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新しい武器

前話から、ずいぶん時間がたってしまいました。

なぜか全く筆が進みませんでした。

結局、ややこしい事は無視して、力技でなんとか乗り切りました。でも、おかげでいつも以上に荒い内容になっちゃったかも知れません。

読みにくかったら、申し訳ないです。

そして、待って下さっていた皆さん(皆さんと言うほどいらっしゃるか分かりませんが)、時間がかかってしまって、すいませんでした。

「今回の相手は、魔法や剣の攻撃が全く通じないんだ。出来れば、シヴァたちにはここで引き返してもらいたい」

「そう言いながら、ぼくたちが素直に帰るなんて思ってないでしょ?」

 シヴァがニコニコしながら、そう返してくる。笑いながらなのに、妙な迫力をかもし出しながら。

「シヴァはそう言うけど、ザビーシュたちは・・・」

「俺たちも、シヴァと同じ気持ちですよ。

 そもそも、ヴィシュヌさんとカルラさんがいなければ、俺たちはあの魔獣に殺されてたんだ。力にならせて下さい」

「いや、結局助けてくれたのはガイナークさんたちだし」

「それもヴィシュがいなかったら、間に合ってなかったよ。

 ぼくたちが学校をサボってまでここに来たのも、ヴィシュたちの役に立てるようにウデを磨くためだったんだからね」

「ただの学校をサボる口実にしか聞こえないんだけど・・・」

「ゲフン、ゲフン」

 

 結局、シヴァたちを説得することは出来なかった。

 彼らがカーリーの脅威度を正確に理解していないせいもあるだろうが、それ以上にオレたちに恩義を感じているらしい。

 理屈じゃなく信義でオレたちを助けると決意している者たちを翻意させるのは、オレには無理だった。そして、カルラとヴィカの姉妹は、こういう作業には全く役に立たない。

 もちろん、カーリーの許にたどり着くまでは、シヴァたちがいてくれた方が心強い。オレたち3人だけでは、何日間も魔物と戦い続けることは難しい。こうなったら、カーリーと接触後、オレとカルラとヴィカで速やかに倒すしかないだろう。

「ヴィシュヌ様・・・!」

 唐突にカルラとヴィカが、同時に緊張感に身を震わせた。

「魔物が来ます。大量に」

 その言葉に、オレだけでなくシヴァたちも即座に戦闘体勢に移る。

「どっちだ?」

「湖の向こう側から・・・」

 そう言うカルラの両隣に、ラサーヤナとスレーンドラジッドが姿を現す。

 湖に向かって立つと、オレの魔法感知の範囲内にも、すぐに大量の魔物たちが雪崩れ込んできた。

「これは・・・多いな」

 湖の対岸の森の中から、ウジャウジャと吐き出されて来る白い影。遅々とした速度だが、真っ直ぐにオレたちを目指して進んでくる。その数は、数百に及ぶ。

「これは、さすがにヤバくないか?」

 タイザンが、げんなりした声で言う。

 この中では唯一の壁役だ。これだけ大量の魔物の波を、1人で食い止めることを想像しているのだろう。

 ちなみにオレは盾を持ってはいるが、壁役と言うよりは遊撃役だ。

「どうする、ヴィシュ?」

 そうこうする間に、魔物たちは続々と湖を渡り始めている。そんなに水深は深くないらしい。

「ちょうどいい。シヴァ、オレたちの戦い方を見せてやる。その上で、もう1回だけ一緒に行くかどうか考えてくれ」

 オレの言葉に、シヴァの表情が強張る。

「ヴィカ、アレをやるぞ」

 そう言いながら、オレは土魔法を使い、目の前の地面に大きな溝を掘り始めた。

「分かりました。炭素を分離します」

「タンソ?」

 聞いた事のない単語に、いぶかしむシヴァたち。この世界では、まだ元素という概念は知られていないのだ。

 ヴィカが湖に向けて魔法を放つ。

「何を・・・?」

「説明は、後だ」

 湖の上空に黒い粉が浮遊し始めた。ヴィカの魔法を受けて、黒い粉は密度を増していく。そして、湖全体に静かに降り注ぎ始める。

「みんな、溝の中に入れ」

 オレが魔法で作った溝は、10メートル×2メートルぐらいの広さで、深さは50センチぐらいだ。

 カルラとヴィカがその溝の中に入ると、うつ伏せに身を横たえた。ラサーヤナとスレーンドラジットは、再び姿を消している。

 オレも溝の中に入りながら、シヴァたちを急がせた。

「さあ、早く。カルラたちと同じようにしてくれ」

「む・・・ぅ」

 顔を見合わせながら、シヴァたちも溝の中に入ってくる。訳が分からないだろうが、今は説明している余裕もないし、黙って従ってもらうしかない。

「時間がない。横になってくれ」

 魔物の大群は、黒い粉の雨の中、続々と湖を渡り始めている。やるなら、今だ。

 シヴァたちが溝の中に身を横たえたのを確認し、オレも横になる。

「カルラ」

「はい」

 カルラが小さく呪文を唱えると、オレたちの横たわる溝にフタをするように、不可視の障壁が形成された。

「行くぞ」

 初歩的な火魔法で、小さな炎の塊をオレたちの上空に作り出す。もちろん、障壁の外側だ。

 普通なら闇夜を照らす灯りとして使われるその小さな炎を、オレは魔物の群れ目がけて飛翔させた。

 いや、正確には、魔物の群れに降り注ぐ黒い粉の雨に向けて、だ。

 黒い粉は、炭素の塊だ。

 ヴィカが魔法によって、空気中の二酸化炭素を酸素と炭素に分解させ、作り出した。

 むろん、空気中の二酸化炭素を分解したとしても、目に見える量の炭素が作り出される訳がない。全ては、ヴィカの持つ科学知識の貧弱さを利用して、オレがそう仕向けた結果だ。

 魔法は、使用者の常識に引き摺られる。

 オレが二酸化炭素を分解しても、炭素はここまで大量に作り出せない。

 しかし、言い方は悪いがオレにダマされたヴィカになら、それが出来る。

 なお、魔法が使えても、二酸化炭素という概念さえ知らないカルラには、炭素を作ることさえ出来ない。他の魔法使いでも同じことだ。

 ヴィカという強力な魔法使いにして初歩的な科学知識を持つ存在は、オレにとっては反則的な武器となった。

 ヴィカを使えば、おそらくブラックホールや反物質だって使えるだろう。ただ、それらは発生させた瞬間に自分たちが死にそうだから、やらないが・・・。

 そんな訳で。

 オレの投げつけた小さな炎が、黒い粉の雨・・・炭素の粉塵に届いた瞬間。

 恐ろしい地響きと爆音とともに、衝撃波がオレたちの頭上を駆け抜けた。

 全身を揺さぶる振動。

 身体の上に崩れてくる土の塊。

 衝撃波に続いて真っ赤な炎と黒煙が、障壁の向こうを逆巻きながら、過ぎていく。

 そして、身体を焦がす熱波。

 

 粉塵爆発。


 それも、粉塵は純粋な炭素で、空気中の酸素濃度まで高められているという凶悪なものだ。さすがに水蒸気爆発までは起こせてないだろうが、魔物を一掃するには、十分すぎる威力だろう。

 そして、オレたちも強烈な爆発音で耳をやられ、しばらく溝の中で呻く破目になったのだった。

 




 

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