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 進入してきたトンネルを通って広場に戻ると、救急車二台と大阪府警のマイクロバスベースの遊撃車が二台止まっており、一台には毛布をかぶったあの少女たちが乗り込んでおり、もう一台には後ろ手に樹脂製手錠をはめられた男が六人ほど、土井、福本、塩塚、小出の機特隊員と、MAAT隊員に監視されながら乗り込んでいる最中だった。

 煤やら土煙で汚れ、全身から硝煙や他の煙の臭いを漂わせた実紅はじめ六人の姿に、土井は一瞬驚いた様子だったが。


「物の回収部隊六人を拘束しました。どうやら闇バイトで集められた人間みたいで、ただ単に用意したトラックでここから物を積んで大阪の泉佐野にある倉庫に運ぶよう指示されただけたそうです。密売組織の事はおろか、誰が指示役かも知らんみたいですわ。そっちは?」

「やたら戦い慣れた連中だったけどね、ま、ニ三人生かして置いたから話は聞けるだろうけど、そっちとよく似たもんじゃない?あの程度の連中大阪中探せば幾らでも集まるよ」


 と、リュドミラ。

 大阪府警のランドクルーザーベースの小型遊撃車と機動鑑識のバンが進入して来たのを実紅は認めると、遊撃車から降りて来た機捜隊員に近づき内部の状況を説明する。

 明らかに驚いた表情を浮かべつつ。


「了解しました。安全を確認してから鑑識と救急を中に入れます・・・・・・。それにしても、戦争やなこれ」


 とこぼし、手にした八十二式小銃の薬室に初弾を込めると、部下と共にトンネル内に入って行った。


「木戸警部も戦争みたいや言うてたね、確かにそうやわ」


 そうつぶやく実紅に近藤は。


「さしずめ『大和川の戦い』ちゅう感じですかね?」

「それ、戦国っぽいですね」 


 との小出の言葉に、実紅は苦笑を返すほかなかった。



 現場検証の立ち合いが長引き、帰庁出来たのは午後十一時を過ぎた頃に成っていた。

 車両を戻し、銃や装備を返納し、シャワーを浴び着替えをしたいのを我慢して実紅は小隊長への報告を行う。

 神辺(かんべ)警部補はそれを聞き終えるとまず。


「ご苦労様、大変やったな」


 と返した後。


「府警本部長からウチの局長にお礼が有ったらしい、そりゃそうや、自分らが行かんかったら極楽袋の山こしらえた上に、ホシにも物にも逃げられとったやろうからな」


 傍らに立つ副小隊長の曽我(そが)は。


「押収されたポリタンクの中のブツ、全部『ヴァンピール』やったそうよ。総量は百五十リットル、末端価格で九億円。組織に取ったら大打撃でしょうけど、アンタらが生きてガラ(身柄)抑えた容疑者、二人とも大正区の『リトルモスクワ』在住の元兵士のロシア難民でアングラ求人サイトの募集に引っ掛かった程度の繋がり、組織本体とは何の関係も見つからんかったって」


「つまりは、何時でも切れるトカゲの尻尾、言う事やな。組織の全容解明には、程遠いわ」

 手を頭の後ろに回しあきれ顔で神辺は言った。


 シャワーで汗やら土埃やら硝煙やらを洗い落とし、ドロドロになった衣装一式をトートバッグに詰め込み着替え終えると、実紅は一息つこうと休憩室へ。そこにはにはすでにシャワーと着替えを終えたリュドミラが仮眠用のベッドに腰かけ、B型の輸血バックを口にしていた。ふと、駅の構内で缶チューハイを呷るサラリーマンの姿を思い出す。

 実紅の姿を見たリュドミラはチューブから口を放し。


「分隊長は?もう一個ありますけど?」


 確かに深紅の液体が入った透明なビニール容器を見た途端、背筋を悪寒が走り胸のあたりに焼けつくような焦燥感を覚えたが黙って頭を振り、いまマンションで待つパートナーである名畑の、優し気な笑顔を頭の中で再生する。 


「そうですよね、分隊長にはコウ君が居ますからね。アタシはクラブでナンパするまで時間がありますんで」


 そう言って、残りを一気に吸い上げると、二人の為に用意された医療廃棄物用のゴミ箱に輸血パックの殻を投げ込み立ち上がる。


「それじゃぁ、お先に」


 と、言い残して休憩室のドアを潜る。

 さて、自分も退庁をと思い、ふとトートバッグの中身に目をやる。

 凄まじい臭いと汚れ。今度は脳裏に洗濯物を見て顔を引きつらせる名畑の姿が浮かぶ。

 一枚残らず、自分で洗おうと心に決めた。

 

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