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蛙
男は雨上がりの道を歩いた。
道辺の畑では蚯蚓たちがのたうち、電線の上には少し濡れた鵯が座っていた。
男は、歩いた。
交差点の前で、烏がたむろしていた。男が近付いて行くと、烏は一斉に飛んでいった。
タイヤの跡が濃く残っている先には、下半身の潰れた大きな蛙が藻掻いていた。啄まれた傷跡が痛々しい。
男は、忙しく走り過ぎる車の間に飛びだした。大きなクラクションが交差点に響いた。
男は藻掻く蛙を手で掬い上げた。蛙の赤い跡が、道路に残っていた。
「飛び出してくるな!」
若い男に怒鳴られた。
「すみません、」
ただそれだけ言って、男はまた歩き出した。
蛙は、道端で息絶えた。
「ごめんなさい、」
男は静かに呟いた。




