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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第806堀:空母の必要性、そして空への憧れ

空母の必要性、そして空への憧れ



Side:ユキ



「……なるほど。話は分かったわ」

「……ええ。よく、わかりました」

「……ですねー。わかりやすすぎですよねー」


そういいながら俺の前に立っているのは、このウィードの女王であるセラリアを筆頭に、会計、財務を管理しているエリス、そして、商業などの物資を管理しているラッツだ。

俺はさすがに、この状況で皆の前に立っていられるほど心臓に毛は生えていない。


「そうでしょー。うんうん。これで空母なんかに予算を割かなくてすんだわよね」

「ええ。ルナ。ありがたいわ」

「はい。そこは本当に助かりました」

「ちゃんと漁港の修理もしてくれましたから、大丈夫ですよ」

「そうよねー。ちゃんと自ら後始末はしたんだから、そこはオッケーよね? 死者はでていないんだし、私にだって時にはちょっとした失敗はあるわよ。でも、これでDPに換算して約一千億の空母が二隻、武器弾薬艦載機満載状態で手に入ったんだから私って太っ腹」


しかし、心臓に鋼鉄より硬い毛が生えているルナはこの3人を前にしても何も感じていないらしく、自分の失態をテヘペロ程度で済ませている。

やっぱり、神様ってやつはクソなんだとよくわかる。

で、そのままルナは話は終わったといわんばかりに部屋の外へ向かい、座っている俺の前を通り過ぎる際にぽそっと……。


「まあ、頑張りなさい。私がいくら言ってもどうしようもないからねー」


いや、違った。

わかっていて、あんな悪びれることのない様子を見せていやがった。

くそう。神様なんて、神様なんて……。


バタン。


と、そんなことを考えている間に部屋のドアが閉じる音が後方からする。

ルナが部屋から出て行ったのだ。


「さて……。ルナは行ったし、真面目な話をしましょうか」

「はい」


セラリアの言葉に素直に返事するしか、今の俺にできることはない。


「今回の被害は、リゾート区にある漁港の船が6隻小破、人が4人ほど波にさらわれたけど、こちらはサハギンたちが間一髪で救出したわ」

「不幸中の幸いだな」


ここで死人なぞ出た日には、ルナの評価はダダ下がり間違いなしだよな。

いや、そういうヘマはしないからこそ、あんな無茶をやったんだろうが。

だからこそ、損害に対しての補償はしてくれた。

というか、神様パワーで直した。


「リーアやジェシカの話を聞く限り、ルナがあなたの話を聞いて暴走したというのはよくわかるけど、そもそも、ルナをむやみに刺激するようなことを言うのはやめなさい」

「すみませんでした」

「まあ、財政的にはかなりプラスになりましたけど、海のほうは大騒ぎでしたからね……」

「お兄さんがルナと仲がいいのはわかりますが、あの人、ノリでとんでもないことしでかしますから、そこらへんは何とかコントロールしてほしいです」

「善処いたします」


どっかの政治家みたいな発言しかできない俺が悲しい。

あの駄女神相手では、俺の理性が保てない。


「はぁ、あなたとルナはお遊びとしてしか基本的に周りに被害は出さないからこれまで何も言わなかったけど、今回はあまりにひどかったから口を出させてもらったわ」

「いや、ごもっともです」


遊びは周りに迷惑をかけないでっていうのが大前提だからな。

お化け屋敷騒動は? あれはもともとカグラたちの同意の元だしな。


「流石に今回のことは、ルナも堪えたようだしね。自ら後始末を進んでするとか、ルナなりにさすがにまずいと思ったんでしょうね」

「基本的にルナは私たちに後始末お任せですからね」

「先ほどのルナさんは、ずいぶんとおふざけしていましたからね。お兄さんに責任がいかないようにって配慮してでしょうねー」

「え? あれは素だろう?」


俺をおもんばかってふざけた反応をしてたってか?

そういえば、確かに私が何を言っても無駄だから。とか言ってたな。

あれが俺を思ってのこと?

いや、ただ逃げただけだろう。

俺を励ましてたし、何を言っても無駄で自分ではどうすることもできないっていうのは、まんま俺に押し付けたってことだよな?


「まあ、あなたとルナの関係はよくわからないから、今はそれはいいとして、結局、海に出現したニミッ〇級空母はどうするつもりなのよ?」

「どうするって、シーサイフォ王国の海で活躍してもらうつもりだけどな」


それぐらいしか、空母の使い道なんぞない。

ウィードには海がないからな。


「……その話を聞くと、海がないと空母は無用の長物ってことよね」

「そりゃな」


海に浮かべなくて何のための空母か。

というか、ダンジョンという空に限りがある世界では、そもそも艦載機の活躍の場もないからな。ダンジョン国家である俺たちにとっては空母は特に存在意義が薄い。

だが、この異世界の海となると意味合いは違ってくる。

海にも怪物がいるのだから、その脅威から身を守るためにも、巨大で丈夫な船というのは必要だ。

こちらの世界の人から見れば、空母というものの意味は分からなくても、超巨大艦だからな。

それを作り上げる技術があると認識される。それだけでも十分意味があることだ。

さらには、空母に積まれている、艦載機も自由な空を得られる。

地球では空だって交通ルールがあるので、自由に飛ぶなんて言うのは、ほぼありえない。

というか、それを無視すると領空侵犯とかになるので、戦争勃発だ。

こっちの世界には領空侵犯なんてないからな! というか、高高度を索敵する方法を持っていないから気が付きもしない。


「そんなものを、貴重な国民の血税であるDPで呼び出そうとしていたわけ?」

「そんなものって言われてもな。タイゾウさんの報告書も見ただろう? 俺たちが今後海に乗り出すとして、安全面から考えても海上だけでの交通手段はあり得ない。海の上を行くよりも空を飛んだ方が早いからな」


そう、空母を選んだ理由は、シーサイフォ王国のためだけではない。

今後の海洋調査における拠点にするためでもある。

そして万が一の時は空から逃げられるようにという目論見もあるのだ。

まあ、ルナから提供されるまでは飛竜を空の移動手段にしようとしていたんだがな。

だって、空母だけですっからかんになるから。


「……報告書は見ているから、空母の必要性は認めるわ。確かに、空の移動手段があればと思ったことはあったわ。あなたがいなくなった時とか」

「だろう? 今回がいい機会だ。空母さえ手に入れれば、滑走路やその他もろもろの設備をそろえる必要がないんだ」


そう。空母一つあれば、航空基地と同じとまでは言わないが、飛行機の離発着ができる拠点となりうるのだ。

維持費は莫大だけどな。

ニミッ〇級なら原子炉で動いているので、電気代はもとより、動力もこれで賄える。

まあ、原子炉の中身を入れ替える必要はあるんだが。

そういうデメリットを考えても、空母があれば楽だとタイゾウさんたちも判断した。


「で、その空母は今どうなっているの?」

「スティーブたちを派遣して調査中だよ。漁港に被害が出るほどの出現方法だ。しっかり調べてもらっている。ルナの雑な呼び出しで、破損とかしてたらトンデモないからな」


お陰で、スティーブたちはシーサイフォ王国の監視が終わってのんびりしていたところに、緊急の任務が入ったわけだ。


『休みがー!? おいらの休みがー!?』


とか言ってたけど、ウィードの平和のため、同盟国の平和のためだ。

いつかきっと休みは取れるから、今は歯を食いしばって頑張ってもらうしかない。


「話はわかりました。ですけど、空母の動かし方とか、どこを破損しているとかどうやって判断するんですか? スティーブたちも素人の……ってまさか」

「えーと、もしや、スキルでの習得ですか?」


流石はエリスにラッツ。

すぐに回答を導き出した。


「スティーブたちにはスキルで知識だけを突っ込んで、取り合えずってわけね」

「そうでもしないと動かせないからな。訓練で失敗して壊されたりしても大被害になるし。今回は仕方がない」


まあ、膨大すぎる知識の導入でスティーブたちは小一時間ほどのたうち回っていたけどな。

これで、空母も動かせるエリートゴブリン、エリートオーク集団が出来上がったわけだ。

もうそろそろなんでもできすぎて、ソリッドなヘビになりそうな気がするよな。


「私たちも覚えた方がいいのかしら?」

「まあな。覚えられるなら覚えた方がいい。スティーブたちが全滅って可能性もないわけじゃないし、知識や経験は人を裏切らないからな」

「本当に何事も言い様ね」


世の中のとらえ方なんて見方によって違うからな。

失敗だと思う事柄も、はたから見れば成功への一歩とも取れるわけだ。


「しかし、戦う船が報酬ってユキさん的にはいいんですか?」

「エリスの言う通りですね。いつものお兄さんなら他に要求でもしたんじゃないですか?」

「選べるなら選ぶけどな。さっきも言ったが、今回はルナが勝手に出したんだよ。それも中身満載でな。下手に駄々をこねて空母中身付きを無しにされる方が損失がでかい」


いくらでも文句をつけることはできるが、この空母を無しにされる方がきっと問題だからな。

そこはルナにはあえて文句は言わずに黙っておいた。

決して嫁さんたちに怒られるから怖くて黙っていたわけじゃない。


「まあ、それはそうなんだけど、この空母だって結局このアロウリトの魔力枯渇減少を調べるための道具の一部なんだし、ご褒美というより必要経費みたいなものでしょう? それが報酬なのはいいわけ?」

「ロマンの飛行機もあるかもしれないからな。そういうところで俺は報酬としては認めているよ」


そう。艦載機ということは戦闘機だ!

戦闘機、それは男のロマン。

いつか乗ってみたいもの!!

ここだけはルナのことを褒めていいと思っている。よくやった!

早く、スティーブたちの報告が聞きたいものだ。

F-2か? F-18か? それともF-22とかのっているのか?

あえてA-10とかあるかもしれない。

いやー楽しみだ。


「……飛行機がロマンね。でも、あなたが乗るのは認めないわよ?」

「ですね。ユキさんが飛行機に乗るのは認められません」

「当然ですね。戦闘機とか本当に無しです」


と、俺の楽しみを真っ向からぶった切ることをいう嫁さんたち。


「え? なんで?」


俺は嫁さんたちが言っていることがわからなかった。

飛行機が、戦闘機が目の前に、自由にできる空と共に存在している。

それは乗れということだろう?

なのに、嫁さんたちは乗ってはいけないという。


「なんでって、あなたが戦闘機に乗るってことは、前線に向かうってことよ? 駄目に決まっているじゃない」

「そうです。そんなのは認められません。そもそも、ちょっとした事故一つで基本的に飛行機は命を落とすんですよ?」

「ドッペルとはいえ、その時の衝撃は計り知れませんからねー。ショック死するかもしれません。だから駄目です」


当然の回答ではある、だが、だが、そんなことで、空への夢は捨てられるはずがない。

しかし、俺は大人だ。

子供たちもいる立派な親であり良識ある社会人だ。

だからこそ……。


「そう、だな。……仕方ない。報告書と現物を見るだけにしておくよ」


俺は血の涙を呑んで我慢することにする。


「……そこまで乗りたいものなの?」

「夢の一つだったんだ」


自分だけの戦闘機。

それは、大空を目指すものたちの憧れ、それは誰もが夢を見るものではないだろうか?


「と、いうことで、早速空母のほうに行ってみるわ!!」


乗れないなら、間近でじっくり見るしかない!!

ということで、ダッシュをする俺。

どうせ話はこれで終わりだしな。

まあ、そのあとにいろいろトラブルがあって緊急発進するとか、そういうことがあるかもしれないからな!!


「そんなに好きなんですね……」

「うーん。ちょっと乗るぐらいは認めてあげたほうがよかったんでしょうか?」


ナイスフォローだ、エリスにラッツ。

それでセラリアとか他の嫁さんを説得してくれ。

俺はその間に空母の艦載機を見てくるとするよ。







人は空へと憧れを持つ。


バカ野郎どもだからな!!

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