必然の邂逅
ちょっと、急ぎ足になり過ぎたかも知れません。
ヤーミの森に巣食う魔物の数は、森を奥に進むに連れ、飛躍的に増加し始めた。
もちろん、冒険者たちも数多く森に入っているのだが、いかんせん森が広すぎる。オレたちは全く他の冒険者に会うことなく、孤軍奮闘する羽目になっていた。
これも仕方ない話で、冒険者たちはお互いを補えるように、ある程度固まって行動しているのだろう。当然、森全体に広く薄く広がるのではなく、一ヶ所に集中することになる。
それに対してオレたちは、最短距離でカーリーの許に向かおうとするあまり、他の冒険者が全くいない場所から突撃をかけてしまっていたようだ。
当然のように、手付かずの魔物たちがウジャウジャとオレたちの行く手を阻んでくれた。
オレのスネークソード、ラサーヤナ、ヴィカの魔法が猛烈な勢いで魔物を刈り取って行くが、これでは休憩を取ることも出来ない。
早々に、オレたちは自分たちの見通しの悪さを痛感することになった。
しかし、他の冒険者たちと合流すれば楽にはなれるだろうが、それでは先んじてカーリーの許にたどり着くことが出来ない。
それは、困る。オレたちの目的は、他の冒険者たちに被害が出る前に、カーリーを倒すことなのだ。
「近くに、魔物と違う魔法力の反応があります」
「シュリー姉さまの言う通りです。確かに、魔法力を感じます」
「それは、魔獣ってこと?」
「いえ、そんな大きなものではありません。おそらくは、人間かと」
「オレたち以外にも、この辺りに入った冒険者がいたってことか」
「ヴィシユヌさん、ここは合流した方が良くないでしょうか?巻き込む人間は少ないに越したことはありませんが、このままでは私たちが消耗してしまいます」
確かに今のままだと、カーリーに会ったときには、オレたちに戦う力は残されてないかも知れない。
この大量の魔物の群れの中を少人数で進んで行けるようなパーティーと合流できれば、オレたちの消耗度もグッと減るだろう。
しかし、何かが引っかかる。イヤな予感がする。
「正直、なぜか気が進まないんだけど・・・。
でも、合流する以外に選択肢がないのも確かなんだよな」
「気が進まない理由は、何でしょう?」
「いや。ただ、そんな気がするだけで、はっきりした理由なんてないよ。よし、いいよ。彼らと合流しよう」
そうと決まれば、一刻も早く合流するだけだ。孤立状態の彼らが少しでも元気なうちに、味方に取り込まねばならない。
「どうやら、パーティーは4人のようですね」
ヴィカの言葉に、カルラもうなずく。
やっと、オレにも彼らの魔法力が感知できるようになったと思ったら、ヴィカとカルラの姉妹には、彼らの人数まで分かるらしい。
「あ・・・」
「え?カルラ、どうした?」
「いえ・・・。なんでも、ありません」
「??」
珍しく、カルラが何か隠し事をしたような気がする。
こんな局面で、なんだ?
気にはなるけど、魔法力の感知圏内に魔物がウジャウジャいる状況では、追求もしていられない。
出来るだけ魔物との戦闘は避け、避けられないときは3人で瞬殺して、先を急ぐ。
激しい気合が聞こえた。
そして、お互いの連携を促すかけ声。
冒険者たちは、確かに4人組だった。
風車のように両手剣を振るう者。
巨大な両手斧を軽々と扱う者。
杖を持つ、治療士らしき者。
治療士を守る片手剣と盾を持った者。
全員が、若い男のようだった。
しかし、その実力は凄まじい。群れる魔物たちを、簡単に殲滅していく。
特に、両手剣と両手斧の2人の破壊力が脅威的だ。ほぼ一撃で、魔物の身体を両断してしまう。
「すごいです」
彼らの戦いぶりを見たヴィカが、感嘆の声を漏らす。
魔法主体の戦いしか知らないヴィカからすると、物理攻撃のみの彼らの戦い方はずいぶんと衝撃的なものだろう。
オレがスネークソードで戦うのでは、こんな迫力は出せない。
4人は、瞬く間に20体はいたかと思われる魔物の群れを倒し尽くすと、油断なくオレたちに向き直った。
「で、学校サボって何してるのかな、シヴァくんたちは?」
「ヴィ、ヴィシュ・・・!」
「おぉ、カルラさんも!」
4人は、ナラガから姿を消したというシヴァとザビーシュ、タイザン、コウテイだったのだ。
王都やナラガ、そしてカルベスからも召集されているという冒険者たちは、おそらくどこか決められた地点に集合してから、組織的にヤーミ攻略を行っているのだろう。
それに対して、オレたち3人はカーリーだけを目指して、ナラガから一直線にヤーミの森に突入した。
そして、冒険者でないシヴァたちも、何も考えずにナラガから一直線にヤーミの森に入ったのだ。オレたちが邂逅したのは、当然の帰結だった。
オレたちの近くで少人数で戦っている者たちがいると知って何か引っかかったのは、無意識のうちにそれに気づいていたからだろう。
「さっき、カルラが変な反応をしたのも、シヴァたちだと気づいたからだね?」
「はい。でも、彼らをここに残していくのも気がかりで、言い出せませんでした」
カーリーとの戦いにシヴァたちを巻き込みたくないあまりに、オレがシヴァたちと合流しないでいくと思ったのか。
実際のところ、シヴァたちとは会わずに済ませたかった。
出会ってしまえば、オレたちと行動を共にしない訳がないのだ。しかし、こんな場所で4人だけで戦っているのを見て、黙って通り過ぎることも出来ないのも事実である。
「どこかで上手く別行動が取れればいいんだけどなぁ」
「魔法で眠らせてしまいましょうか?」
「それ、いいね」
「ヴィシュ?」
カルラと悪だくみするオレに、シヴァが怪訝な顔を向ける。
「いや、なんでもないよ?シヴァたちがウデを上げてたんで、びっくりしてたんだ」
「いやぁ、あれからもガイナークさんたちにシゴかれたもんだからさ」
「なるほど。納得だよ」
「こんな偶然にヴィシュたちと会えるとは思わなかったよ。一緒に行くだろ?」
「あ、・・うん。実は、オレたちは魔物以外に目的があるんだ。そこにたどり着くまで、協力してもらえると嬉しいんだけど」
「協力って、出てくる魔物を倒せばいいってことだろ?」
「簡単に言うと、そうなるね」
「だったら、問題ない。今までぼくたち4人だけでやってたことと変わらないから。
で、目的って?」
「うーん。全ては話せないんだけど、この魔物の大量発生の元凶かも知れないモノの所へ行きたいんだ」
ヴィカとの関わりは伏せて、カーリーと呼ばれる存在が、今回の事件の原因の可能性があることだけを話して聞かせた。
何も教えないで協力してもらうのは心苦しいし、シヴァたちなら、頼めば黙っていてくれると信用していたのだ。
これで、カーリーの許まで行くのに、問題はなくなった。
あとは、いかにタイミングよくシヴァたちと別れられるか、そしてオレたちがカーリーを倒せるか、だ。




