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機特とMAATの車列は現場を出発し、ニ十分ほどかけて地下施設の奈良側出口と思しき広場に近い路上にある退避スペースに到着した。
荒れたアスファルト舗装の路面に枯葉枯れ枝が散乱し、周囲は手入れのされていない雑木林に囲まれ、そこここに不法投棄と思われるゴミが積まれている。
およそ大阪近郊とは思えない一帯だ。
リュドミラとMAAT一名が問題の広場周辺の偵察に出る。
その間、残った隊員たちは各々の装備の準備点検にかかる。
自分の得物である20式小銃の薬室に五.五六ミリ弾を送り込み、ドットサイトの状態を素早く確認する木戸警部に、同じくベネリM3の薬室にダブルオーバックのショット・シェルを送り込みつつ実紅は。
「お申し出、ありがとうございます警部」
サイホルスターのグロック17を引き出し、薬室に九ミリパラペラム弾が装填されていることを確認しつつ木戸は。
「アイツの指揮下で極楽袋(死体袋)に入るのは御免やし、事態の転換点になる現場に、府警の姿がなかったらカッコつかんからな。それに・・・・・・」
グロックをホルスターに突っ込むと、実紅の目を見て。
「貴方が『南紀オーシャンリゾート事件』で受けた処分については、本官も強く疑問に思っています。これは、かつて同じ府警のサッカン(警察官)だった本官からのそれについての意思表明であります。上は兎も角、現場の人間にとっては、貴方は今でも目標です」
急に敬語で喋り始めた木戸に、若干気恥ずかしく思いながらも「それは、光栄です」と伏し目がちに返す。
木の葉がこすれる音がしてその方向を見遣ると、リュドミラと同行のMAAT隊員の姿。
リュドミラはなぜか嬉しそうに。
「ナイキ、お前の読みはドンピシャだ。気に入った。アタシとファック良いぞ」
愛称で呼ばれた福本自身は迷惑そうに。
「お褒めは頂戴しますけど、そのご褒美はいりませんわ」
「アホ言わんと状況を聞かせてや」
実紅の問いにリュドミラは、私物の私物のスマートフォンで撮った画像を見せつつ。
「進入路入り口のフェンス周辺には監視カメラ、センサーなどは無し、進入路や左右の林にも仕掛けは無し、多分、周辺住民が迷い込んで引っ掛かってトラブルになるのを恐れたんでしょうね。あと、トンネルの入り口は錆々の鉄格子にカギは南京錠、以外に甘々。ただし、肝心の入り口周辺の広場には見張りが二人。雑木林にギリースーツ(偽装用のスーツ)を着て隠れてました。当然AK74で武装してます。当然監視カメラも」
「定石なら、その見張り二人、心音モニター位は着けてるでしょうね」
と近藤。
実紅は『プリースト』を呼び出しこの周辺の電波状況を検索させる。そして。
「サンソウの言う通りやわ、みんな聞いて」
と、各員の端末に『プリースト』から得たデータを送信する。
それは二種類の波形の画像と心音と思しきリズミカルな音声のデータ。
「・・・・・・。軍隊並みですね」
と小出。
「金持っとんなぁ」
そう我孫子がこぼす。
「忍び寄って密かに確保、もしくは近藤さんが狙撃、てのも無理ですね」
ティアドロップ状サングラス型のアイウェア外し、曹は二重の優し気な目元を伏せる。
「手はあるわ」
実紅は近畿管区広域捜査局のサイバー犯罪対策部に連絡を取る。
しばらく口頭やデータでのやり取りをした後。
「心音モニターのデータ、それに監視カメラも無線で画像を飛ばしてるみたいやからそのデータも傍受して記録した。曹が言うように見張りに忍び寄って確保した後、記録したデータをダミーにして流して時間稼ぎ、その間に突入する」
「・・・・・・。あっちは機関銃に対戦車ミサイル、こっちは忍び寄って密かに制圧、もはや戦争やな」
そうつぶやく木戸にリュドミラはまたもや愉快気に。
「そんなの、とっくの昔に始まってますよ。気付くの遅すぎです」
トンネル内に突入する部隊は実紅、リュドミラ、第一班の近藤、我孫子、第三班の明野、曹、の六名で編成し、残りの六名とMAATはブツを回収しに来るであろう者たちを確保する部隊とした。
まず、居残り隊は隊の車両を林の中や建物の陰などに隠し、自身らも茂みの中に隠れ相手を待ち伏せる。
突入隊は広場への進入路を使わず、雑木林の中を通って広場付近まで進出。
近藤は得物の20式にスコープを装着し、万が一格闘戦での見張りの制圧に失敗した時に備え狙撃で制圧するよう準備する。リュドミラもHOWA7.62を構え、同じ役割を担って茂みに身を潜める。
明野は、背中のポリカーボネート製警棒を引き抜き、我孫子は20式を背中に背負い、でそれぞれ担当された見張りの背後に忍び寄ってゆく。
しばらくして、明野、我孫子から無線で配置完了を伝えるクリック音が発せられる。
実紅はサイバー犯罪対策部に相手方のデータ通信へのハッキングを要請、心音モニター、監視カメラの乗っ取り完了を確認すると明野、我孫子にクリック音でゴーサインを出す。
右手の茂みから葉っぱの突いたままの柴の塊を引きずりつつ、警棒を手にした明野が姿を現す。柴の塊の正体は頸椎を警棒で強打され気絶したギリースーツ姿の見張りだ。
同じく、左側の茂みからは柴の塊に絡まれた我孫子が転がり出て来るが、すぐさま塊に対し馬乗りになると真ん中あたりに拳を叩き込み大人しくさせる。これも見張りだ。
実紅は二人に「ご苦労様」と素早く声を掛けると、建物正面に陣取る府警の部隊に無線で陽動の射撃を要請しつつワイヤーカッターで鉄格子にはめられた南京錠を切る。
リュドミラは我孫子に自分のプレートキャリア差したシースナイフ、ファニクルーベンA1を叩き。
「手こずってな坊や、アタシならこれでキドニーをブスッ、アッちゅ間よ」
我孫子は20式を構えつつ、肩をすくめ和歌山弁で。
「恐ろしょぉ」




