表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

16 ボス戦 裏

更新をぼちぼち再開していきます。止まってしまいすみません。

「壊す気でせよ」


 そう言われたので、遠慮なく初手で玉座ごとぶった斬るつもりだった。戦おうと思って、まず思い浮かぶのはキズキとアカネの姿だ。二人はよくウォルディアへの道中も模擬戦をしているので、それを見学したり、戦い方を教えてもらったりしていた。


「まっすぐ攻めるな。相手の裏をかけ」


 キズキは、僕に初めて刀を持たせてくれた日に、そう言っていた。他ならぬカオリスから教わったことらしい。道中も魔物との戦いを実際に見せながら色々教えてくれた。


「いいか?相手の武器とまっすぐ打ち合うなんて論外だ。絡繰は接触を条件に発動するものも多いし、それで武器破壊なんてされたらたまらないだろ?逆に、自分の力の方が上なら武器破壊を狙うのもありだが、あんまり得策じゃない」


 確かに、初めて会ったときにキズキは相手のナイフを折っていた。そういうことだったのか、と納得できた。


「一番いいのは、初手で相手の後ろから一撃で決めることだ。戦いに卑怯も何もないし、不意討ちで勝てるならそれが一番電素を消費しないからな。空属性の【交代】はそれが一番やりやすいから、ミカゲが絡繰を使えるようになったら叩き込んでやる!」

「わたしもっ!キズキから教わって考えた使い方、教えてあげる!【透過】で姿を消すのと一緒に、【投影】で敵の注意を引く。その後ろからズバーンッて感じだよ」


 森の中で何度も二人の戦う姿を見ていた。でも、カオリスはキズキの師匠。背後からの攻撃は当然警戒しているはずだ。だから僕は、二人の戦法を組み合わせた。


「【投影】【透過】……はぁ――っ!!」


 距離があるカオリスに向かって、わざと大声を出した。その時に、【投影】の僕をカオリスヘ突撃させる。その瞬間に僕は自分自身を【透過】した。


「【交代】」


 小声でスイッチを唱え、カオリスの背後に転移する。カオリスはまだ気づいていない。


 いけるっ!――そう思っていたのに、気づけば僕は自分の【投影】を切り裂いていた。バレていたのか……。


「空の絡繰で儂に挑もうとは、無謀なことじゃ」


 どうやらキズキの戦法は通じないらしい。オーバーヒートまであと少し。属性絡繰は三つも使えないだろう。だから、ここからは“僕の”戦い方でいく。ぶっつけ本番だし、成功するかはわからない。


 でも、そもそも未知の賭けに勝とうとしているんだ。こんなところで負けてどうする!そう自分を奮い立たせた僕は、カオリスに聞こえるような大声でスイッチを叫んだ。


「【光球】【加速】!!」


 【光球】は仕込みだ。【加速】で斬りかかるのも囮。カオリスに、僕が自棄になって最後の攻撃に出たと思わせられればラッキーだ。本命は――


「乱れろ森羅万象。魔素よ、不可逆の流れを反転させること汝の使命なり。雨は昇り、花は蕾となる。此度宣告するは、過去の顕現」


 ――詠唱の高速化。小さな声で攻撃を仕掛けながら、一息に魔法を構築する。魔素の元はこの刀だ。髪飾りを作ってくれたときと一緒に、キズキが改良して渡してくれた。「魔刀・影機」。希少な魔鉱を混ぜた刀身に、エイスが魔素を封入しており、それを使用することで僕は魔法を使える。


 ただ、魔鉱の流通範囲が主に人間の国である「シュネーデッケ」なので、キズキは少ししか持っていなかった。ゆえに、封入可能な魔素量は少なく、【絶対零度】のような強力な魔法は一度きりしか発動できない。でも、今の僕にはその一度で十分だった。


「目くらましかのう?悪くはないが、安直じゃな」


 僕とカオリスの位置が入れ替わるった。僕は瞬時に後ろを振り向く間に、もう一節唱える。


「過ぎ去りし時が今蘇る」


 カオリスに向かって再び突撃。刀を上段に構え、最後の一節を唱え終わる。


「法則はここに破壊される」


 刃があと一歩で届くといったところで、僕の限界が来てしまった。絡繰の使いすぎ、オーバーヒートだ。


「終わりじゃ。頑張りはしたが――」


 まだだっ!――「【時間(ツァイト)逆進(・レトログラーデ)】【(とばり)】ッ!」


 「えっ!?」と驚くカオリスごと、闇が僕たちを囲っていく。僕は今、魔法で絡繰を戦闘前の状態に戻すことで、オーバーヒートを解除したのだ。沸騰するお湯を水に戻すイメージである。本来、人形はオーバーヒートを解除することはできない。


「外からの干渉は、拒まれるし、自分で戻そうとしても、【逆行】を使う消費の、方が大きいから、意味がない。私は、弱い女です……」


 トキネはそう教えてくれたことがある。別にトキネが弱いわけではなく、種族としての特性だ。それならば、魔法を使える僕は自分でオーバーヒートを解除できるのではないかと考えたというわけである。カオリスが制限時間を設けなかったのは、おそらく僕がオーバーヒートをすぐに起こすと思っていたから。それなら、この方法で意表をつくことができるはずだと思ったのだ。


 そして、闇がカオリスの視界を奪った一瞬で、僕は後ろに飛び退いてもう一つ小声でスイッチを唱えた。これが、僕の作戦の肝である。


「【(かげ)】」


 使い道がよく分からない独自絡繰だが、僕は一つ潜伏に使えることに気づいた。闇にはあらゆるものを飲み込む特性がある。影も光の当たらない場所にできる闇だと解釈すれば、自分を飲み込むことができるだろうと思ったのだ。沈むといった方が近いかもしれない。


 しかし、カオリスが作った空間には影がなかった。たぶん、光に指向性がなく、空間自体がまんべんなく明るいため、光の当たらないところにできる影がないのだ。だから、僕は強い光を放つ【光球】を設置した。それによって玉座に座ったカオリスと僕には、長い影ができている。【帳】は僕の潜伏が見られないようにするため。


「目くらましは通じぬぞ」


 カオリスが帳の外に転移するが、既に僕の潜伏は完了していた。一度潜伏してしまえば、影が消えてもそのままになる。ただし、影がないとでられないけど問題ない。帳を解除すれば、【光球】がもう一度影を作り出す。


 影の中は不思議な空間だ。床も壁もない真っ暗な空間で、頭上に影の外の様子がゆらゆらと水面のように映っている。見えるのは、カオリスの座る玉座。


「はて、どこに行ったか――」


 僕は勝利を確信して、玉座ごと背後からカオリスを刀で貫いた。今度こそ!――と思ったのだが、手ごたえを感じない。今の僕は上半身だけ影の外に出ているような状態なのだが、首根っこを後ろから掴まれ、全身を外に引きずりだされた。玉座に刺さった刀が、僕の手からすっぽりと抜ける。


「なるほど、独自絡繰じゃったか」


 座り込んだまま後ろを振り向くと、右手を顎に当ててそう呟くカオリスがいた。玉座に刃が刺さった瞬間転移したのだろう。もう一度攻撃しようにも、刀は手元にないし、消耗も激しいしどうしようと悩んでいると、カオリスが口を開いた。


「今度こそすまなかったのう。色々と聞きたいこともあるが、かなり楽しかったのじゃ」


 僕の手を握ってカオリスが立たせてくれた。どうやら、僕を認めてくれたらしい。そのことが分かった僕は、はぁと安堵のため息をついた。


「急に戦闘を仕掛けたこと、改めて謝罪する。最下位を連れて旅するキズ坊が心配でな。あやつからはまた、余計なお節介だクソババア、なんて言われそうじゃが。――侮っていたのう。おぬしは、強き子じゃ」

「ありがとうございます……。とはいっても、電素が無制限だったことが大きかったと思います……」

「なーに、その戦闘センスがあれば階級が上がるのも早かろうて。鍛錬に励むことじゃな」

「あの〜……」

 どうしよう……!この流れでは非常に言いにくい。でもこのまま黙っている方が後々厄介になるのは目に見えている。


「なんじゃ?」

「僕、階級が上がらないんです!上げるつもりも、ありません」

「――ほう?」


 カオリスの目が見開かれる。その口角はわずかに上がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ