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Musica Elaborate  作者: 柊
本編~学園編~
14/59

事態は急速に展開す 3



「いいか六花!人生は山あり谷あり!だからどんなに最悪の状況でも投げださずに足掻いて見せろ!そうすりゃぁたいてい自然に山に向かってくもんだ!」


って、昔おじいちゃんが言っていた

ガーッハッハッハって高笑い付きで・・・・うん、お約束な人間ばっかだね、ウチの親戚って


でも、それじゃぁ今絶好調で谷な私はいつか山になるのだろうか

―――はい、なったためしなんかないですね。人生そう甘くないですね

  

  やってられっか!








私にとってもみんなにとっても核爆弾を落とした紫ちゃん・・・・・・・が、第二弾を落下しました

しかもあれです、絶対拒否不可な笑顔とセットで



「は?」

「今なんて?」


ティエンランと被っちゃったけど、もうそんなこと気にしてられない

二人揃ってテーブルから身を乗り出し、上座で優雅に紅茶なんか飲んでる紫ちゃんに詰め寄る


「あら、聞こえなかった?それより二人とも、お茶の最中に机をたたくなんて何事?行儀が悪いわよ、座りなさい」

「え、あ、ごめんなさい」

「あ、失礼しました・・・・・・・・・・・・・・・じゃなくて!」


そうそう!流されるところだった!


「紫ちゃん!どういうこと!?よりにもよって、コイツと!」

「なっ、コイツってなんだよコイツって!オレだって・・・魔女と」

「魔女じゃない!私にはちゃーんと、白峰六花って名前があるの!さっき自己紹介したでしょ!?」

「そうじゃな・・・・・あぁっとにかくっ!俺はコイツと組む気なんかありません!」

「それはこっちのセリフよ!こんなヤツとコンビなんて冗談じゃない!」


互いに指さし、謀ったかのように交互に言葉を発する二人

その背後で桜と篁(というか桜が一方的に)が「仲良いですねぇ」「・・・・・」などと言ったものだから



「「仲良くない!!!」」



と今度は見事なハモリ


「あらまぁ、もう息がピッタリ。きっと言いコンビになりますよ~」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「(_д_)。o○」


・・・・・・・・・くぅ兄、いつまで寝てるんだろ。というか服で顔覆ってて、息苦しくないのかな?


「やっぱり私の見立て通りでしょう?合うと思ったのよ、貴方達」


他の人なら、そんな邪気なし美麗笑顔に騙されてたんだろうけど!

なんていったって紫ちゃんとは付き合い15年、心臓の対美形耐性は十分ついてる

それにこの笑顔の裏に隠れた『面白くて面白くて仕方ない』って気持ちがわかる今じゃぁ、とてもじゃないけど見惚れてなんかいられない


「何を根拠に・・・」

「そうだよ!それに今のこの状況みてどこが合ってるっていうの!」

「その通りです、だいたいコイツの力なんか借りなくたって俺は大丈夫です。むしろお荷物になるだけだ」

「!?」


荷物、今荷物っていいやがったのコイツ!

確かに魔法は上手くいかないし、はっきりいってこんなの選ばれたって、場違いだってわかってる


「邪魔になるだけで、俺にはなんのメリットもない」


でもねぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

お荷物なんて言われて、黙ってられるわけない。前にも云ったけど、私かなり短気だし




「それに対抗戦なら、下手すれば命に・・・」

「さっきから聞いてればなーによ偉そうに!!!あんたが何様なのか知らないけどねぇっそこまで言われる筋合いないわよ!」


久々にやりました、テーブル持ち上げ(別に特技じゃないけどね)

ちなみに間合いをとっくにつかんでる先輩方は、しっかりお茶とお菓子を確保済みである


「ちょ、おい!危ないだ「だいたいねぇ!あんた一人で平気みたいなこと言ってたけど、ホントにそんな実力あるわけ!?」

「なにっ!?」

「口ではなんとでもいえるからね~女の子一人守れないっていうんだから、大したことないんじゃないの?」


無駄に嫌味口調なのは、紫の教育の賜物だ。いや、教育というより汚染、もしくは悪影響というべきか

ちなみに当の本人は素知らぬ顔で、ニヤリとしながら高みの見物に洒落こんでいる


「俺は思ったとおりのことをいっただけだ!それにお荷物一人守るくらいわけない!ただ足枷があると邪魔なんだよ!」

「足枷になんかならないわよ!ホントは出来ないくせに、人のせいにして逃げるつもり!?やっぱり剣士科は腰ぬけばっかりね!なっさけない!」

「なんだと!?そこまでいうなら証拠を見せてやる!矢だろーが魔術だろーが何だろーが完璧に守ってやれば文句ないだろ!?

お前の方こそ足枷にならないって言ったなら、俺の足ひっぱんなよ!」

「あーっもう!なんであんたはそう一々偉そうなわけ!?言われなくたって、アンタの足なんか頼まれたって引っ張るもんですか!

仮だろーが本だろーが契約してあんたをきっちりサポートしてやろうじゃないの!」








「しっかりと聞いたわよ、今のお言葉v」


はっとしたときには時すでに遅し


「桜、言質は?」

「うふふ~昨日魔科学部技術科が開発した高性能音声集積石でブレスのタイミングまでばーっちりです~」


そしてそのままそれは、奪い返す暇も破壊する暇もなく、紫の懐にしまわれた

――――たかが2年生2人がかりでは、盗り返せるはずもなく



「じゃぁ後は桜と篁、紅と私でペアね対抗戦、その他諸々でもこの組み合わせでやるから

当然、文句はないわね、二人とも?」


集積石をつまみあげ、口角を上げる

う、だの、あ、だの・・・とにかく何か反撃をしようと試みていた二人だが




「いいわよ、ね?」


天上天下唯我独尊 絶対無敵生徒会長様の前では、首を縦に振るほかなかった













「・・・・・・・・・・・・・・・おい」

「あら、いつから起きてたの?」


最悪、やられた、悪夢だぁっ!と叫ぶ六花と、灰よりタチが悪い人間がいたなんて・・・・わはは、世の中広いな・・・・と呟くシェイド、それに桜と篁が部屋を後にすると紅はむくりと起き上がる


「六花がテーブルを持ち上げた時からだ。それよりも・・・・・本気か?」

「六花ちゃんとシェイドくんのコンビ?当然よ。冗談で六花ちゃんにここまですると思う?」

「思わない」


――お前、六花は特別扱いだからな


「しかし・・・・・・・・・厄介なモノを抱えているぞ、アイツは」

「それって六花ちゃん?それとも」

「両方だ、篁が始終アイツを気にしていた」

「えぇ、まぁ確かにちょっと厄介なモノを持っているわね、彼も」


当然調べはついている

彼の家族構成、生い立ち、成績の数々は全て紫の脳に記録されているのだ


「でも素材は最上、磨けばどう化けるのか・・・・・・気にならない?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「沈黙は肯定と受け取るわよ?」

「しかし」

「それに、あんたがそこまで渋るのはそれが理由じゃないでしょ?」


ギクリッ、なんてリアクションはしないが、微細なモノでも付き合い20年の紫には十分だ

ニコリと笑って、口角をあげ


「シェイドくんが男だから気に入らないんでしょ、このシスコン」

「お前にだけは言われたくない。メンバーを決める時に唸っていたのを忘れたわけじゃないだろう」

「・・・・・・」


反撃されるとは予想外だった

ならば、と


「それじゃぁ妥協案、貴方が六花ちゃんと組んで、私が彼と「どこが妥協だ、悪化した」


眉をひそめ、あからさまに機嫌が急降下している紅に、微笑をこぼす



「冗談よ」

「当たり前だ」

















最悪だ、何で俺があの魔女と組まなきゃいけない・・・・

しかし、一度言ったことを取り消すのは・・・・


おそらく灰がいれば、ヘタレと一声の下に切り捨てるだろう状態のシェイドは、未だ部屋の近くで唸っていた





「・・・・・・・・・・・・・・・・シェイド・ラ・ティエンラン」


背筋が凍る、とはこういう時につかうんだろう

ビクリと視線を上げると、しだれ柳のように前髪をたらした男が一人―――篁・蘇芳だ


「っと・・・蘇芳さん、なんですか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・篁でいい」


だらりと垂れる黒髪の間から、恐ろしく冷たい青い目が覗く

おまけに黒装束にデカイ鎌・・・・・・完全に、ホラーだ


そしてそのまま沈黙

しかし篁が前から動かないので、シェイドもその場から動けない。仮にも上級生、このまま無視してさようなら、というわけにはいかないのだ



「あの」


何か、そう問う前に篁が口を開く

なんか・・・・・今日は邪魔されてばっかりだな




「死神の仕事は、魂、それに闇を狩ること」

「は?」


何を、しかし有無を言わせぬアイスブルーの瞳が、シェイドを射抜く

口ごもると、彼はきにせず続けた


「闇は魂の鎖、鎖は重石、これを断ち切らなければ天界には運べない。新たに輪廻を巡ることも叶わない

故に我らはこの鎌で鎖を立ち、断てぬ者は冥界へと連れ帰り、その業を削ぐ」


沈黙


黒のマントがズルリと滑る、その下から覗くのは、さらに濃い黒の制服

他の色など一切ない、ただ黒一色で


しかしそこからは、確かに血の匂いがした



鮮明に記憶に刻まれている、あの



―――――何よりも、紅い










「そして鎖は、我らが切らぬ限り断ち切れず

故に闇も業もまた、生けるうちは断ち切れぬ」


碧の目を、見開いた


この人は、知っているのか?



瞬間   視覚聴覚触覚味覚嗅覚感覚―――全てが






世界から  絶たれた






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・レイヴィス」


それを聞いた瞬間、全てが還った

その代わりに未だ自分を見下ろす男から、目が離せなかった


何故



「古語において、その意味は『空』

そしてシェイドは『太陽』か・・・・・・・・・・太陽と、空、上手いことを考える」


わずかだが、その口角が上がったのを、視認した


「しかしお前のそれは、空にとっては望まぬ闇。囚われていては、本当に堕ちるぞ?」

「っ!何が!」


あんたに、何が!

咄嗟に――もはや鼻が触れるかのところまで近づいていた――体を突く


遅れてしまった、と思ったが篁は気にした様子もない


「忠告はした」


そのまま踵を返し、振り向くことなく廊下に消えた



「・・・・・・・・・っくそ!」


残されたのは、『太陽』ただ一人














「・・・・・・・・・・・・・・待たせたな桜」

「あら、かまいませんよ~・・・・・・ってあらあら?篁、何だか元気がないですねぇ」


駄目ですよ~何事もポジティブシンキング、です

のほほん、と笑う桜に、篁は声音も、鉄仮面といわれるその表情さえ変えず


ただ



「大したことではない、ただ・・・・・・・・そうだな『太陽』が『月』を見つけられれば、と思っただけだ」

「月ですか?空に出る?」

「肯定だ、月は夜、太陽は昼を司る。それは対

太陽は月に光を与え、月は太陽に代わり、太陽が生んだ闇を照らすもの。対は対なればこそ、輝く、その闇を祓う


故に孤独の太陽には月が必要、そう思っただけだ」


聞き終わって一瞬キョトンとし、それからふわりと笑む

桜のそれが、同意と知る篁は何も言わず




静寂が満ちた

しかしそれは決して思いものではなく


ただ穏やかな、







次回のキーワード。無茶ぶり。

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