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四大精霊の契約者  作者: 橙矢雛都
第2章『カル王国』
71/151

18.友の為に

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。




~*~



それは本当なんだ。

その文鳥を見た時そう思った。


()()()()()()を冗談で言ってくる人ではないと分かっているので、本当の本当にマズい状況なんだと察した。

みんなも、そしてラティも。緊急事態であることを理解してくれて、私の突然の転移に何も言わずについてきてくれた。

全く知らない場所に転移することに恐怖を感じなかったわけじゃないけど、そんなことよりっていう気持ちの方が強かったんだ。

それに、1人きりじゃないしね。



「セト! 大丈夫!?」

「リル、フィ…? ラーティ殿も… なん、で…」



セトに怪我はないみたいなのでとりあえずは安心だ。けど、顔色が悪い。

後は… と辺りを見てソレがすぐに視界に入った。

鎖に繋がれた、レーダスが。



『なっっっによこれ!!? 触ろうとするとビリッてするんだけど!?』

『拘束の魔法… しかも厄介な呪い付きね』

『呪いは~… フォンセとルーチェがいるんだから解けるよぉ。時間は少しかかるかもだけど~…』

『問題は鎖と魔法陣だな! くっそめんどくせぇカンジの!』



みんながレーダスの周りに集まって、レーダスが受けている事象に対して考えを出し合っている。

あまりよくないということは聞くのは無理そうだ。となると聞けるのはただ1人…



「セト… 何があったの?」

「分からない… いつものように、襲撃されただけだと思ってた。でも、あれは… 今のレーダス様は、もしかしたら俺だったかもしれない。俺が… 俺のせいで…」



セトは酷く混乱していて、自分を責める言葉をぶつぶつと呟いていた。

襲撃されたことをいつものようにと言うのは、ちょっとアレな気もしたが… いやまぁ、それはおいといて。

大体は分かった。今一番考えなきゃいけないのはレーダスを助けること。

“呪い”はフォンセとルーチェが解けるらしいが、触れられないのなら今すぐやるのは難しい。拘束の魔法をどうにかしたいがどうすれば。



「…!!」



ラティが私に放たれた魔法を弾いた。そういやここ、一応敵地だ。

17… いや、18人か。魔法か魔導具かで姿を消しているみたいだけど私には分かる。

たった1人(セト)を消す為だけにこれだけの人数を投入するって… 本気度の前になんだか焦りを感じる。


けれどそんなことはどうでもいい。

友を傷つけられた怒りが頭の中を占めているのだから。



「……ねぇ、アナタなの? アナタのせいなの? セトを襲い、レーダスをこんなにしたのは」



私は誰が指示を出しているのか直感的に分かった。その人に向かってそう聞いた。

何もない所から現れた私とラティに混乱と警戒を向けつつ、それでも人数差の余裕があると思っているのかニヤリと口角を上げた。



「だとしたらどうだと言うんだ? どこから来たかは知らんが、キサマらは部外者だろう。我が国のことに首を突っ込まないでもらおう」



部外者… 確かに国に関しては私は部外者だ。私は、この国のことを何も知らない。

その人がどんな思いを抱えてるかというのも何も知らない。


……………………でも。



「“国”のことに関しては確かに部外者だわ。でもね、私はこの国に関してはどうでもいいと思ってる」

「なっ…」

「ただ、友を傷つけたアナタを許せないだけ!」



本当に、ただそれだけ。

今までが今までだったから、かつては守る為には身を引くという考えだった。

だけど今は、大切に思うものが増えた。失うことが前より怖くなった。

怖くなったから、逆に思い切って行動できるようになった。以前までの私とは違う所がある。



「ねぇ、どれくらい攻撃したの? どんな魔法を使ったの? アナタたちは彼を殺そうとしたんだもん。逆に殺される覚悟はあるよねぇ…?」



鍛練以外で人と戦ったことなんてない。魔物とは違う。もしかしたらうっかり力を込めすぎちゃうかもしれないけど、さすがに殺してしまうまではやらない。

ゆっくりと、一歩ずつ歩を進めながら言葉を吐いた。

周りには18人いるとしたが、実行したのはアイツ以外の17人だろう。その中に拘束の魔法を解除できる人がいるはず。

スーッと見渡すと、何人かはびくりと肩を揺らした。今さら、何に怖がっているのか。



「セト、やりすぎちゃったらごめんね」



先に謝っておこう。

手加減なんてできる気がしないから。



「たかが小娘ごときに何ができる!? お前ら潰せっ!!」

「「「はっ!!」」」



小娘ごとき、ね…

みんながものすごい勢いで振り向き、その人を睨みつけていた。でも姿は見せていないので、その様子は伝わっていないけども。

まぁまぁ、そのまま見ててよ。この人たちはその

“小娘ごとき”に負けるんだから。

てか負かす。ボコボコにする。(精神的に)



「リルフィ、半分は任せて」



笑っているけれど目が笑っていないラティがそう言った。そしてすっと型の構えをとる。

あれは。ラティがルオン義兄様と組み手をやる時に2人がとる姿勢だ。

ちらっとしか見たことがないからすごい気になるしすごい見たい。けどそんな場合ではないので帰ったら教えてもらおう。


ラティは剣を抜かない、ということは体術だけでやるつもりのようだ。確かに、その方がいいかもね。

私も体術は得意。色んなシチュエーションに備えてきちんと教え込んでもらってきたから。

身体強化魔法を自分にかけた後、加速し手近の相手の顎を蹴り上げる。それを合図としてラティも動き出し、相手を昏倒させていく。


魔法のみを重点的に鍛練を積まされてきたであろう、典型的な魔術師たち。

今やそんな思考なのも珍しいものなのだが、他国と大した交流がないのならそうなってもおかしくはない。

この国はどちらかというと閉鎖的に見えた。地形だけのせいじゃない。国民性、とでも言おうか。


けどまぁ、そんなだからか人数不利はあってないようなもので、相手するのに苦労はなかった。そもそもで、セト1人にすら攻撃を捌かれていたようなので元々のレベルも低い気がしてならない。

正面から突きや蹴りを入れたり、敵の魔法をいなして利用して別の敵に当てたり、腰が引けてしまっている人には額を指で軽く弾いた…りっ!



『うっわ… あれは逝ったな…』

『殺人デコピン…』

「死んでないから!!」



みんなに言い返しつつも、あっという間に敵は1人を残して沈黙していた。その残った1人も、腰を抜かしていた人なので戦意はすでに喪失している。

典型的な魔術師の相手は素手で楽勝だとサーラに教わったけど、まさにその通りでとても楽だった。ラティも無事に相手し終え、傷どころか息切れすら起こしていない。さすがだ。



「……ねぇ」

「ひっ!」

「アナタはあの拘束、解ける?」

「あの、いや、その……」

「解けるか、解けないか。はいかいいえだけ答えて」

「は、はいっ! 解けます! 解けます!」



ちょうど拘束の魔法を展開した魔術師を残せていたようだ。解ける、という言葉を信じて(少し脅し気味で)やらせよう。

……敵側だけど、若さに比例しない魔法の才能の片鱗を感じる。なんかちょっと見込みがあるぞ?

その魔術師を促して解かせようとすると、金切声を上げながら遮ってきたのは指示を出していた人だ。誰だかは知らないけど。



「もう、止めにしませんか。これ以上の罪を重ねることは…」

「うるさい! うるさいうるさいうるさい!!! 邪魔な者を消そうとして何が悪い! 第一王子を差し置いて第二王子が王太子などでしゃばりおって!」

「彼を王太子にと決めたのは国王陛下でしょう」

「それが一番理解できん! 何故私の妹が産んだ王子ではなく、あの女が産んだ王子なのだ!?」



あの女、とはセトの母親のことだろうか。

そして私の妹が、ということはこの人は廃妃となった女性の…

廃妃となった、としか聞いてないのでその女性がどうなったのか、今どうしているのかは知らないが。でも、()()()()()()()のは事実なので、その人の訴えは通ることはない。


というかむしろ、元王妃の実家には何も影響はなかったのかと疑問がある。夫であった王以外の男の子を腹に宿したのだから。

普通なら責任をとらされていてもおかしくはない。



『(リルフィ様、第一王子のことは、一家しかない公爵家にしか真実を話してないらしいです)』



頭の中にフォンセの声が響いた。

ちらっと見ればフォンセとルーチェはセトに寄り添っている。セトから何か聞いたのだろうか。

真実を知る者は少ないと聞いていたけど、公爵家以下には話していないということだから、元王妃の実家にも説明されてないということか。


どうして言わなかったのだろう。余計な反感を生まない為にも、伝えるべきではなかったのかな。

色々気になることはたくさんあるが、それよりもまずはレーダスであるのは変わらない。拘束が解けたらすぐに呪いとやらも解かないと。

…ん? あれ… でもなんだろう、この違和感…



「リルフィ… レーダス様は、大丈夫なのか…?」



セトのものとは思えないほど、その声は弱々しかった。

私の近くにいたラティにも聞こえていたので彼もとても驚いている。あまり表情には出ていないが、ぴくりと眉は動いた。


私はみんなの方を見る。

あちらはまさに魔法の解除中で、魔術師の人はみんなに囲まれ威圧されながら、何の汗か分からない汗を流していた。

姿を見せているのかどうかは知らないけど、その(オーラ)だけでも十分だろう。それ以上脅し続けたらむしろ倒れそうだ。

たぶん、相手が精霊だとは思ってなさそうだし。



「……その子供がなんだというのだ」



その呟きに反応して振り返ると、右手を振り上げている男の姿が視界に入った。

投擲か、魔法か。あらゆる可能性を脳内に浮かべるが、振り下ろされた右手の後には何もないように見えた。


だからか全員の反応が僅かに遅れた。

その男は確かに()()()()()のだ。極小の種を2つ。

私とセトに、それぞれ1つずつ。

その種は私たちの足元に落ち、すぐに発芽し、根を張り、成長する。


見たこともないその植物の先端は花ではなく、まるで口。

その光景は一瞬だったけど、私の目にはスローモーションのように見えた。

喰われそうになって、ラティに腕を引かれ、守られ。このままじゃラティも危ないと思ったら私たちの周りを囲うように氷壁ができてて。


目の前の植物は、氷壁に阻まれたその瞬間に崩れさっていた。

ほっとしたのも束の間、セトは無事なのかと心配になったのだけど…



「あ、にうえ…? え… なんで… 兄上っ… 兄上ぇえぇぇ!!!」



セトのその叫び声はセトの無事を知らせもしてくれたが、同時にセトにとっての絶望を表していた。




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