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第16話『~聞こえへんけど、笑いは聞き逃さへん~』
「中音域の聴力が少し落ちていますね。難聴かもしれません。」白衣の女医が、やさしく告げる。
「大阪難聴フェリー乗り場か……。」思わず独り言のようにつぶやいた。
「それを言うなら南港やわ(笑)」
どうやら、この先生。
診察よりツッコミのほうが得意らしい。
「オロナイン?」
「それは軟膏やし!!」
「落語家?」
「それは桂南光やし!!」
診察室は、いつの間にか寄席になっていた。
先生は笑いながら、カルテを閉じる。
「加齢性難聴やわ。」
「なんやねん、それ。
カレーで難聴って……。
なんで知ってんの?
昨日、カレー食うたんやけど。」
「そのカレーちゃうわ(笑)」
「ほな、左ききの彼?
私の私の彼は左きき~」
「(笑)(笑)(笑)
一回、耳鼻咽喉科で診てもろたら?」
「えっ!
ここ、医院ちゃうの?」
先生は肩をすくめて言った。
「クリニックはクリニックでも……
ここ、風俗店や。」
「風俗来といて、何言うてんの(笑)」
──なるほど。
耳は少し遠なったけど、
ツッコミだけは、よう聞こえる。
人生いうもんは、
聞き間違いの数だけ笑えるもんや。
……せやけど最後に先生が、
小さな声でこう言うた。
「お会計、三万円です。」
「えっ!?」
その一言だけは、
不思議なくらい、
はっきり聞こえた。




