ドキュメント72
つまんないから、毒入れた。
食べると食道を焼いて、内臓を腐らせる。
最初から手遅れ。
昨日から3日間、
有名なドキュメント番組が取材に来てて、
病院の中にあるケーキ屋さん。
僕はかわいいぷりしてバイト。
つまんない。
特に特徴の無いメガネの女が来店した。
モンブランとフルーツタルト。
毒入り。
ドキュメント達が女にインタビューをする。
『なぜ、ケーキを?』
『長らく入院している息子に差し入れです』
なぜ?
なぜ、こんなタイミングで
ドキュメントするのさ。
そんなこと、知りたくなかった。
母親は、ドキュメントに頭を下げ下げしながら、
病院の廊下の朝日の中を、歩いてった。
ちょっとぼんやりしていると、
ただのデブのおっさんが来店した。
長らく悩んで、苺のショートケーキ。
毒入り。
手遅れ行き。
よせばいいのにドキュメント達はおっさんにもインタビューをする。
『なぜケーキを?』
『赤ちゃんが産まれたんです。』
聞きたくなかった。
聞きたくなかった。
聞きたくなかった。
昨日からお父さんになった喜びが
キラキラになって、光の粒が
ケーキ屋さんの店内を幸せにした。
ああ、そうか死ねばいいんだ。
休憩の時間までに、なんとか答えを出せた僕は、
くだらないおにぎりを食べて、
途中でアホらしくなって、ゴミ箱に投げた。
トイレに入って、こんな日のためにいつも持ち歩いている、安全じゃないカミソリで
動脈を引っ掻いた。
こんな日が、いつまで待っても来なかったので、
切れ味はとても悪くて、とても痛かったけど、
そんな甘えた事はいえない。
頑張って動脈をダメにできた僕は、
ホッと安堵のため息。
ああ。そうだ。
ごめんなさい。
て書いておかないといけない。
ちょうど赤いインクが
余るくらい大量にあったので、
指先でトイレの壁に、ごめんなさい。を
書こうとしたのだけど、
身体はもう死んでいて、
そのまま何もできずに、僕も曖昧になった




