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異世界ダンジョンの最強清掃員~パッカー車で転生したおっさん、ゴミをプレスし国宝錬成!悪党は分別処理して極上温泉スローライフを満喫します~  作者: トール
第七章:事業拡大とエリートの挫折、そして王都を救う「最強の現場力」

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第037話:車検と軽トラ無双

 


 1.重機の休息と、ダブルキャブの代車


 王都の貴族街の一角にそびえ立つ、巨大スーパー銭湯兼・事業所『芝崎湯』。

 その裏庭に広がる広大な資材置き場には、朝から重苦しい雰囲気が漂っていた。


「旦那(現場監督)。こいつぁ、今日は一日動かせねぇぜ」


 ドワーフの親方が、煤けた顔でスパナを握りしめながら言った。

 彼の目の前には、芝崎一郎の愛機である白銀のパッカー車が、エンジンカバーを開けられた状態で停まっていた。


「そうか。やっぱり無理させすぎたか」


 一郎は首に巻いたタオルで汗を拭いながら、深く頷いた。

 昨日、隣国での接待ゴルフでバールを使ったホールインワンを決め、魔獣を一本釣りしたことで大公たちを虜にしたばかりだが、パッカー車の酷使は『魔王領の出張』から続いていた。数万トンのヘドロを超高圧バキュームで吸い上げ、超巨大な古代兵器を王都まで牽引し、さらには隣領の巨大魔城での有毒ガス吸引や、『天空の魔塔』の解体処理と、連日の災害出動が重なったのだから、いかに女神の加護を受けた神聖魔導エンジンとはいえ、魔力炉のフィルターやサスペンションに限界が来てもおかしくはなかった。


「法定点検(車検)は絶対だ。メンテを怠って無理に重機を動かし、現場で事故(労災)を起こしたら元も子もねぇからな。しっかりオーバーホールしてやってくれ」


「へっ、任せとけ! ピカピカにして今日の定時には納車してやるよ」


「ああ、頼む。二号機(超大型ダンプ兼・クレーン車)も、先日の『天空の魔塔』の受け止めで無理させたからな。オーバーホール(定期点検)のためにバラしてるし、今日は大型重機は全滅だな。俺は溜まってる事務仕事でも片付けるか」


 一郎が背伸びをしたその時、親方が「おっと、代車なら用意してあるぜ」と、布を取って一台の車両を披露した。


 それは、ドワーフの技術と魔導機関を組み合わせて作られた、四輪の小型魔導荷馬車――いわゆる「軽トラ」だった。しかも、運転席の後ろに後部座席が設けられた「ダブルキャブ仕様」である。


「おおっ! 現場の相棒、軽トラじゃねぇか! しかもダブルキャブとは気が利いてるな!」


 一郎は少年のように目を輝かせ、軽トラのドアを開けて乗り心地を確かめた。


 2.緊急クレームと、軽トラ出撃


 一郎が軽トラのハンドルを握ってご満悦だったまさにその時、仮設事務所の方から、ギルド副マスターのセリアが血相を変えて駆け込んできた。


「い、一郎さまっ! 緊急のクレーム対応案件ですわ!」


「どうした、セリアさん。そんなに慌てて」


「王都郊外の主要街道に、巨大な『スクラップ・スライムの変異種』が不法投棄され、道を完全に塞いで物流網がストップしておりますの! 騎士団の剣も通らず、お手上げ状態だと……っ!」


「なんだと? 街道に粗大ゴミを放置してインフラを止めるなんて、清掃業の恥だ。すぐに行くぞ!」


 一郎が軽トラのエンジン(魔力炉)を起動させると、純白の法衣を纏った特級聖女リリィと、すっかりツナギ姿が板についた特任監査役のエレノアも、「私たちもお供します!」と猛然と駆け寄ってきた。


「待て。今日はパッカー車がねぇから、この軽トラで行く。ダブルキャブだから定員はキッチリ四人だ。お姫さんたちは後部座席に乗れ。いいか、荷台に乗るのは道路交通法違反だから絶対にやめろよ! 捕まったら減点だぞ!」


 一切の妥協を許さない一郎の安全基準(お仕事ロジック)に従い、助手席にリリィ、後部座席にセリアとエレノアが乗り込んだ。


「よし、シートベルトは締めたな! 緊急出動だ!」


 3.慣性ドリフトと、不可抗力の密着


『ベロロロロロッ!』


 小型の魔導エンジンが甲高い音を上げ、軽トラが王都の街道を猛スピードで爆走し始めた。

 パッカー車のような「極大サスペンション」による快適な乗り心地とは無縁の、路面の段差をダイレクトに拾うガチガチの足回りである。


「ひゃんっ!? い、一郎さま、揺れが、揺れが激しすぎますわっ!」


「ああっ、お尻が跳ねて……っ! シートベルトが胸に食い込んで……っ!」


 後部座席でセリアとエレノアが悲鳴を上げ、豊満な胸を激しく揺らしている。

 助手席のリリィも、カーブのたびに一郎の太く逞しい腕に身体を押し付けられ、顔を真っ赤にして身悶えしていた。


「我慢しろ! 軽トラってのはサスが硬ぇんだよ! だがな、この軽さとホイールベースの短さは、小回りが利く最高の武器だ! 荷重移動が命だぜ!」


 一郎はステアリングを鮮やかに切り返し、アクセルとブレーキを絶妙なタイミングで踏み込んだ。

『キキキィィィッ!』

 軽トラの後輪が滑り出し、見事な慣性ドリフトで直角カーブを駆け抜けていく。遠心力(G)によって、ヒロインたちはさらに「ひゃああっ!」と色っぽい悲鳴を上げ、狭いキャビン内は不可抗力の密着ラブコメ空間と化していた。


 4.重機不在。バール一本の解体無双


 ドリフトを駆使した爆速での移動により、一郎たちはあっという間に現場へと到着した。


 そこには、騎士団が遠巻きに見守る中、数トンクラスの鉄骨と粘性の高いスライムが融合した「スクラップ・スライム変異種」が、ドクドクと酸を垂れ流しながら街道を完全に塞いでいた。


「パッカー車の『次元圧殺結界』があれば、あんなゴミ一瞬でプレスできるのに……っ!」

 セリアが悔しそうに歯を噛み締める。


 だが、一郎は軽トラから降り立つと、腰から長さ60センチの炭素鋼製バール『解体用聖杖』を静かに引き抜いた。


「パッカー車のプレスがねぇなら、手作業(人力)でバラすまでだ。現場監督が重機なしじゃ仕事ができねぇなんて、笑い草だからな」


 一郎の肉体は、四十七歳の精神を持ちながらも、女神の加護によって三十歳の男盛りに最適化されており、人間離れした異常な膂力を誇っている。そして彼が着ている『芝崎清掃の蒼い作業服』は、あらゆる穢れや酸を完全に弾く。


「いくぞ、オラァッ!」


 一郎が地を蹴った。

 向かってくる変異種の酸の触手を、流れるようなステップで躱す。


「粗大ゴミの解体は、結合部を狙うのが基本だ!」


『ガキィィィンッ!』

 一郎のバールの先端が、変異種の装甲代わりとなっている鉄骨の継ぎ目に、ミリ単位の狂いもなく突き刺さった。そのままテコの原理でグイッとこじ開けると、強固に融合していた鉄骨がメキメキと音を立てて剥がれ落ちた。


「な、なんだあのオッサン!? 剣も魔法も通じなかった魔獣の装甲を、ただの鉄の棒でひっぺがしたぞ!?」

 周囲で見ていた騎士団員たちが、目玉を飛び出させて絶叫する。


「お次は中身の生ゴミ(スライム核)だ!」


 装甲を失い剥き出しになったスライムの中心核コアに向けて、一郎はバールをフルスイングで叩き込んだ。

『パァァァンッ!』と乾いた破裂音が響き、数トンの変異種は一瞬にしてただの鉄屑とスライムの残骸へと解体されたのである。


 重機(パッカー車)の力に頼らずとも、一郎自身の圧倒的な「物理力」と「お仕事スキル」だけで巨大魔獣を粉砕したその姿に、ヒロインたちは息を呑んだ。


「あ、ああ……! 鉄の御車がなくとも、一郎様ご自身の御力がこれほどまでに規格外だったなんて……!」

「なんて逞しいお背中……! わたくし、もう濡れてしまいそうですわ……っ!」

 三人のヒロインたちの、一郎への崇拝と欲情は、またしても限界を突破していた。


 5.南京縛りと、ブレない定時退社


「よし、解体完了だ。あとはこいつを軽トラの荷台に積み込むぞ」


 一郎は手際よく鉄屑と魔石を拾い集め、軽トラの荷台へと乗せていく。


「い、一郎さま! わたくしたちも手伝いますわ! もっとたくさん積みましょう!」

 セリアが鉄屑を抱えてこようとしたが、一郎は鋭く制止した。


「バカ野郎! この軽トラの最大積載量は350kg(※異世界基準)だ! 過積載はブレーキが効かなくなって大事故に繋がるから絶対厳禁だぞ! 積める分だけにして、残りは後日二号機で回収だ!」


 一郎は荷台のフックに牽引ロープを掛けると、一切の無駄がない手つきでロープを交差させ、ギリギリと力強く締め上げた。


「これが『南京結び(万力結び)』だ。滑車の原理を使ってるから、これならどんな悪路のドリフトでも絶対に荷崩れしねぇ」


 ビシッと完璧に固定された荷台。その熟練の、あまりにも男らしいロープワークを見たリリィたちは、顔を真っ赤にして身悶えした。


「わ、私の一郎様への想いも、あのように決して解けないように強く縛り上げて……っ! ああっ、いっそ私の身体ごと南京結びで荷台に……っ!」


 ヒロインたちの不可抗力のエロティックな妄想が爆発する中、一郎は腕時計(魔法具)を確認し、満足げに頷いた。


「よし、撤収! 17時だ、今日も定時退社だ!」


『ベロロロロロッ!』

 軽トラが再び甲高いエンジン音を響かせ、夕日に染まる王都の街道を、荷崩れ一つ起こさずに颯爽と駆け抜けていく。


 事業所に戻ると、そこにはドワーフの親方によって車検と洗車を終え、新車のようにピカピカに磨き上げられた白銀のパッカー車が待っていた。


「おう、親方! サンキューな!」


 一郎は軽トラから降りると、愛機のフロントグリルを優しく撫で、満面の笑みを浮かべた。


「軽トラの身軽さも悪くねぇが……やっぱりこいつ(パッカー車)が最高の相棒だぜ」


 重機がなくても規格外に強く、決して安全基準を曲げないおっさん清掃員。彼のブレないブルーカラーの美学は、どんな状況下であっても、痛快な定時退社スローライフを完璧に守り抜くのであった。


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