表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
らせんのきおく  作者: よへち
祐樹編
31/205

第031話 『似たもの姉弟』



子供たちと一緒の昼食は相変わらず賑やかだ。

意外だったのは、ルークが思いのほか子供の面倒を見ていたことだ。ガキ大将気取りというのも伊達ではなかったようだ。


昼食を終えた祐樹は気付く。今日は食材を持ち込んでいない。なのに3人ともしっかり食べてしまった。

だからと言ってウィルは決して金なんて受け取らないだろうなと考えていた頃、小さな子たちを寝かしつけていた子らが祐樹の元へ来た。


「ねえユーキ兄ちゃん、一昨日のアレ、今日は無いの?」


そうだった。祐樹のボディバッグの中にはあの釣り道具が入っている。それを祐樹が取り出すと


「あ、ぼくやる!貸してお兄ちゃん!ウィル、川に行って来ていい?」


だが院のルールで子供だけでは川へ行ってはいけないようだ。その時だった。


「なんだそりゃ?ユーキのオモチャか。川で遊ぶのか?なら俺がついて行ってやるぜ」


とルーク。


「…なんですかそれは?僕も見た事ありませんね。一緒に行ってもいいですか?」


とマール。

2人が一緒という事でウィルも子供たちが川へ行くことを許可する。


「マールさんにルークさん、すみません、ありがとうございます。子供たちをよろしくお願いします」


「ルーク、マール、気をつけろよ。子供たちから絶対に目を離すんじゃないぞ。それとそれの使い方は子供たちが知っている。彼らに聞いてくれ」


2人は子供たちを連れ、川へおりて行った。これで魚が獲れれば少しは院の助けになるだろう。


「色々とすみません、ユーキさん」


「はははっ。気にするなよ、ウィル。半分は自己満足だよ。それと、そう言う時は『ありがとう』って言われたほうが俺は嬉しいな」


「ありがとう、ございます。ユーキさん」


照れながらそう言うウィルの顔は、まだあどけなさの残る笑顔だった。

年齢的にはもう孤児院を出ている歳のウィルとミカ。後任者がいないという事で2人して院に残り子供たちの面倒を見ているそうだ。

資金といい人事といい、どうなっているのか教会に問い詰めたい所だが、そこはスタンとエイに事情も話してある。彼らが何とかするだろう。

祐樹は祐樹に出来る事をするだけだ。


---


川の方から聞こえてる歓声を耳に入れながら、ウィルとミカと歓談していると、程なくして川へ降りていた子供たちが戻ってきた。


「いやすげぇな、これ!なんでこんなんで魚が獲れんだ?」


と言うルークに子供たちからのツッコミが入る。


「ってルーク兄ちゃん1匹も獲ってないじゃん」


「「「獲ってないじゃ〜ん」」」


「うるせぇよおめぇら!」


結構な数の魚を持って帰ってきた子供たちだが、ルークはボウズだったようだ。頭もボウズだしなんとも丁度いい。


「マール兄ちゃん凄いんだよ!一瞬川につけたと思ったらもう魚が付いてるんだよ!」


「けっ、こんなもん凄くても何の自慢にもならねぇよ!」


と毒づくルークに


「ふふっ。剣の腕もないのに魚も獲れないとは…」


と半笑いで返すマール。


「うるせぇ!剣は只今修業中だ!言ってる間にてめぇなんざギッチョンギッチョンだ!」


この遣り取りを見て祐樹は実感する。マキとマール、言葉遣いは全然違うが君たちは間違いなく姉弟だ。そしてルーク、君は案外いじられキャラなんだな。

そんな折に


「ねぇ、マール兄ちゃん。マール兄ちゃんは強いの?」


子供たちの1人からそんな質問が出てきた。


「強いかどうかはわかりませんが、少なくとも弱くはないですよ」


その子はルークにも同じ質問をした。


「俺は…強くは、ない」


と言ったまま、考え込んでしまうルーク。


「ルーク、あなたも弱くはないですよ。ユーキさんやエイさんがあなたより経験値があるってだけです」


ちょっと訂正したかった祐樹だったが、話が続きそうなので静観する。


「それを弱いって言うんじゃねぇのか!?」


「さあ?どうでしょう。ただ言える事は、あなたは先ほど竹を採る際、アイスカッターでスパッと切ったでしょう?」


「ああ?んなの当たり前だろ。あんなもんいちいち手で切ってられっかよ」


「ですが残念ながら僕にはそれが出来ません。なので鉈で切るしかないのです」


「それが何だってんだよ?」


「あなたはあなたに出来ない事が出来る人に気が行きすぎです。あなたにしか出来ない事もあるのですよ」


そう言うとマールは祐樹の方へ向きかえり


「ユーキさん、あなたは魔法が得意ですか?」


「いや、俺は魔法は不得手なんだ」


その質問は祐樹が魔法を使えない事を知った上での質問だ。エイにでも聞いたのだろうか。


「そうですか。実は僕も魔法は不得手なんです。剣も使えません」


その言葉に驚くルーク。


「でもよ、てめぇらみたいに神速で動けて力もありゃ魔法なんて必要ねぇだろ?」


「その通りですよ。ならルーク、あなたのように魔法も剣も使えたら、僕たちのような神速は必要ないでしょう?」


その言葉にまた考え込んでしまうルーク。


「ルークもエイさんに何か新しい事を教わっているわけではないのでしょう?」


そうなのだ。祐樹の見ている限りエイはルークと手合わせしているだけで、何かを教えているような素振りは無い。


「そうやって経験を積ませてるんですよ。何よりもあなたがあなた自身を知るために、です。」


じっと自らの手を見つめるルーク。


「じゃあさ、ルーク兄ちゃんとユーキ兄ちゃんはどっちが強いの?」


子供の純粋で残酷な質問に


「さあ、今は五分五分くらいではないですかね?今夜あたり手合わせしてみてはいかがですか?」


と含み笑いで嫌なフラグを立てるマール。

そして熱のこもった視線のルーク。

スキルを使えば負ける事はないと思っている祐樹。



そんな空気のまま舞台は夜の路地裏へ移行する。





マールとマキ。なんだかんだ言ってもやはり姉弟ですね。

姉のほうが加減を知らないようで、よく人を怒らせるようです。

ですが言葉の丁寧な弟のほうが皮肉を言うと、より攻撃力が高いですよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ