第024話 『やっぱりダイエットは明日からに…』
祐樹達は当て所なく街を散策していた。
思えば祐樹達が街に到着した日も月斜だった。
月陰の前日という事もあってか、街は結構な賑わいを見せている。
そんな人混みの中、祐樹は見覚えのある2人の少年を見つけた。
1人は、見覚えがあったのだが祐樹はどこで見たのか忘れてしまった。
もう1人は金髪ボウズの猿の獣人の少年。
と思った祐樹は、思わず二度見する。その少年は猿の獣人ではなかった。耳が長い。ボウズ頭のエルフの少年、ルークだ。
互いに目前で気がつき、少し嫌な空気が流れる
「…あんなので勝ったと思ってんじゃないぞ」
そんな強気な発言とは裏腹に、祐樹とは目線を合わせてこないルーク。
「なんならもう一度やるか?俺は構わないぞ」
祐樹はニヤリと笑いながら言った。
が、ハッタリだ。
そういうのに慣れていない祐樹、内心はドキドキだ。
「う、いや、いいよ、わかったよ。俺が悪かった」
そんな素直に引き下がられるとは思っていなかった祐樹は少しだけ罪悪感にかられる。
「その頭はどうしたのじゃ?」
エイの問いも尤もだ。綺麗なサラサラの金髪は見る影もなく、祐樹の言葉ではないがまるで猿だ
「ああ、これは決意の現れ、です、エイ先生、それにユーキ。俺、ギム伯父さんみたいに強くて立派になりたい。だから旅の間、よろしくお願いします」
昼間の往来で深々と頭を下げるルーク。
その変貌に、驚きのあまり言葉の出ない祐樹。
そんな祐樹を尻目にエイが答える。
「よかろう。鍛えてやる。心するんじゃぞ」
「はいっ!」
ユーキからも何か言っておくか?とエイに振られる祐樹。我に帰ったものの、特に言う事も考えてなかった祐樹。少しだけ気になっていた事を諫言する。
「俺からは特にはないんだが…ああ、ルーク。前に対決した時にさ、たしか『死ね』って言ってかかってきただろ?」
「ん、言ったっけ?でもそんなの気合の言葉だろ。いちいち覚えてねえよ」
「そういう言葉は使わないほうがいい。軽々しく口にしていい言葉じゃない」
ルークは少し考えると口を開いた。
「まあユーキがそう言うならそうするよ。でもギム伯父さんも言ってたけど、ユーキは見た感じ若いのにおっさんみたいだな」
「く、ギム、そんな事言ってたのか…。まあ単純に俺がそういう言葉が嫌いってだけだよ。旅の間よろしくな」
祐樹はルークと握手する。これで彼とも一応の和解が出来たようだ。
あとはルークとマキが揉めないか心配だが、まあ大丈夫だろう。
明後日の月出の日には出発の予定の祐樹達。
明日はどの店も開いていないし休養もとりたい祐樹、今日のうちに旅の準備を終わらせておくことにした。
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「がははは。すっかり常連だな」
ギムの店だ。
「さっきそこでルークに会ったよ。凄い髪型だったな」
「ああ、あれな。自慢の金髪だったんだがな『旅の邪魔だ』って切ったんだ。ヤツなりに本気になったって事だろ。押し付けるようで申し訳ないんだがルークのこと、よろしく頼むぜ」
「ギム自身が店を畳んでルークと旅に出ようとは考えなかったのか?」
祐樹も別に否定的に言ったわけではない。純粋にそう思ったのだ。
ギムは手練れの冒険者で経験もある。ルーク1人抱えて旅するのくらい問題ないはずだ。
「俺が旅するんじゃねぇ、ルークが旅しなきゃ意味がねぇんだ。その言葉の意味、ユーキならわかんだろ?」
そうだ。スタンも言ってたがギムは過保護なんだ。
その結果が裸の王様だ。
ギムはギムなりに深く、そして長く考えていたのだろう。
祐樹達の来訪はギムにとって千載一遇のチャンスだったのかもしれない。
それが本当の千載一遇のチャンスになるかどうかは祐樹達次第だが。
祐樹には娘がいたが、息子はいなかった。
見た目の年齢は自分に近そうだが、息子が出来たと思って大事なことを教えていこう、そう思う祐樹だった。
「そういやルークには荷物持ちさせんだろ?」
「うむ、そのつもりじゃ」
「だったらヤツには俺の使ってたマジックバッグ持たせるからユーキ、お前ぇはもっと小さなカバンにするか?」
先日ここで購入したバックパック、ルークが荷物持ちをしてくれるのならばこんなに容量の多いものである必要はない。そして俊敏に動くには少し邪魔に感じていた祐樹は小ぶりなモノを物色する。
「好きなの選んでくれ。それより高いヤツでもいいぜ、持ってってくれ。安いヤツなら差額は返金だ」
その商売上手なのか下手なのかわからないギムの言葉に、祐樹は同価格の良さげなボディバッグに目星をつけた。
体に沿うように身につけられ、腰のベルト部にはナイフのホルスターも装着出来る。
価格といい使い易さといい、祐樹はコレが気に入ったようだ。
「ユーキらしい選択じゃの」
「ちがいねぇ」
一番丸く収まる選択なのに、なぜか笑われる祐樹。
「それはそうとギム、明後日はルークの見送りに来るのか?」
「いや、行かねえ」
祐樹はその答えを予想済みだ。
「じゃあここで別れの挨拶しとくよ。ギム、この街で最初に入った店がここで本当に良かった。おかげで忘れられない出会いと思い出、それに仲間が出来た。感謝している。またこの街に来る事があったら必ず寄らせてもらうよ」
「なんじゃユーキ、どうせ旅を終えたらまたルークを連れて戻るじゃろ?」
その言葉に祐樹とギムは顔を見合す。
「エイ姐さん、姐さん方の旅が終えたらルークはそのまま旅を続けさせてやってくんねぇか?その時ヤツが独りかどうかは知らねぇが、もうその頃には行き先くれぇ1人で決めれる男になってるだろ?」
「そういう事だ。ルークの選択次第ではここへ戻らない可能性もあるんだ」
多分戻らないという事はないだろうが、その頃にギムが存命とは限らない。
「儂はルークに旅立ちを唆した身としては無事帰るまで見届けたいのじゃがなあ」
「すまねぇな、姐さん。ああそうだユーキ、エイダんトコにも挨拶行くんだろ?ならもう今夜もガイルの店で別れの会でもしねぇか?連中も呼んどくぜ」
その言葉に、軽く禁酒を考えていた祐樹の決意は呆気なく消えたのだった。
ちなみに猿頭のルークと共にいた青年はリックです。
祐樹は何度か顔を見ているのにいつまでたっても覚えてもらえないリック。不憫な青年ですね。




