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シャルル(レオ視点)

「またね!レオ」

そういって、シャルルはいつもの調子で手を振って帰っていった。

あれから2週間。シャルルは一度もこの孤児院にやってこない。


「あん時引き止めてりゃな…」

シャルルが来ない理由は多分あの日に話してたことと関係があるんだろう。

隠してるつもりがあるかわからないがシャルルは明らかにいいとこの出だ。

服も髪もいつも清潔だし警戒心がない。おまけに小遣いが金貨なんだから相当だ。


商家の出か市長の息子か…ロベール伯爵家の令息の可能性もある。というか前の話で顔色変わってたあたりそうなんじゃねえかな。


「…無理してないといいんだが」

シャルルはやると言ったら多少無理してでもやり切ろうとする。ランニングの時がいい例だ。途中で手を抜いてもいいだろうに意地張ってひーひーいいながら走り切る。

根性があるのはいいが放って置けない。


放って置けないのは孤児院の弟妹達もだが、その中でもシャルルは特別だった。

シャルルの見た目が俺と同じで特に醜かったからかもしれない。

普通の人なら悲鳴をあげるし不細工に見慣れた人でも目を逸らす。だから俺らのような醜い人間は顔を隠し、俯いて暮らす。


同じ痛みを知る子供達と過ごすこの孤児院は安心できて、優しい場所で…どこか鬱屈とした空気が漂っている。

同じような人間で集まっても、見た目で判断することがどれだけ苦しいかがわかっていても、突きつけられる美醜という価値観からは逃げられない。

他人を恨む者も自分を呪う者も、幸せそうに生きる人々を横目に息を殺す。自分たちは明るい陽の元を歩いてはいけないと、暗黙の了解のように。


でもシャルルは違った。いつも堂々と前を向いて、子供達のためにフードを被ることはあってもその容姿を後ろめたく思う様子はない。

むしろ自分の顔を気に入っているようだった。わざわざ懐から手鏡を取り出してにこにこしながら見つめているのをみた時は呆れたが、同時になぜか救われた。


シャルルの前でフードが外れた時、恐怖と一緒に少しの期待があった。シャルルなら目を逸らすことも顔を顰めることもないのではないかと。…あんなにかっこいいと連呼されるとも思ってはいなかったが。

思い出したせいで頬に昇った熱を振り払うように頭を振る。


シャルルの言葉が、視線が真っ直ぐすぎて…そこに翳りも衒いもないからどんな荒唐無稽な内容でも思わず信じてしまいそうになる。シャルルがいうならむしろ信じたいとまで思いかねない。

犬歯が見えるような口を大きく開けた笑い方が怖くなくなったのもシャルルのせいだ。


「…集中できねえな」

ランニングを終えて素振りをしようとしたがどうにも雑念が消えない。

突然現れたシャルルのことだから突然いなくなるのもなにも不思議じゃないはずだ。別れがつきものの孤児院でこういうことにも慣れているのに。

どこからともなく現れた寂しさが妙に付き纏う。


「はー…切り替えろ、俺」

くよくよしていても仕方ない。

ロベール伯爵家は実力主義で容姿身分に問わず優秀な人材を登用していると聞く。剣の腕があれば自分からシャルルに会いに行くこともきっと不可能ではないはずだ。

今はただ修練に専念しよう。

毎度タイトルが思いつきません。何か良い案を思いついた方がいらっしゃいましたら感想にいただけると嬉しいです。

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