歌姫
「ねぇ海斗」
「なに?」
「あのね」
「私から魔召石を取り出すことができきたらさ」
「あ、ああ」
「私と………」
「そうだ!」
「海斗!」
「さっきロロネが呼んでたんだった」
「ちょっと来て」
「おぉぅ!」
リエルは海斗の手を取ると部屋を連れ出した。
「はぁ〜〜」
「もう!」
その日が来るのはそんなに遅くはなかった。
海斗が二人にもうすぐ魔召石が取り出せると言ってから三日後にその時は来たのだ。
海斗の腕がミューラの胸の中心に飲み込まれているような状態だった。
ミューラは白目を剥き手はだらんと力なく垂れ口からは涎が垂れていた。
「よし!」
「掴んだ!」
海斗は慎重にゆっくりとミューラの体内から魔召石を抜こうとした。
すると少しだけ魔召石が移動した途端、魔召石は白色の雷を放出し始めた。
「うっっっ」
海斗は雷で腕がズタズタに切れ焼かれながらその激痛に耐えながら魔召石を少しずつミューラの体内から取り出そうとしていた。
魔召石が雷を放出しなければ十分ほどでミューラから魔召石を取れていたはずだが雷を放出し始めたせいで海斗は痛みで手を止めたりしたこともあって一時間以上経ってしまった。
「取れ…た」
「はぁはぁ」
海斗は魔力と体力を使い切り魔法が切れてしまうギリギリでミューラから魔召石を取り出すことに成功した。
「ふぅ〜」
あとは魔力が回復したらこの魔召石を塵も残さずに消し去れば終わりだ。
「ほんと、この魔法の欠点は大きいな」
「使った魔力はポーションでは回復できずに自然回復しかできないなんて」
「それも普通に回復する時間よりも回復する時間が遅いから嫌なんだよな〜」
「時空系はこれだから」
「面倒だ」
「うっ……」
「あ!」
「起きたかミューラ!」
「え、ええ」
「なんだかとても最悪の気分だわ」
「アハハハハ」
「そりゃ〜」
「別次元とはいえ自分の胸の中を他の人間が腕を突っ込んできたんだから気分も悪いだろうさ」
「ふぅ〜〜」
「まぁとりあえずもう終わったのよね?」
「ああ、終わった」
「じゃあみんなを呼びましょう」
「ああ、念の為にこの部屋には俺とお前だけにしたからな」
「かなり心配してるはずだ」
「ねぇ海斗」
「ん?なんだ?」
海斗が部屋を出てみんなを呼びに行こうと魔召石をテーブルに置いて出て行こうとした時、ミューラが海斗を呼び止めた。
「ねぇ海斗、私と結婚して!」
「ずっと決めてたの!」
「海斗が私から魔召石を取り出してくれたら海斗に告白しようって」
「俺みたいな農民でいいのか?」
「ええ!」
「あなた以上の人間なんて居ないわ」
「アハハハハ」
「それは違うだろ」
「まあ、でもなんだ」
「よろしくお願いします」