二人での狩り
もっと一気に書きたいんですが、なかなか時間が・・・。
シヴァが駆ける。
あのクソ重い大剣を構えたまま、飛ぶように駆けていく。
伝説の魔剣だよ。きっと、重量制御の魔法もかかっているんだろう。
とんでもなく重い剣だけど、シヴァには羽毛のように感じられてるのかも知れない。
シヴァの前には、ベビーサイズの魔物が1匹。例によって、駆け足で近づいてくる。
「ふんっ!」
気合いとともにシヴァが大剣を振り下ろす。
魔物の攻撃をかわすとか死角をとるとか全く考慮せず、正面から近づいて、間合いに入ったら剣を振り下ろしただけ。
その一撃で魔物は頭部を断ち割られ、あっさりとその姿を霧散させた。
魔剣の放つ魔法力が、魔物を形作る魔法力を蹴散らしたように見えた。
「なんて簡単に・・・」
オレの2年間の苦労を全否定してくれるような光景だった。泣ける。
シヴァは魔法結晶を拾うと、オレに満面の笑みを向けた。
「やったよ、ヴィシュヌ!」
ちなみに、オレとシヴァは同じ17歳と判明したので、敬語は禁止した。
魔法結晶を手にしたシヴァは、また全速でオレのもとに駆け戻ってきた。
飼い主が投げた木の枝をくわえて戻ってきたゴールデン・レトリバーの幻が見える。
「はい」
って、オレに魔法結晶を渡そうとするなよ。
「いいよ。自分でとるから」
「えー、でも、ぼくが倒した方が早いし・・・」
言いにくいことをサラっと言うなよな。悪気はないんだろうけど。
「つまり、オレは野営係と?」
「うーん。言いにくいけど、そうかな?」
「お前・・・後ろから刺したくなるぞ」
なぜかなついてきたシヴァに誘われて、初めて他人と組んで狩りをすることになった訳だけど。
はっきり言って、オレがいる必要がなかった。
やっぱり、一人でやるのが性分に合ってるなぁ。オレは、しみじみと思った。
「じゃあ、ご希望通り、野営の準備をするよ」
オレは、何もしていないのにぐったり疲れながら、適当な場所に背嚢を下ろした。
別に雨が降りそうでもないが、いつもの大布を広げて、屋根を作る。屋外で寝るときに、屋根があるだけで、ぐっと落ち着くのだ。
「じゃ、薪拾い頼むよ」
「うん。分かった」
シヴァは、いそいそと薪拾いに向かった。ホントに、素直なオトコだ。
オレは、一人で野営する時と同じように、野営地の周りに魔法結晶を設置していく。
シヴァには、魔法を使えることは、もう明かしてある。
「さて、ついでに何か獲物を・・・」
魔物を狩るのはシヴァの足元にも及ばないけど、普通の動物なら、オレの方がうまく狩れる・・・ハズ。
うーん。冒険者じゃなくて猟師に転向しろってか。泣ける。
魔物を求めて人里から離れた場所を転々とする冒険者には、魔物だけじゃなく、食料となる獣を狩る技術も必要だ。しかし、獣を狩るウデばかりが上がって魔物を狩るウデが上がらない冒険者は、「猟師」と揶揄される。
昨日までは自分のことを冒険者に向いてると思っていたのが恥ずかしい。
やばい。ホントに落ち込んでくる。
高原のまばらに生えている低木を注意深く見ていると、いたいた、鳩っぽい鳥がいた。名前は知らない。
オレは静かに呪文を詠唱すると、鳩っぽい鳥に向けて魔法を飛ばした。
名づけて「スタン・グレネード」。
強烈な光と音響で、対象の視覚と聴覚を麻痺させる魔法だ。
前世で暴徒鎮圧用に使われていたアレの効果を、魔法で再現させたものだ。一応、ある程度の指向性を持たせて、目の前で炸裂させても自分には効果が及ばないように工夫してある。
木の枝から、鳥が3羽、ポトリと地面に落ちた。
オレが気づいていた以外にもまだ2羽いたようだ。でも、ありがたい。
金縛り状態の鳥を拾うと、次々にくびり殺した。
スタン・グレネード、使える魔法だ。狩猟には・・・。
魔物には視覚も聴覚もないから、まるで効果がないのよね。
食事を済ませ、オレたちは焚き火をはさんでくつろいでいた。
シヴァは、こんな所までボトルワインを持ってきていて、木製のカップに注いでチビリチビリと飲んでいる。
一人の時でも、同じようにやってるらしい。オレには、そんな度胸はない。
「明日は、どうするの?」
「この前は、一人でこの辺りで狩ってただけだから、明日はもっと奥まで行ってみたいんだ」
今日は1匹しか魔物に出会えなかったけど、それは数日前にオレがこの辺りで狩りをしたばかりのせいだ。
もっと高原の奥まで行けば、まだたっぷり魔物がいると思われた。
もしかしたら、ベビー以上の大物もいるかも知れない。シヴァがいれば楽勝だろうけどね。
シヴァと一緒にいるうちに、そんな大物にオレの魔法が通じるかどうか試してみるのもいいだろう。
「シヴァは、最高でどこまでの大きさの魔物を狩った?」
「うーん。ベビーより一回り大きいぐらいのかな」
「2センチの魔法結晶が取れるぐらいの?」
「うん、そう。あれは、もうかった」
「なるほど。その大きさまでなら問題ないんだね」
よっしゃ。落ち込んでばかりいないで、シヴァのいるうちに色々と挑戦してみるとしよう。
翌朝、簡単に朝食をとると、オレたちは高原の奥に向けて歩き出した。
そろそろ、おニューの長剣も試したいところだ。
と、すぐにオレの魔法感知に複数の反応があった。
「シヴァ、ベビーサイズだと、何匹もかたまってても平気?」
「うん。4匹ぐらいなら同時に相手したことがあるよ」
うわー。なんだ、このオトコ・・・。
「そ、そうか。だったら、問題ないかな。
この先に、魔物がかたまってる気配があるから、適当に狩ろうか。オレも、1~2匹は自分で狩りたいし」
「大丈夫?」
「シヴァに比べたら時間かかるけど、問題ないよ」
心配されると凹む。
オレたちは、魔物の気配のする方向に進んだ。すると、すぐに真っ白な魔物の姿が群れを作っているような光景が見えてきた。
一人なら、速攻で回れ右してるところだ。
いや、それ以前に見えるところまで近づかないか。
「・・・ヴィシュヌ・・・」
「うん?」
「あれ・・・」
「え?」
「なに、あのデカいの?」
「え?え?」
言われて気がついた。
魔物の群れの真ん中に、ちょっとした小屋ぐらいの大きさの魔物がいた。
「ウソだろ・・・」
背中にドバっと汗が噴き出した。
今なら、ぎりぎり気づかれてないハズだ。オレは、目立たないように後退りを始めた。
魔物には視覚がないから、あんまり意味ない行動だけど。
「すげぇ。あんなデカい獲物、初めてだ!」
「え?獲物??」
シヴァは、お得意の満面の笑みを浮かべると、大剣を背中にくくりつけたベルトを外し、刀身に巻きつけた布も取り去った。
「お、おい!?」
こらこらこらこら!
「じゃ、先に行くね!」
シヴァが走り出す。
「こら、待てーーーーっ!」
オレは、本気で悲鳴を上げた。




