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開けた先は真空

 どう言ったらいいんだろうな。


 突き飛ばされるんじゃなく、体全体で引っ張られるっていうのか。


 空気のあるところから、空気の無い真空状態のところへの移動ってのは。


 まぁ、扉にぶつかったりもしたけれど、大きな怪我にはならなくてよかった。


 宇宙服のせいで起き上がりにくいけど。


「MOMO起動。 MOMOに確認。 今いるフロアの空気の状況と被害の有無を、観測できる範囲内で確認」


『確認します。 現在、このフロア内の空気は生存に適した濃度、密度を維持できていません。 このフロアだけでなく、建物あるいは施設の空調設備に重大な被害が発生しているとも考えられます。 宇宙服を脱がないよう、警告いたします』


 ヤバいね。


 工業区、空気無いわ。


 いや、エレベーターを出た時点で分かってた。


 投げ出されたのは気圧差によるせいだ。


 で、視界の端っこに遺体があるのも空気が無くなったせいなんだって推測できる。


 南無阿弥陀仏。


 この建物にいた国防軍の人なんだろうけど、自分もこうなってたかもしれないと思うとゾッとする。


 建物のどこかに隙間があったかもしれないけど、シェルターや宇宙服を着るとかの対策も出来ないまま死んじゃったのかもしれない。


 あるいは今出てきたエレベーターに避難しようとしてたけど、間に合わなかったのかも。


 そう考えると宇宙服を着たまま作業してて、その後に何とか作業所に戻れたのは、本当に運が良かったんだろう。


 この人の死因はおそらく窒息死だったんだろうけど、血とか流れてないせいでまぁなんとか平静を保ててるわ。


 あと宇宙服越しだからなのかな。


 こういうとんでもない状況に出くわしても何とかなってるのは。


 ニオイとか音とかの五感の一部がシャットアウトされてるから、ゲーム画面で死体を見てるような感覚になってんだろうと自己分析してみたり。


 見たところオジサンくらいの年齢の人みたいだけど、この人だけかここにいたのは?


「MOMOに確認。 ここに倒れている人物の身元は分からないか?」


『スキャンを行います。 ご遺体は中村光輝さま、三十歳。 国防軍曹長。 遺体発見時の状況をデータベース登録、国防軍宛のサーバーにデータ送信・・・。 エラー。 一時的にデータを保留いたします』


 エラー?


 なんでだ?


 こういう時って、遺体の発見状況とか必ずデータ送信されるのに。


「おーい、エル。 今何かデータいじってる? 遺体発見のデータ送信が出来ないんだけど」


 あれ?


 返事がない。


 さっきのドローンは?


 あ、あそこに転がってた。


 空気がないから飛べなくて落ちたか。


「おーい」


 返事がない。


 あ。


 UDソケットとケーブルで。


『早く繋でくれよー。 さっきから何もできないで転がってるままになってたじゃないか』


「いきなり真空状態のところに投げ出されたんだから、その辺は考慮しろよ」


『いいよもう。 その代わりそっちの宇宙服のカメラに割り込みかけるから』


「え? おい」


『繋いだ。 ドローンはその辺に置いといて。 宇宙服のカメラの方からこっちも確認するから』


 なんか、うるさくなりそうな気がしてきた。

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