覚醒の日に得たのは「バチッ」と鳴る静電気
三年前に突如として訪れた『大覚醒時代』。
空に穿たれた黒い亀裂「ゲート」から溢れ出るモンスターと、それに呼応するように超能力に覚醒した人間たち。
いまや能力者は『ハンター』と呼ばれ、その出力や戦闘力に応じて「S」から「F」までのランクで格付けされる。高いランクのハンターは億万長者のスターとして持て囃され、現代社会の新たな主役に君臨していた。
――そして今日。
十八歳になった俺、神谷 蓮もまた、遅まきながらその「覚醒者」の一人となった。
「……測定終了です。神谷さん、お疲れ様でした」
白衣を着た測定員が、どこか気の毒そうな、それでいて半ば呆れたような視線を俺に向けてくる。
測定室のモニターに表示された俺のステータスデータ。そこには冷酷な現実に満ちた文字が踊っていた。
Plaintext
【氏名】神谷 蓮
【属性】雷
【出力測定値】0.02 KW(※一般的なFランク平均:10.0 KW)
【判定ランク】Fランク(最下級)
「雷属性……ですか」
「ええ。属性自体は稀少な攻撃型なのですが……出力が、あまりにも低すぎます。冬場にドアノブを触った時の『静電気』と同等……いや、それ以下ですね。これでは最弱のFランクモンスターである『スライム』皮一枚すら破れません」
測定員の言う通りだった。
俺が拳を握り締め、全身の魔力を必死に絞り出しても、指先から『パチッ……』と情けない音と小さな青い火花が散るだけ。
部屋の隅で様子を見ていた他の受験者たちから、くすくすとした嘲笑が漏れ聞こえてくる。
「おい見ろよ、静電気男だぜ」
「雷属性でFランクとか逆にレアだろ。スライムすら倒せないハンターって、ただの動く標的じゃん」
「格付け以前の問題だな。おとなしくダンジョンの清掃員でもやってろよ」
突きつけられた『Fランク』のライセンスカード。
重い足取りで測定所を後にした俺は、夕暮れに染まる街を一人歩いていた。
病気の妹の治療費、跳ね上がる生活費。ハンターになって一攫千金とまではいかなくても、せめて人並みの生活を手に入れたかった。だが、この「パチパチ鳴るだけの静電気」では、ダンジョンの入場許可すらまともに出ない。
(スライムすら倒せない雷……。俺の覚醒は、ただの笑い話で終わりなのかよ……)
悔しさに歯を食いしばりながら、俺はポケットの中で小さく指先を鳴らした。
バチッ。
小さな火花が散った、その瞬間――。
『――対象の電磁波シグナルを確認。個体ID:神谷蓮。システムカーネル起動……』
頭の中に、聞いたこともない無機質な機械音が響き渡った。
(え……!? 今の音は……なに……?)
立ち止まった俺の視界(網膜)の上に、青く光る謎のホログラムウィンドウが、静かに浮かび上がったのだった。




