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プロローグ 選択の始まり
私が望むのは、ただ穏やかに生きること。それだけだった。
だから、魔王継承権第三位の道具となることを選んだ。
王になる気もなく、強さを誇ることもしない彼ならば、
きっと誰よりも優しく使ってくれると思ったから。
その選択を告げた瞬間、
周囲の視線が冷たい刃のように刺さる。
――臆病者が。
所詮はヒトーー滅びた弱者の選択だ。
それでも迷いはなかった。
彼は眉間に皺を寄せ、私を見つめていた。
多分、彼は誰も選ぶ気がなかったのだろう。
けれど、選ばれない道具に未来などない。
私に許された能力は回復しかできない。
守るために命を削ることしかできない存在だ。
この世界で穏やかさを求めるには、
誰よりも戦わない者の傍にいるしかない。
その選択が、どれほど多くのものを失う始まりになるのか。
このときの私は、まだ知らなかった。




