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魔剣の身の上話

やっぱ、プロットって大事ですよね?(;´瓜`)

 オッサンの連れが、ポカーンとオレを見ていた。

 店主も、大剣の少年も、ポカーンとオレを見ていた。

 そりゃ、関係ない人間が乱入してきて、いきなり人一人殴り倒したら、誰だってそんな顔になるだろう。

 乱入した当人が、なんでこんな真似しでかしちゃったのか分からないんだから、仕方ない。

 「えーと、なんか手が出ちゃって、申し訳ない」

 オッサンの連れに一応、わびてみる。

 けっこうマッチョなオッサンの連れは、その一言で我に返ったらしかった。

 「いやいやいや、待て待て待て」

 律儀に、手に持っていた槍を壁に立てかけながら、オレに敵意のこもった目を向ける。

 「相棒をやられて、黙って見過ごす訳にゃいかんだろう」

 そうですよねー。

 連れの青年は、握り拳を作ると、大きく振りかぶった。

 スキだらけだった。

 オレは大きく踏み込むと、オッサンの連れのアゴを、左ストレートで打ち抜いた。

 気持ちいいぐらいに、キレイにカウンターが決まった。

 連れの青年の身体は、まだ握り拳を振りかぶったまま、クタっと力を失う。

 「おおっ!」

 店主が驚いた声を出す。

 ホント、なんでこうなった?


 変に上機嫌な店主が「そいつらは、適当に転がしとけ」って言ってくれたんで、オレはホッとして部屋に戻ることにした。

 どうやら追い出されずに済むらしい。

 「すいません。ごちそうさま。美味しかったです」

 「おう。夜も期待しとけ」

 店主に頭を下げながら階段を上がろうとする。

 「あ、あの・・・」

 と、大剣を持った少年が後ろから追いかけてきた。

 「ありがとうございました。助かりました!」

 「あー、気にしないで。なんで殴っちゃったか、自分でも分からないから」

 マズいことをしたって気分しかないから、お礼を言われると、力いっぱい否定したくなる。

 「あの、ぼく、シヴァっていいます。お名前を聞いていいですか?」

 「え?シヴァ??」

 「変わった名前でしょ。近所の占い師がわざわざ付けてくれたらしいんですけどね」

 とんでもなく重いハズの大剣を軽々とかついでいる少年を、オレはマジマジと見た。

 「それで、お名前は?」

 「・・・ヴィシュヌ」

 「ヴィシュヌさんですか。ぼくと同じで変わった名前ですね」

 そりゃそうだ。どちらも、こことは別の世界の神様の名前だ。

 それも、シヴァとヴィシュヌというとヒンドゥー神話において主神格の神様だ。偶然なのか、これ?

 が、当のシヴァくんは、ヴィシュヌと聞いてもピンと来ないらしい。

 まあ、当然の反応だけどね。

 「ヴィシュヌさん、今からどうされるんですか?」

 店主には、オレの口調がお上品だと言われたけど、シヴァくんの方がはるかにお上品だ。

 「野営が続いてたから、ちょっと寝ようと思って」

 「あー、なるほど。じゃあ、晩ご飯、オゴらせてもらえませんか?」

 「え?」

 「それぐらいさせて下さい。

  せっかく、トシも同じぐらいで、同じように一人で冒険者やってる人に出会えたんですから、色々とお話を聞きたいですし」

 にっこりと笑うシヴァ少年。

 美少年てわけじゃないけど、愛嬌満点な笑顔だ。

 こいつ、もしかして、すごいモテるんじゃ??

 「じゃ、後で迎えに来ますね」

 オレが自分の部屋の前に立つと、シヴァは手を振りながら隣の部屋に入って行った。

 なんだか、さらっと彼のペースに巻き込まれた感がある。

 でも、不思議と悪い気はしない。

 別に、ぼっち道を極めたいわけでもないし、たまにはいいか。


 その日の夕暮れ、オレはシヴァとメシを食べていた。

 メニューは、ガムーというイノシシに似た獣の肉の煮込みをメインに、パンとサラダ。ボトルワイン。

 この世界では、アルコールを飲むのに年齢制限はない。

 「酔う」という感覚が嫌いで、オレは好き好んでアルコールは摂らないけど、シヴァは違うらしい。

心から美味そうに、グビグビやっている。

 オレは、お付き合い程度だ。

 「で、ここでヴィシュヌさんに出会ったわけですよ!」

 今、ちょうどシヴァの身の上話が終わったところだ。

 シヴァはナラガという町の生まれだそうだ。

 で、このナラガには、町外れに有名なダンジョンがある。

 100年ほど前に、ここにいた超巨大な魔物を後に勇者と呼ばれることになる冒険者たちが死闘の末に倒したという伝説が残っているダンジョンだ。

 魔法剣士ゼダーシュ・トルクと5人の仲間は、7つの頭を持った巨大な魔物と三日三晩戦い続け、最終的に全ての首を切り落とし、勝利したという。

 そして、驚いたことに魔物が消えた後には6つの魔法結晶化した武器が残されたらしい。

 長剣、槍、双頭斧、杖、指輪、鎧。

 それらは神がかった力を有し、ゼダーシュたちのその後の冒険を大いに助けたということだ。

 冒険者たちはその伝説にあやかろうと、もうけを度外視してナラガ・ダンジョンを訪れる。冒険者の数が多すぎて、魔物が常に枯れてしまっていると知りながら。

 シヴァは、子供のころから、そんなダンジョンを遊び場にしていたそうだ。

 もちろん、魔物に遭遇したこともあるらしいが、魔法力の枯渇したダンジョンに大した魔物が生まれるハズもなく、鬼ごっこのノリで魔物から逃げていたらしい。

 とんだカルチャーショックだ。

 12歳の夏に、村はずれで初めて魔物に遭遇したとき、オレは恐怖のあまりチビってしまったいうのに・・・。

 で、問題の魔剣だが。

 今から2ヶ月ほど前、ナラガで大きな地震があり、町の住民や冒険者たちが右往左往する中、なぜかシヴァはダンジョンに潜る気になったっていう。

 落盤を恐れて出口に冒険者たちを尻目に、シヴァは一人でダンジョンを奥へと駆けて行った。

 そう大きなダンジョンではないのだ。

 シヴァは、3時間もたたずに「目的の場所」にたどりついた。

 なぜか、そこが「目的の場所」と分かっていたらしい。

 そこは、以前まではただの通路だった。が、その時は地震により壁の一部が崩落し、大量の土砂が通路を埋め尽くしていた。

 そして、シヴァは発見したのだ。

 半ば土砂に埋もれた大剣を。

 大剣を手にした彼は、なぜかその足で町を出た。

 その理由は、自分でも説明がつかないらしい。

 そんな魔剣を手に入れて、今まで通りの生活を送れって言うのは、確かにコクだろう。

 でも、魔剣に操られたっていう一面もあるのかも知れない。

 だったら、さっきのオレらしくない武勇伝も、同じ理由かも知れないじゃないか。

 魔剣の放つ「何か」が、人をつき動かすって言うのは、無理やりな理屈か?

 とにかく、着の身着のまま旅に出たシヴァは、大剣で魔物を狩って荒稼ぎをしながら、今、オレの前に現れたそうだ。

 でも、それって、ゼターシュたちが取りこぼした武器じゃないのか?

 7つの頭の魔物から、取れた武器は6つ。

 実は、もう1つ武器があったんじゃないかというのは、ナラガ・ダンジョンにまつわる最大の伝説だ。冒険者たちが飽きもせずに訪れるのも、もしかしたら伝説の武器を手に入れられるんじゃないかという期待もあってのことだ。

 「・・・・・・・・・・・・・」

 オレは、気絶しそうな気分だった。


 

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