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◆第6話:外へ


「誰か! 誰かこっちに来て!」


「壁が崩れて、非常時用品が埋まってしまって……」


「な、何が! 何が起こっているんだ!?」



 霞の屋敷内は地獄絵図と化していた。


 いつまでも納まらない地面の揺れ。


 倒壊する建物。


 避難しようにも、どこから手を付ければいいのかわからない。


 普段から緊急時の対応方法は教育されているだろう使用人達を以てしても、あちこちでパニックを起こしている。



「御当主は!? 御当主の安全を!」


「誰か早く! 幸恵(ゆきえ)様が! 奥様が下敷きに!」


「こっちでも怪我人が!」


「表に車は回したのか!? 旦那様達の避難が先だ!」



 女の使用人達が泣き叫んでいる。


 男の使用人達の怒声が轟く。


 廊下で派手に転んで動かない者がいる。


 トイレの扉が開かないと、ずっと喚いている子供の声。




 ――強大な力を誇る霞家が。




 ――俺を虐げ続けた霞家が、崩れていく。




 ――その金も名も、何も役に立たない世界の前に、為す術も無く。




 そんな光景を尻目に、俺はただただ走り続ける。


 無駄に馬鹿デカい敷地を誇る霞の邸宅だ、一々立ち止まって眺めている余裕はない。


 ただ真っ直ぐ、事前にイメージした通りに、逃亡ルートをひた走る。


 擦れ違う人間達は俺を認識していても、何も出来ない。


 俺が、地下牢に閉じ込められていた霞陣午だとわかる人間が何人いただろう。


 忌み子として十年以上幽閉されていた霞家の道具が、混乱に乗じて脱出したとわかる人間が何人いただろう。


 それは分からないし、興味も無い。


 この家の人間達は、“関係無い”と決めたのだ。


 復讐もしない、助けもしない。


 俺には優先してやるべき事がある。



「空の色が……」



 俺は空を見上げる。


 先程、眩しいと感じた太陽の光が、今は微妙に変色していた。


 青かったはずの空が、オレンジ色に染まっている。


 更に先程から感じる、空気の“ざらつき”。




 ――魔素の影響が、世界に出始めている。




 よくよく耳を澄ませてみれば、霞家の外でも狂騒が起こっている事がわかる。


 断続する爆発音。


 悲鳴。


 救急車やパトカー等が鳴らす、サイレン音。


 更に――。



「……あれは」



 遠くへと視線を向け、俺は目を見開いた。




 ――光の柱だ。




 脳内の地図を参照するに、都市部の方向。


 大きさや規模はまちまちだが、幾つもの光の柱が地上から立ち上がっている。


 爆炎だとか、人間が生み出したものでは無い。


 立ち上がった光の柱の周囲の空間に、歪みが生じているのも見える。


 あれが、おそらく――。




――――――――――――――――――――


【ダンジョン生成開始:近隣××市街地】

【都市部:初期モンスター高密度】

【推奨:避難/危険】


――――――――――――――――――――




「やっぱりな」



 答え合わせのように、頭の中でログがポップした。


 俺は思わず苦笑する。




 ――あの光の下で、今、ダンジョンが生まれている。




 本格的に、世界が作り替えられているのだ。


 俺は瞬時、記憶を辿る。


 準備期間中――俺の脳内には幾つも【ダンジョン発生予定】のログが表示され、座表まで確認ができた。


 とは言え、その全てを把握し、記憶しておくのは不可能。


 だから、重要と思われるダンジョンを幾つかピックアップしておいた。



「その中で、ここから最短地点のダンジョンは……」




――――――――――――――――――――


【予告】

初期ダンジョン『××市街地・座表xx.yy区画』

想定死亡率:78%

難易度:未調整


――――――――――――――――――――




 まず一つ目は、想定死亡率が全体で最高値だった『××市街地』のダンジョン。




――――――――――――――――――――


【予告】

初期ダンジョン『●●団地・座表xy.xy区画』

想定死亡率:16%

難易度:F-


――――――――――――――――――――




 もう一つは、比較的死亡率が低い、『●●団地』のダンジョン。



「……よし」



 そして、俺の行動プランは既に決まっている。


 安全地帯や物資の確保ができそうな場所――それらは脳内マップで事前に把握している。


 そこに向かうのは後でいい。


 俺が今すべきは、新世界でのアドバンテージを真っ先に勝ち取りに行く事。


 即ち――ダンジョンへの突入。


 そして、挑むべきは当然――。



「……想定死亡率78%……『××市街地』のダンジョンだ」



“逃げる”のではなく“取りに行く”。


 誰よりも先にダンジョンを分析し、未知の要素である“スキル”や、ダンジョンで手に入る“素材”を理解する。


 まだ競合のいない現時点において、一気に全てを手に入れられれば、これ以上はない。


 思考を巡らせている間に、霞家の門扉が見えてきた。


 あそこを潜れば、屋敷の外。



「貴様!」



 その時だった。


 後方から声。


 振り返れば、当主と、それに付き従うように並ぶ、父や屈強な使用人達の姿が見えた。


 当主も父も、俺を見て驚愕に染まった表情を浮かべている。



「あれを! あれを逃がすな! 捕えろ!」



 当主が杖を振り上げ、声を荒げる。



「………」



 俺はそんな奴等の姿を一瞥すると共に、誰よりも早くその場から走り出した。


 未だ、天変地異は継続している。


 連中も逃げるのに必死で、俺を追い掛ける余裕など無いだろう。


 門を潜り、外へと飛び出す。


 後はただ目的地に向かって、俺は体を動かし続ける。


 崩れ落ち、作り替えられていく風景を尻目に。


 世界崩壊0日目。


 俺の人生(神ゲー)が始まる。


お読みいただきありがとうございます!


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