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魔法剣士と呼ばれたい  作者: あおおに


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22/39

魔獣の猛威

 この物語のために作った設定を、全て語ることが出来るんだろうか?

 昼夜を問わぬ強行軍の末、2日目の午後になってオレたちは目的の湖に到着した。

 そこでのんびりと釣りをしているザビーシュたちを発見して、がっくりと膝をつくシヴァ。

 オレも、おんなじ気持ちだ。

 シヴァがどれだけ心配したと思ってるんだ。

 「あれ?シヴァも来たのか~?」

 釣竿を片手に、白金色の髪の美少年がのん気そうに近づいてきた。

 髪の色からして、貴族の血が濃いようだ。彼がザビーシュ・トルクか。

 3人のうち、名字持ちは彼だけのハズだ。

 「ザビー、すぐに引き上げるぞ!」

 「えぇ~、なに言ってるの?まだ大して魔物を狩ってないよ~」

 残りの2人、タイザンとコウティも腰を上げる様子はない。

 「ダメだ!ヤバいんだ。この辺りに魔獣がいるんだ!!」

 「魔獣~?すっげぇ~。いきなり、大物じゃん!」

 「バカか!オレたちが束になったって勝てるような相手じゃないんだ!

  すぐに荷物まとめろよ!!」

 シヴァが頭に血を昇らせていた。

 ずいぶん珍しい光景だ。

 そんなことを思っていると・・・視界の隅に、漆黒の女が立っていた。

 スレーンドラジット。

 カルラの影に潜み、常に彼女を護っている分身。

 「!!」

 オレとカルラが、同時に声なき声をあげた。

 大鎌を振りかざして黒い風と化すスレーンドラジット。

 オレも背中の盾をかざしながら、彼女のあとを追う。

 スレーンドラジットの向かう方向から、強い魔力の塊が飛んでくるのが分かる。

 炎だ。

 スレーンドラジットが炎の塊に向けて、大鎌を振りぬいた。

 大爆発が起きた。

 スレーンドラジットの漆黒の身体が吹っ飛ぶ。

 耳を聾する轟音と熱風に耐えながら、オレは盾をかざした。

 背後には、ザビーシュたちがいる。

 盾ごと吹き飛ばされそうになる圧力を、熱を、必死に防ぐ。

 盾でカバーし切れない足が熱い。多分、燃えている。

 「ヴィシューーーっ!!」

 シヴァの心配そうな声が響いた。

 良かった。無事みたいだ。

 炎を防ぎ切ったオレは、がっくりと膝をつこうとして、誰かに抱きとめられた。

 「ここはダメだよ!地面が燃えてる!」

 そのまま、腰を下ろして大丈夫な場所まで引きずって行かれた。

 湖からタイザンとコウティが走ってくるのが見えた。良かった。彼らも無事か。

 「コウティ、治癒を頼む!!」

 「分かった!任せて」

 コウティがオレの身体に治癒魔法を使う。

 どうやら、太ももから下が炎にあぶられて大変なことになっているらしい。

 「・・シヴァ、ヤツが来る・・・ぞ」

 治癒魔法のおかげで痛みがやわらぎ、やっとそれだけ伝えられた。

 「そうか。今のは魔獣が・・・!」

 シヴァが背中の大剣を抜いた。

 その隣に銀色の影が並ぶ。ラサーヤナか。

 カルラは、後方でラサーヤナの召喚を行っていたのだ。

 オレに駆け寄ってくる前に、自分のすべきことをする。いい女だ。

 湖の向こう側の木々を押し分け、白い巨体が姿を現した。

 印象としてはトカゲだ。

 ただし、その頭は、人間の胸の高さぐらいの位置にある。

 体色は、白一色ではなかった。白をベースに、血管のように赤い線が走っている。

 純粋な魔獣ではないのだ。

 魔獣の血を引く獣。

 しかし、ここまで特異な外見と特殊な能力を持っていれば、やはり魔獣と呼称される。

 ラサーヤナが銀色の風と化して、湖面を走った。

 「ザビーたちは、ヴィシュを頼む!!」

 シヴァも走り出す。

 「お、おう!」

 ザビーシュがへっぴり腰で長剣を抜く。

 タイザンも、大斧を構えた。

 コウティは、治癒魔法を使い続けてくれている。だいぶ楽になってきた。

 オレは、腰のポーチからポーションのビンを取り出すと、一息に飲んだ。

 コウティの魔法は外部からオレの身体を癒してくれているが、今度はポーションが体内から治癒を開始する。

 内臓も傷んでいたのか、ぐっと呼吸が楽になった。

 ポーションの空きビンは、きちんとポーチに戻す。空きビンがあるのと無いのとじゃ、新しくポーションを買うときの値段が、ずいぶん違うのだ。

 「ありがとう。もう、いいよ。

  キミたちは下がってて」

 オレは、自分の足で立ち上がった。

 焼け焦げてボロボロになったズボンとブーツの生地の下に、再生されたばかりのピンクの肌が見えている。

 コウティの治癒魔法の腕は、なかなかの様だ。

 オレは魔法結晶を1つ右手に握ると、リボルバーを起動した。

 最初から、出し惜しみはしてられない。

 なんとか魔獣にダメージを与えて、逃げる時間を作らねばならない。

 スレーンドラジットを吹き飛ばした一撃を見ても、オレたちが倒せる相手じゃないことは分かり切っている。

 湖に前足を踏み込んだ体勢で、魔獣はラサーヤナを迎え撃っていた。

 位置取りがうまい。

 半身を水に浸したせいで動きの鈍い魔獣に対し、ラサーヤナは水面に立ったまま攻撃を繰り出せるのだ。

 そこに、湖を半周したシヴァがたどり着く。

 完全にラサーヤナに意識を向けていた魔獣の首元に、シヴァの大剣が振り下ろされた。

 ちょうど自分の胸ぐらいの高さだ。一番、威力が乗るハズ。

 案外、やれてしまったのか?

 が、大剣は切っ先を魔獣の首元に潜り込ませただけで、その威力を受け止められた。

 「な!?」

 魔獣が全身を振るわせると、あっさりと抜け落ちた大剣とともにシヴァが吹き飛ばされる。

 同時に、尻尾が鞭のようにラサーヤナに襲いかかった。

 双刀で受け切ることが出来ず、ラサーヤナまでもが吹っ飛ばされていく。

 「ああっ、コウティ、今度はこっちだ!」

 背後で聞こえた悲痛な声に振り向くと、カルラが激しく血を噴きながら倒れていた。

 慌ててコウティが駆け寄っていく。

 そうか。自分の分身のラサーヤナがダメージを受けると、カルラもただでは済まないのか。

 じゃあ、最初にスレーンドラジットが吹き飛ばされた時は?

 あの時だって、同等のダメージを受けてたってことじゃないか。

 そのダメージに耐えて、更にラサーヤナを召喚したっていうのか。

 オレの鳩尾に冷たいものが走る。

 なんとかしなきゃ。

 なんとかしないといけない。

 オレが、なんとかしないといけない。

 魔獣がこちらに向けて、大きく口を開く。

 その口腔から、何かの塊が撃ち出された。オレたちに向かって。

 黒い石のように見えた塊は、飛来しながら激しく発火した。

 さっきの炎の塊は、これか!

 オレは右手に起動させていたリボルバーを、続けざまに炎の塊に撃ち込んだ。

 「バンっ!バンっ!バンっ!・・」

 炎の塊が爆発する。

 最初の一撃の再現だ。

 またも、盾の陰に隠れて耐えるしかできない。

 ビリビリと盾が振動する。

 治してもらったばかりの足が、また炎に包まれる。

 髪だって燃えてるハズだ。

 カルラたちは、無事か?

 オレは、ちゃんと炎を防げてるのか?

 朦朧とするオレの視界の中を、魔獣はゆっくりと湖を渡ってきた。

 頭の中でガンガンと轟音が鳴り続けている。

 自分の足で立ち続けることが出来ない。

 もう、盾を持ち上げる力もない。

 オレは右手をゆっくり持ち上げると、魔獣に狙いを定めた。

 「・・・バンっ!」

 人差し指の指先に魔法で生成された弾丸は、魔獣の額に吸い込まれるように命中し。

 弾かれた。

 

 

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