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17 金色

少し短めです。きりがよかったので。

 僕が口を開く前にカオリスは言った。


「やはり、糸は結ばれておらぬか?」


 魔法が使えて、階級が上がらない。この情報があれば、カオリスが結論にたどり着くのもそう難しくはなかっただろう。僕は無言で頷いた。


「ダネストもまさか最下位(ロウエスト)が生き残るとは思わんかったじゃろうて。愉快じゃなぁ」


 くつくつと喉を鳴らして笑うカオリス。その反応を見た僕は、僕が生き残れたのはキズキと出会うという幸運のおかげだったのだと再認識した。仮にあの森の一番弱い魔物でも、遭遇すれば僕は壊されていたのだ。


「強くなる方法は思いついておるようじゃ。のちのち出会ったときの楽しみとしておこうかのう」


 カオリスが僕の頭を優しく撫でる。背丈は同じくらいなのに、年上の慈しみを感じた。貫禄や風格の差なのかな。僕には醸し出せない雰囲気だ。


「さて、キズ坊たちは王都ヴィルドに転移しておる。そこに送り届けてやろう」

「カオリスは?一緒に来ないの?」


 カオリスは嫌そうに顔をしかめて首を振った。


「キズ坊にギャーギャーどやされるのが目に見えようて。元々ウォルディアに会うために来たのじゃから、儂はそちらへ行くとしようかのう」


 右手を差し出されたので、しっかりと握り返す。


「じゃあのミカゲ。また会おう」


 カオリスの笑顔が空間ごと消え去る。瞬きの間に、僕は見知らぬ街にいた。綺麗に舗装された石畳の道の左右に、どこか高級感の漂う住宅が整然と並べられている。人の往来が多く、ところどころで出店も見られた。街の活気にあてられて、しばらく呆然としていた僕は周囲に見知った顔が一人もいないことに今更ながら気づいた。全方位を見渡しても、キズキたちが見当たらない。


「――カオリスぅ……うっ!」


 初めて訪れた街で迷子になってしまい途方に暮れていた僕は、何者かに突き飛ばされた。ウォルディアに来てから踏んだり蹴ったりである。主にカオリスのせいで。


「ごめんねっ!きみ、けがはない?」


 顔を上げると、金髪の女性が僕の顔を覗き込んでいた。子どもって言うほどでもないが、大人というには幼さを感じる。無地の白いワンピースを着ていて、見た目的にはトキネやアカリより、少し年上くらいに見える。でも人形なら年齢は、見た目にはよらない。カオリスがその筆頭だ。


「いえ!人形なのでけがはないです。僕こそ、ぼーっとしててごめんなさい」

「私も大丈夫だよ。ところで、きみ。迷子になったの?」


 迷子。果たして今の僕の状況を迷子といっていいものか。拉致されて解放されたところだと言った方が正しい気がする。それにアカリの【探知】でいずれ向こうから迎えに来てくれるかもしれないし、だから決して迷子になったというわけでは――


「……はい」

「やっぱり!私、暇だから一緒に探してあげよっか?」


 首を傾げると、丁寧に編まれたおさげがふわりと揺れた。親切な人だ。この街、ヴィルドについて僕は何も知らない。せっかくの好意なので甘えさせてもらおうと思った。


「じゃあ、あの、お願いします」

「よろしくね!私は、パル。パルだよ」

「僕は、ミカゲです」


 パルは嬉しそうに笑った。金色の瞳が爛々と輝いている。


「ミカゲちゃんね」

「くんですね」

「あっ……」


 僕の笑顔は固まった。解ーせーぬー。


「気を取り直して!行こっか」

「あの、僕初めてこの街に来て。だからみんながどこにいるかが全然分かんなくて」

「じゃあ案内しながら探してあげる!私、そこそこ詳しいからさ」

「ありがとうございます!五人だから分かりやすいとは思うんですけど」

「まあまあここはいい街だし、気楽に行こうよ」


 白いワンピースが風にあおられてふんわりと膨らんだ。背の高いパルが背の低い僕を見下ろす。


「糸切れのミカゲくん?」


 僕を射抜くパルの金眼が一瞬妖しげに光ったような気がした。


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