表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/56

第1章『コクト・パイロット・サヤ視点』-11

 再びシミュレータールームの前に移動。待ちに待った二人きりの時間だ。

「なんだか緊張しますね」

「できるだけリラックスしてくれ。戦場で身体からだこわばると指先も足も動かなくなる。毎回だれかが助けてくれる保証はないからな。つねに自分自身がもっとも信用できる存在でなければならない。そのための訓練だ」

 シミュレータールームにはいくつもの個室が並びウィッシュの操縦席が完全に模造もぞうされている。本来ならウィッシュは一人用の単座型たんざがたなのだが、このように指導目的の場合にそなえてシミュレーターは二人で座れるように横長よこながのソファ・シートになっている。

「まずは一回、お手並み拝見といこう。前回の戦闘よりは良い結果を期待きたいしてるぞ」

「そんなあ、急に操縦なんてうまくなりませんよー」

 個室のドアを閉めてしまうと、さきほどまでハンガーから響いていた整備中の騒音や声がすべてかき消える。部屋の防音機能によって、この空間は機体の内部となんら変わりない。いつもと違うのは……。

「あの、なんだか近いですね」

 すぐ隣に隊長がいるということ。

「気にするな。一応、二人が座れるスペースはあるんだが……。ちょっとせまいのは我慢してくれ」

 もっと近くてもオッケーなんですけど……。なんて言えるはずがない。

「最初は一たい一の状況で開始しよう。こちらの武器は使い慣れてる七式ななしきでいいか?」

 手元にあるキーボードを操作して戦闘データを入力していく隊長。……ぐはっ、肩とか膝が軽くれてるう……。もういっそ抱きついていーですかっ?

「ん? 一対一じゃ簡単すぎるか、サヤが不満なら別の状況でもいいんだが」

「い、いえ。こ、これで行きます!」

 まったく、私は何を考えているんだっ。この状況でいきなり抱きつくなんて、それじゃ怪しい変態さんではないか。落ち着けー、落ち着くんだサヤ。これは訓練だ……。戦闘に集中するんだっ。

 ……でもでも。かたおもい大爆発な人と身体からだがちょこっとれていると……いくら私だっていらん妄想しちゃうじゃないかーっ。

「気のせいか震えてないか? そんなに緊張する必要はないぞ」

「は、はひっ」

 返事したのはいいけど、握り締めた二本の操作レバーが汗でベトベトです。

 それでもなんとか平静へいせいよそおってフットペダルに右足、左足と順番に足を乗せる。

 どーしても気になって視線を少し動かせば、すぐそばにはモニタースクリーンを見つめるコユキ隊長のりり々しい横顔。やわらかそうなあおい髪が揺れて視線がこちらに動く。

 結果、あたり前なんだけど……自然に私と目があった。

「俺の顔を見ていてもブリーズは倒せないんだが……」

「す、すみませんっ……」

 くーっ、情けなさ百パーセント。恥ずかしさ千パーセント! いきなり精神的にピンチだあああーっ。

「レーダーを見てくれ、来るぞ」

 実戦と同様に、索敵さくてきレーダーにブリーズの機影きえいが不意に飛び込んでくる。レバーを操作してツナミ七式をかまえ、ターゲットを合わせようとするけど。

「ありゃ、ロックできません!」

「落ち着け。七式の弾丸だって無限に飛んで行くわけじゃない。射程しゃてい距離ってものが設定されている。あせって撃つ必要はない。あいつらは意外と慎重しんちょうでな、遠距離から無理に発砲してこない。さらに単身たんしんで突撃するようなマネもしない」

「ちゃんとクセとかパターンがあるんですねー」

「そういうことだ。いくらブリーズが進化するバケモノとおそれられていても、人間ほどの操縦そうじゅう技術はないし、俺たちが使っていない兵器や機体は絶対にコピーしてこない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ