ向けて立ち止まる羽毛、いやユーベルメンシュ。
「トドメだっ!」
そう叫ぶと両手の爪が大きくなり、高々と空へと舞い上がりそして急降下をする。
「ひっさーーーーーーーーーつっ!! シュタイクアイゼンアターークッ!」
英語なのかドイツ語なのかはっきりさせろっ! あとそれは登山用具の名前だろうが!!
ヤツの叫びを聞いて、思わず心の中でツッコミを入れてしまったがヤツの攻撃は岩石男を縦に切り裂いた。
そして爆発してカードに…… ならないな?
怪訝に思っていると、後ろから鈴置さんがやって来た。
「如月さんっ!? どうなったんですか? ちょっと拝見…… 「見るなっ!!」ってきゃっ!?」
俺はすばやく鈴置さんの目を手でふさいだ。
なぜなら……
「ハッハッハッ! 悪は滅びた! また困った事があったら呼ぶがいい! さらばだっ!」
ユーベルメンシュはそう言うと再び跳躍してビルの谷間に消えていった。
「如月さんっ? ちょっと見えないんですけど!?」
鈴置さんの声を無視して、俺は岩石男だったモノへ目を向ける。
そこには真っ二つに裂けて絶命した一人の男性の遺体が転がっていた。
To Be Continued……




