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狩りの結末

ホントは、もっとトイレ事情とか性風俗とかを書きたいんですが、それだとお話が進まないので・・・。

 探していたのは、親牛サイズの魔物のハズだった。

 しかし、歓喜の表情のシヴァが襲いかからんとしているのは、親牛が3匹は入りそうな牛小屋サイズの魔物だ。

 「無理無理無理~~~っ!」

 オレは心の底から悲鳴を上げるが、それに答えるのは、シヴァの高らかな笑い声のみ。

 大剣を右に左に振り回し、邪魔な魔物の群れを殲滅していく。

 あいつ、こんなノリだったのか!

 オレは泣く泣くシヴァに続いた。

 どんな流れになるにしろ、シヴァを見捨てる訳にはいかない。

 出来れば、逃げて欲しいが・・・。

 ここは、出し惜しみをしてる場合じゃない。

 オレは、長剣を腰に差したまま、無手の右手に魔法を発動した。

 「リボルバー!」

 人差し指をのばし、親指を立て、ピストルを真似る。

 言わずと知れたピストルを再現しようとした魔法だ。

 「バンっ!!」という声がキーとなり、指先から銃弾が撃ち出される。

 シヴァに背後から襲いかかろうとしていた魔物が1匹、銃弾を受けてバランスを崩す。

 すかさず振り向いたシヴァの大剣が、よろめいた魔物の頭部を切り飛ばした。

 「バンっ!!」

 まさにピストルごっこそのままの動作から本物の銃弾が飛び出し、次々と魔物の身体を貫いていく。

 マシンガンやバズーガ砲でも再現したい状況だけど、オレの「理性」が邪魔して、そんな大量殺戮兵器は作り出せなかった。

 「科学」という概念を持っているからこそピストルなんてものを再現できるのだが、また、だからこそ非科学的な現象を作り出すのは難しい。

 マシンガンのように大量の銃弾や、バズーガ砲のように大きな弾頭を無から生み出すのは、オレの持つ「科学」的常識が邪魔をするらしい。

 ピストルの弾丸とて、無から生み出すにはじゅうぶんに非科学的な話だが、そのあたりがギリギリ魔法的に再現できる限界だった。

 しかも、連続6発しか発射できない。

 6発撃ってしまうと、また魔法をかけ直さねばならない。

 オレが日本時代に培った常識に、どっぷり支配されてるのだ。

 「バンっ!!」

 6発の銃弾を撃ち尽くすと、オレは長剣を抜いてシヴァの背後を陣取った。

 こうなったら、シヴァには大物を狩ることにだけ専念してもらって、雑魚(オレにとっては、雑魚どころじゃないが)はオレが食い止める。

 「シヴァ、後ろは気にするな!」

 「うん。ちょっとだけ、こらえてて!」

 ちょっとだけって、そんな簡単に、あの大物をやっちゃう気か。

 オレは、以前なら剣と盾に風を渦巻かせて魔物のニクを削りとっていたところを、シヴァの魔剣からヒントを得て、剣と盾に魔法力をこめるスタイルを取っていた。

 剣で魔物を斬ると、剣から発せられた魔法力が魔物のニクに浸透し、その輪郭をさざ波のように揺らす。盾で殴っても、同様だ。

 輪郭が揺れてる間は、魔物も自由に身動きが出来ないらしく、目の前に10匹近い魔物がいながら、オレは致命的なダメージも受けず、剣を振るい続けた。

 くぅ。今度は、魔法力をレーザーの様に発射する魔法を開発しよう。名づけて、レーザー・ガンだな。ひねりは、ない。

 ファイヤーボールみたいに、魔法力そのものを球状にしてぶつけるなんてのもいいかも。

 そのためにも、今だけは、なんとかしのがなきゃ。

 オレがギリギリの戦いをしている背後で、シヴァは嬉々として駆け回っていた。

 ベビークラスのときは基本的にサメの口をしたブタに似た姿をしている魔物も、成長するとドンドン姿を変える。

 ブタのまま大きくなる物もあれば、シカのようにスラリとした体型になる物もある。

 そして、シヴァと対峙する魔物は、サイに似た姿を取っていた。

 四肢の短い安定感のある体型はそのままに、皮膚は鎧を着込んだかのように頑丈となり、鼻の頭にまるで剣のような切っ先の鋭い角を持っている。

 魔物が頭を低くしたままシヴァに迫る。

 その鋭利な角でシヴァを串刺しにする気だ。

 大剣を角に打ちつけ、横っ飛びに突進をかわすシヴァ。

 大剣と角は、ガキーンという金属音を響かせるばかりで、どちらも折れ飛んだりすることもない。

 て言うか、あの魔剣の一撃を受けて傷ひとつつかないのか。

 「し、シヴァ!?」

 「大丈夫、大丈夫!」

 その朗らかな声には、一点の曇りもない。

 目の前の魔物たちに剣を振るい、盾をぶつけながら、オレは一人で焦っていた。

 魔物のまわりを回りながら、シヴァは無造作に大剣を振っている。

 牛小屋サイズの魔物の突進に巻き込まれたら、人間なんてひとたまりもない。魔物がその場でグルグル回るように仕向けているのは、シヴァなりに考えてのことだろう。

 しかし、シヴァの魔剣をもってしても、魔物の鎧のような皮膚を打ち破れないのか。

 このままだと、シヴァの体力が尽きた時点でオレたちの終わりだ。

 生物ではない魔物には、疲れというものがない。持久戦で自滅を待つ戦法は使えない。

 また、恐れや焦りといった感情もないから、心理戦も通用しない。反対に、オレは恐れと焦りで吐きそうになっていた。

 魔物の攻撃を盾で防ぎ、お返しに魔物の身体に剣を叩き込むことを機械的に行うことによって、なんとか精神の平衡を保っているが、いつ剣を投げ捨てて逃亡してもおかしくない状態だった。

 頼む頼む、シヴァ、なんとかしてくれ。

 魔物の口はなんとか防いでるが、中にはベビーサイズを超えて爪や角を持った個体もいて、オレは何ヶ所も傷を負っていた。

 そして、ついに左手の盾がバラバラに砕けた。

 もともと年季の入った盾だったのだ。長剣と一緒に盾も買い換えるべきだった。

 「ヴィシュ!?」

 シヴァの声に初めて焦りの色が混じった。

 やばい。オレのせいでシヴァを動揺させてしまった。

 オレは、盾を失って自由になった左手で腰の小物入れから魔法結晶をつかみ出した。

 大事な戦利品だが、背に腹はかえられない。

 今回はシヴァばかりが魔物を狩って、オレは見ていただけだから、小物入れに入っていたのは結界魔法用の小物ばかりだ。

 でも、魔法結晶には違いない。

 それを左手に握りこんだまま、オレは「リボルバー」を起動させた。

 右手の長剣を振りながら、意識の半分を切り離し、心の中で魔法のイメージを描き出す。

 一般に魔法とは、定められた呪文を詠唱することによって起動されるものだが、要は、どれだけ鮮明なイメージを描けるかが勝負なのだ。

 だから、魔法が起動する理屈を学習して初めて魔法が使えることになる。

 そして、魔法結晶を使えば、魔法が強化されることをオレは「知って」いる。

 「バンっ!!」

 左手でピストルの形を作り、目の前の魔物に銃弾を撃ち込んだ。

 至近距離から頭部に銃弾を受け、魔物の身体が一瞬に爆ぜた。

 「バンっ!!」

 「バンっ!!」

 オレの間の抜けた声とともに、次々と魔物の身体が爆ぜる。

 貫通した銃弾により、狙った魔物の背後にいた個体までもが同時に爆ぜる。

 「バンっ!!」

 角と爪を持った大型の魔物の身体もあっさりと爆ぜた。

 「バンっ!!」

 オレの前にいた最後の1体が爆ぜた。

 残り1発。

 オレは振り向くと、シヴァの相手する魔物に左手を向けた。

 成り行きを見ていたのだろう。大剣を振るいながら、シヴァが「ヒャッホー!」とか言っている。

 「バンっ!!」

 最後の銃弾が魔物の横っ腹に突き刺さり、次の瞬間、堅い鎧状の皮膚に包まれた腹部が爆ぜた。

 さすがに、その1発だけでは倒せない。

 しかし、体内で爆発した魔法力により、魔物は全身の輪郭を波立たせ、その動きを停止させた。

 「ヴィシュ、さいこーーーっ!!」

 シヴァが大上段から大剣を振り下ろした。

 真っ白で長大な刀身が、初めて魔物の身体深くに食い込んだ。

 その刀身から、オレの撃ち込んだ銃弾に数倍する魔法力が爆発する。

 魔物の全身が大きく波打つと、ついに輪郭が崩壊した。

 魔物の巨体は、虚空に溶けた。

 

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