第049話 『ある意味最強パーティ?』
「貴方が『永の弟子・ルーク』ですね。なるほど…永が見込んだだけの事はありますね」
ルークにしては珍しく緊張で固まっている。
「あ、あの、俺は…」
頑張って言葉を出しているが、さすがに教皇の前という事もありしどろもどろだ。おそらく彼の頭の中は真っ白なのだろう。
「そう緊張なさらずとも結構ですよ、ルーク・グリムウィン」
ハルカの呼びかけに目を剥くルーク。そういえば祐樹はルークのフルネームを知らない。エイを見ると祐樹を見て静かに首を振る。それはエイも聞かされていないという事だ。
「お、俺の事を知ってるんですか?」
「ええ。ルーク・グリムウィン。エルフの娘と人との間に成された子よ」
ハルカはルークの事を知っていた。
ルークはその事で緊張も吹き飛んだのか、身を乗り出してハルカに質問をする。
「ハルカ様!じゃあ俺の、俺の父の事は!?親父はどうなってますか!?」
祐樹の記憶では、ギム曰くルークの父親はナワの樹海で行方不明、既に死んでいるだろうという話だった。
亡骸が出ていないという話だ、ルークも心の奥底では『もしかしたら…』と思っていたのだろう。
だが現実は残酷な事に
「貴方の父親、ルーク・レッドウッドは貴方の誕生する前に既に亡くなっています」
がっくり肩を落とすルーク。だが
「ありがとうございます、ハルカ様。これで父の名を知ることが出来ました」
ルークの中で父親について何か一つ区切りが出来たのだろうか。少しホッとした表情を見せている。
「ルーク。勇敢な父と同じ名を持つ者よ。貴方は『巻き込まれた者』です。ですが永の修行に耐え良く頑張りましたね。貴方のこれからの人生にはまだ幾多の困難が待ち受ける事でしょう。困った時はまたこちらをお訪ね下さい。微力ながら助言させてもらいますよ」
「え?あ、ありがとうございます」
新しい言葉が出てきた。『巻き込まれた者』
どういう事だ?祐樹もルークも頭を捻るが今ひとつ意味がわからない。
「ハルカよ。それでは儂がルークを巻き込んだみたいではないか」
「そうではなくて?貴女に出会わなければ、ルークもナワの街でそこそこ平凡に生きられたはずよ」
その言葉に祐樹が反論する。
「けどそれを良しとしなかったのはルーク本人だ。言うならば『巻き込まれた者』ではなく『飛び込んだ者』だろ」
その言い方だとエイにもルークにも失礼だ。
「なるほど。そうですね。失礼をしました。では言い直しましょう。『運命に飛び込んだ者・ルーク』よ。貴方に幸多くあらん事をここに教皇・ハルカが祈ります。貴方の生に祝福を」
と祈るハルカ。
それを少し冷めた目で見るエイ。
「なんじゃ。儂が悪者みたいではないか」
とエイは口を尖らせる。それを見たハルカは微笑むと
「これにて謁見を終了しようと思いますが、私から一ついいですか」
と言い、ハルカは立ち上がる。それにならい3人とも立ち上がる。
「祐樹さん。目覚めた貴方に会えてよかった…あの方に、『魔王』に会って下さい。そして必要だと思えばまた何度でもここを訪れて下さい。私はいつでもここにいます。あなた方の行末に幸せのあらん事を…」
その言葉を残し、彼女の幻影と気配は消えた。
と背後の扉がノックされて静かに開き、番人の騎士が祐樹達に声をかける。
「これにて謁見は終了です」
騎士に即され謁見の間を退室する祐樹達。
待合室のスタンは祐樹が出てくるとさっそく祐樹に話しかける。
「どうでしたか?捕縛命令は解かれましたか」
「ああ。何だかわからないけど無罪放免のようだよ」
そもそも何故捕縛命令なんて出たのかも祐樹にはわからないのだ。保守派がどうとかは言っていたが。
そして番人の騎士は次の謁見者としてスタンを呼び出した。
「ああ、良かった。これで旅を続けられますね。それでは私は教皇様に報告がありますので」
そう言ってスタンは謁見の間へ入っていった。
謁見を終えた祐樹にマキが興味津々で質問をする。
「ねぇねぇユーキ。実際には教皇様には何て言われたのよ」
「え、ああ、色々と言われたよ。でも最終的には『魔王に会え』って言われたんだ。何でだろう?俺と魔王を戦わせたいのか」
ある程度の事情は知っている彼女になら話しても問題ない、そう思った祐樹はそのまま答えた。その言葉にマキは
「あははっ、ユーキがあの人に勝てるとは思えないけどなぁ」
と笑う。が、次の瞬間マキは慌てて口を閉じる。そしてそれを睨みつけるマールとエイ。
その事で祐樹も、そしてルークも察する。マキは魔王に会った事があるのだ。そしてその強さを知るという事は…
「マキ。魔王と戦った事があるのか?」
そういう事だろう。案の定、彼女の答えは
「ええ、あるわ」
今更隠しても仕方がないと悟ったマキは、正直にそう答えた。
「負けた…んだよな?」
そんな祐樹の質問に
「負けたなんて生易しいモノじゃない、あれは『恐怖』そのものよ」
と、普段の彼女からは考えられないような怯えた表情でそう答えた。
祐樹はマキと一度刃を交わしている。だからわかる、彼女は強い。何よりも戦い慣れている。
そんな彼女を圧倒し、恐怖を植えつける存在・魔王。
エイは魔王には祐樹に対する害意はないと言っていたが本当に大丈夫なのか?祐樹は不安に駆られる。
そんな彼を察したのかマールは
「大丈夫ですよ。ここからは僕たちもユーキさんに同行します。今更隠しませんが、僕も姉も魔王には面識がありますので」
と言った。それは何とも心強い言葉だった。だが
「それはありがたいが、教皇様から仕事の依頼とかないのか?」
スタンの謁見の後は姉弟の番だ。そこで教皇から新たな仕事を依頼をされたら祐樹達と同行なんて出来ないだろう。
「おそらく僕たちの次の依頼は『ユーキさんの護衛』です。また一緒ですね、ユーキさん。よろしくお願いします」
と微笑むマール。
「ま、仕事だからね」
と、ツンデレのテンプレのようなマキ。
「この面子で魔王に会いに行くのか…そりゃ何とも心強いな」
祐樹の心も少し軽くなる。
そんな話に奮い立つ男が1人。
「なあ…ひょっとするとだけどよ、このメンバーだと本当に魔王を討伐できんじゃねぇのか?」
とルーク。正直、祐樹もそう思わなくもない。
だがマールとマキ、そしてエイ。3人は示し合わせたかのように揃って首を横に振るのだった。
祐樹達の次に謁見の間へ入ったスタン。
そこには見慣れぬテーブルセットを前にして、どうやって片付けようか頭をひねっているハルカの姿があったとかなかったとか。




