事態は急速に展開す 2
話題騒然阿鼻叫喚 カオスなチーム発表の後、大混乱のまま場はお開きになった
ちなみに逃亡を図った六花はあえなく紫に確保され・・・・
そのまま第一回ミーティングという名の戦場に放り込まれたのだった
その場は、大変空気が悪かった。いや、訂正しよう
その場の中の約二名が大変悪かった
もう言わなくてもわかるだろうが、悪い空気発生源は白峰六花とシェイド・ラ・ティエンラン
年の順ということで並べられたため席は隣、だがお互い目も合わせなければ挨拶することもなく
ただそっぽを向いて互いに黙り込んでいるだけ
とは言っても、実際は怒っているのは六花だけで、シェイドは気まずいが何かする気はないため無視しているだけだ
しかし腐ってもあの久我紫に選ばれた猛者達
たかだか下級生の空気が悪かったくらいで、気にする奴は一人もいない
現に今この場にいない紫を除くメンバー達は、全く意に介した様子もなく・・・・どころかマイペースにやりたい放題好き放題
紅・・・・らしき人物はソファに寝転がって爆睡
桜はミミを連れ込んで二人遊び中
篁はただ黙々と鎌を研石でといている―――本人曰く趣味とのこと
と、
「あらぁ、そういえば自己紹介がまだでしたね~
私は叶桜、でこの子がミミちゃんです~、5年生で先輩なんで何でも聞いてくださいね~」
突然の自己紹介は、別に悪い雰囲気を変えようとかそういった考えから至ったのではなく、桜の場合、本当に今この時偶然に思いついただけなのだ
それでも結果的に、場の空気が変わったのは事実で
「あ、はい、初めまして。剣士科2年のシェイド・ラ・ティエンランです・・・・叶さん」
またまた訂正しよう。場の空気は一部だけ変わった
当たり前に丁寧なその態度は、会う度にとにかく腹の立つことばかりいわれている六花の機嫌を急下降させた
ちょっと・・・あんた私の時と態度違いすぎない!?所詮あれか、顔と物腰か!桜さん美人だし
・・・・というかわたしの周りは美人度高すぎじゃない?一緒に並ぶとちょっと、いやちょっと+αいたたまれないんですけど
筆頭は当然紫ちゃん。でももうあの人は別格過ぎて劣等感すら起きないわ
といつのまにやら思考が別ベクトルに向いている一人百面相中の六花にかまわず、自己紹介タイムは続く
「よろしくおねがいしますね~、名前呼びでいいですよ
あぁそれからこっちは篁・蘇芳、あまりしゃべらない人ですけど、優しいんです~」
篁さんは一度だけ顔をあげ、少し、ほんの少しだけ頭を下げて再び作業に戻る
・・・・・・生徒会の人は紫ちゃんつながりで面識あるけど、この人だけは滅多にいないからあんまり知らないんだよねぇ
たまに見るけど、それはちょっと常軌を逸しているというか・・・とにかく普通じゃない時だし。普段はこんな人なんだ
・・・・・ホントに面白さだけで選んだんだね紫ちゃん
「それで、シェイドくんのお隣さんが白峰六花ちゃん。は、面識はありましたよね?」
「・・・・なんでそんなこと」
当然の疑問を口にするシェイドに、桜はにこりと笑って
「魔女科魔科学部はいつも実験にいそしんでいるのです
その中で音声・映像録音編集の実験中に偶発的に何かが録音されてしまうのはよくあることなんですよ~」
「いや、それただの盗聴盗撮でしょう」
「というか何やってるんですか魔科学部」
一瞬の、間
視線をスライドさせれば、碧と目が合った
光の当たり具合によって青にも緑にも見えるそれは、昔よく行った海の色に似ていて・・・すごく綺麗だ
うらやましい、私の目ってなんか血の色みたいだからあんまり好きじゃないし
くぅ兄とかはかなり綺麗な紅色なのに、私のはなんかちょっと黒っぽいというか・・・・・・・・あ
碧の目がわずかに歪む
ティエンランの口が開く前に、思いっきり反対側に顔をそむけた
・・・・ってあからさま過ぎたよねこれ!?ああでもあんなムカつく奴に一瞬でも魅入っちゃったんだ!白峰六花一生の不覚
結局そのまま首を戻すに戻せず、不自然にそっぽを向いたままで・・・
痛くなった首を戻せたのは、紫ちゃんがやってきてからだった
大騒ぎで行動から出て行く奴らにまぎれて、さっさと逃げるつもりだった
本当は直接棄権するのがいいんだろうが・・・・・それはヤバイと俺の本能が言っていた
灰に鍛えられた俺の『ムカウナ危険信号』がさっきから反応しまくっている
だからさっさと戦略的撤退をしようとした
そう、した
『囲うは鉄鎖 散らすは翼 望み欲すは籠の鳥』
「っ!?」
な!?体が動かない!
「ふふふ、どこにいくつもりなの?シェイド・ラ・ティエンラン君」
あぁ今まさに『ムカウナ危険信号』がメーターぶっちぎって振りきれた
それでも、もうどうあがいても逃走など出来るはずがなく
「・・・・・・・・・・逃げようなんて思わないことよ、貴方の将来のためにも、ね?」
後ろに鬼がいた、後に彼はそう語る
そのまま部屋に連れて行かれ、年功序列だとか言われ、あの魔女の隣に座らされた
・・・・・・・・会いたくないと願う相手に限って何で会うんだ、俺は
そもそも人間関係でろくな目にあったことがない
筆頭は灰だ、アイツは昔から笑顔で、嬉々として、人の嫌がることをやる奴だ。忘れもしない5歳の夏
落とし穴に落とされたかと思えば、なんか黒くてギギギって鳴く・・・謎の生命体をぶち込んできやがった
しかも泣き叫ぶ幼い俺を、奴は穴の上からほくそ笑んで見下ろしていたのだ
というか今から思えばどうやって掘ったんだあの穴。軽く高さ5メートルはあったぞ?
・・・・駄目だ、思い出してきた。奴らの甲高い鳴き声が耳によみがえり、背筋に寒気が走る
あれは本当に恐怖だった
・・・兄さんが泣き叫ぶ俺に気づいて助けてくれなかったら、奴らと一夜を明かすところだったんだからな
そして今だそのことで、灰に謝られたことはない。というか絶対アイツ忘れてるな
俺の借りは全部覚えてるくせに、あのエセ爽やかめ
そして親類だ
コイツらは灰よりタチが悪い。ある意味正々堂々仕掛けてくる灰と違って、コイツらは陰で色々してくるから面倒だ
一々言い返すのも面倒だ、でも言われっぱなしは腹が立つ
あぁでもそれに並ぶくらい面倒なのが・・・隣の魔女だ
謝った方がいいんだろう、でも声をかけたが最後面倒なことになる気がする。面倒事は灰を親類だけで十分だ
と
「あぁ、そういえば自己紹介がまだでしたね~
私は叶桜、でこの子がミミちゃんです~、5年生で先輩なんで何でも聞いてくださいね~」
脈絡ないな
とは思ったが、初対面である以上挨拶するのは礼儀だろう
そう思って俺も名乗ると、その叶さん・・・・・じゃない桜さんは黙りこんでいるもう一人の男の紹介もしてくれた
・・・・・とてもじゃないが優しそうには見えないが。むしろ禍々しいオーラが出ている
でも兄さんも『人は見た目じゃないよ』っていってたしなぁ・・・
まぁその後に
『でも大抵の奴は外面に騙される。せっかくシェイドは元がいいんだから、それを最大限に活用するんだよ
というか仮にも俺の弟が騙される側に回るなんてありえないよな?』
と付け足していたが
兄さん、普段は多分優しかったのに社交だけは厳しかったな
にしても今から思えば4歳児(当時のシェイド)に何を教えていたんだあの人は
まぁそれはともかく
代表は今席をはずしていて、後は魔女とソファに剣士科の上級生が一人・・・・・・・誰だったかな、発表聞いてなかったからわからない
おまけに頭から上着かぶって寝てるから、顔すらも不明
そして8人のはずの対抗戦のチーム、残り2人はいない
後から聞いた話だが、何でもチーム代表は試合2試合を欠席する代わりに、メンバーを一人自由に選べるらしい
そして代表――久我会長は4回の欠席と引き換えに2名を指名する権利を得た。しかし発表の場では誰も指名しなかった
6人でも他より不利なのに、さらに主戦力の会長が抜けるとマズイんじゃないのか?
やる気のなかったわりに、おそらくこの中の誰よりも現実的に対抗戦のことを考えているシェイド
実はやる前までは面倒がるが、いざやるとなると誰よりこだわるタイプだったりする
「それで、シェイドくんのお隣さんが白峰六花ちゃん。は、面識はありましたよね?」
思考に浸っていたため一瞬何を言われていたのか理解できず、固まる
そしてまた内容を理解してからも、
「・・・・なんでそんなこと」
別段騒いだつもりはないのに、そんなに伝わってるのか?だとしたら相当話題がないんだな、この学園は
「魔女科魔科学部はいつも実験にいそしんでいるのです
その中で音声・映像編集の実験中に偶発的に何かが録音されてしまうのはよくあることなんですよ~」
なるほど、別に灰が言うように噂が出回っていたわけじゃぁないみたいだな
・・・・・・・・・って、ちょっと待て
「いや、それただの盗聴盗撮でしょう」
「というか何やってるんですか魔科学部」
まったくだな、というか普通に犯罪だろうそれ?
こんなことばっかりだなこの学園!この間なんか誰にも知られてないはずの、俺の語学の点数が灰にばれてたし
・・・・・・・全世界共通語があるのに、今さら昔の言葉なんて出来なくても問題ない
ん?
視線を感じる、しかもほぼ正面から
意識が現実に戻ると、じっとこちらを見てくる魔女・・・白峰だったか?と目が合う
しかもだ、だんだん眉間に皺が寄っていく・・・俺は何もしてないぞ
はっきりいって、人に見られるのは好きじゃない
しかも黙って、こんな風にじっと見られるのは余計に
「な」
――何か用か
の、一言目を発した瞬間に勢いよくあいつの顔が反対に向いた
・・・・・・・・・・・・何なんだ?
やっぱり女はよくわからない、灰が面倒だっていってた気持がよくわかる
じっと睨んできたくせに、声をかけた途端に拒否って何だよ
というか用事がないのに、なんで女は人の顔をよく見るんだ?廊下を歩くたびにこっちを見てはこそこそ何か言ってくるし
本当に、よくわからない
シェイド・ラ・ティエンラン
剣士としてこそ優秀だが、男としては相方(灰)がいない限り超朴念仁である
「・・・・・・・・・本気ですか、紫さん」
ウォルナット・ロウ・ローシェンナは引き攣りそうな顔を必死で抑え、隣で優雅に腰掛ける美女に視線を移した
しかし紫は何のことだか、とそしらぬ顔だ
「本気とは何のこと?」
「・・・・・あのメンバーですよ、勝つ気がないとしか思えない」
「あら、メンバーはランダムで選ばれるんでしょう?私になんの関係があるというの」
そう言われると、何も言えない
確かにこのイカサマは公然の、だが歓迎されることでもないのだ
もしや本当にイカサマしていないのか?とも思ったが、謀ったとしか思えないあのメンバーはやはりイカサマなのだろう
偶然でアレがそろったとなれば、それこそ奇跡だ
そして何より、奴が彼女の下にいることが
「・・・・・・久我紅は、敗北の嫌いな貴方が勝利を捨ててまでそばに置く必要のある男なのですか?」
一瞬の、間
そして返ってきたのは冷ややかな眼差しと
不敵な笑み
「あら私、勝つ気だけれど?」
あのメンバーなら勝てるわ
目を見開く
どう聞いても、強がり以外の何ものでもない。おそらくその場にいた誰もに聞いてもそういっただろう
・・・・・・スマルトを除いては、だが
つまり彼女をよく知る人物なら誰もが紫の言葉を信じたということだ
何故なら紫は、負け戦すら勝ち戦に変えてしまう女だから
そして同時に、無理だとわかっていてあえて出来るなどとはいわないから
沈黙したウォルナットを一瞥し、席を立つ
まさに逃走しようとしている2年生2人組を見つけたからだ
「あぁ、それから――――」
刹那 空気が凍った
それほどまでに、純粋に、冷たい視線が落ちてくる
「―――――貴方の言う人の『価値』とやらがあるのなら、紅のそれを貴方に語られたくはないわね」
唇が、弧を描き――― 冷笑した
「私が愛して、伴侶と決めた男なのよ
・・・・・・それ以上侮辱の言葉を吐くのなら、その声帯、潰してあげるわよ?」
今度こそ完全に、彼は沈黙した
「あはは、なんだか雲行き怪しいねぇ」
全くもって、その通りで




