第807堀:おもちゃばこ
おもちゃばこ
Side:ナールジア
「「「ふぉぉぉぉぉぉ!!」」」
私たちは今、心の底から歓喜の雄たけびを上げていた。
それも当然。
私たちの目の前には……。
「あれが、ニミッ〇級……じゃなかったな。ルナ級航空母艦一番艦ルナだ」
「「「ふぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
そう、私たちの目の前には、地球で初めて量産された原子力空母が大海原にその身をさらしているから!!
理由はよく覚えてないですけど、シーなんちゃらの国で船が必要ってことで、取り寄せたらしいです。中身付で!!
ここ重要です。中身付き!!
空母の中身、それは戦闘機!!
空母自体も地球の技術を結集して作り上げた最大最高の艦!!
いやー、空母運用として、護衛艦隊とかも見てみたかったんですけど、さすがにそれはむりでしたかー。
とはいえ、空母も今の地球じゃあまり活躍の場がなくなっていると聞き及びます。
まあ、ICBMが存在していますからね。それで敵の急所を一撃なんで、空母での制空権の奪い合いっていうことにはなかなかならないようです。
「しかし、ものすごい大きさですね。全長330メートルの超巨体……」
「すげー、この超巨大な鉄の塊が海に浮いてるとか、すげー」
「しかも、中にたくさん積んでいるときた。ものすごいなー」
ザーギスさん、コメットさん、エージルさんもみんな目を輝かせて空母を見つめています。
それも当然、彼ら彼女たちだって私と同じ技術屋です。
こんなものを見せられ、魅せられて興奮しないわけがないです。
「しかし、残念ですね。衛星を利用するシステムは使えないというわけですか」
「なに言ってるんだい? 基本的にそういう衛星通信は超遠距離との相手とのやり取りに必要なだけで、レーダーとかの電子機器が全部動かないわけじゃないんだ」
「まあ、その通りだよね。衛星に頼りきりだと、衛星を壊してしまえば空母を無力化できてしまう。そんな脆弱なつくりにはしてないよね」
「いや、それはわかっていますが、やはり衛星を使用したフル稼働の状態を見てみたいじゃないですか」
ザーギスさんのその気持ちはわかる。
痛いほどよくわかる。
「はは、ザーギス君の気持ちはよくわかる。まあ、今は稼働するもののみで我慢してくれ。そして、いずれこの星でも衛星を飛ばして、全力稼働させてくれ」
「ええ!! そうですとも!! 私たちはいつか広大な宇宙へと挑むのです!!」
そんな感じで興奮している内に、私たちが乗っていた小型艇が空母に回収されていきます。
普通に飛んで行けば? と、おバカなコヴィルがほざいていましたが、そんなことをするわけないじゃないですか。
こうやって、人が普通に使う用法を体感することで見えてくるものもあるんです。
あの子は結婚してから、頭の中が桃色になってどうしようもないですねー。
「さ、いよいよ格納庫です」
タイゾウさんがそういうと、私たちは我慢できずに立ち上がり、少しでも早く格納庫を見たいと身を乗り出したそこには……。
「「「ふぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
天国が広がっていた。
だって、種々の戦闘機がずらっと並んでいるんです。
これを天国と言わずになんというのでしょう!!
そして、それらを間近で確認しようとするのは技術者の性!!
気が付けばふらふら~っと体が動いていって……。
「あ、そこの人。戦闘機に勝手に近づいたら危険です……」
「ふしゃー!! お黙りなさい!!」
「ひっ!?」
はっ!? つい、威嚇してしまった。
いけないわ。私は日頃優しいお姉さんで通ってるよね。
「って、ナールジア研究長じゃないですか!? やばっ。さっさと片づけないと!!」
「まてや!! 片づけるとかふざけたことをいってませんか!? これは私のモノですよ!! 全部よこしなさい!! 見せなさい!!」
こっちが優しくしてれば付け上がりやがって。このゴブリンが!!
お前たちが触っていいものじゃないんですよ!!
「ちょっと、冗談抜きでだめなんですって!? これは今確認中なんですから!」
「私たちが確認してあげますよ!! ね!」
「もっちろん!!」
「だね。僕たちが見てあげるから他の仕事に行っていいよ」
「普通なら止めるところですが、私も好奇心が抑えられませんね」
流石は私の同志たち。
心の奥底からふつふつとあふれだす技術者魂を止められないようですね。
さあ、みんなでこのF-22を調べようじゃないですか!!
「ちょ、だめですってば!? 流石にこの命令違反はやばいですって! タイゾウさん!! そこで笑って見てないで、止めてくださいよ!!」
「おっと、すまない。ナールジアさんたち、このラプターに手を出すのはやめてくれないですか?」
「なんでですか!! タイゾウさんは調べたくないんですか!! 使われてしまうんですよ!! どこかに持っていくんですよ!? ありえなくないですか!? これ一機でいくらすると思っているんですか!?」
「まあまあ。ラプターはほかにもあります。これはユキ君が急ぎどうしてもってことで、出しているんですよ」
「あ、そうなんですか。それなら仕方ないですね。ほかのを見ましょう!! さあ、早く!!」
流石に、ユキさんが確保している飛行機を分解してしまう気はありませんとも。
まあ、もしこれ一機だけというなら断固として私のモノにしますが。
前に折れた童子切を頂けませんでしたので、次こそは妥協しないと決めていたんです。
「まあまあ、戦闘機の方はとりあえず後回しですよ」
「何でですか!? タイゾウさん、目の前に最新鋭の戦闘機たちが並んでいるんですよ!! F-14やF-15とか、果てはC-2、SH-60もあるんですよ!? お馬鹿なんですか!?」
「ふむふむ。目の前の宝の山に、正気を失っていますね」
「私は正気です!! 早く私の戦闘機を見せてください!!」
そうです。私は正気なんです!!
いい加減おあずけ状態で待たせすぎるようですと、タイゾウさんでも許しませんよ!
「では最後にこの一言だけ」
「なんですか!? もったいぶらなくていいですからね。単純にわかりやすく一言で!!」
「艦のCIC、いや空母だとCDCですな。まずはそこに行ってみたくはないですか?」
「「「……」」」
あまりの言葉に私たちは絶句する。
CIC、CDC、本名称は戦闘指揮所。
艦の心臓部とも言っていい場所。
「「「行きます!!」」」
もっと早く言ってください。
ちょっと、焦りすぎちゃいましたよ。
「そうでしょう。では、こちらへ」
そう言われて私たちはちょっとした興奮を抑えつつ、格納庫の宝物を惜しみながら……。
「チーフ。この部品はいるんですか?」
「あー? いや、それは予備のやつだな。それより、5番の……」
「ういー。これは、いったん床に置いて……」
「「「ばかやろー、ネジを床に置くんじゃねーよ!!」」」
「うわっ!? なんですか!?」
この寝ぼけ整備ゴブリンにしっかりと説教をしておいて、ちゃんと私の戦闘機をきちんと管理しておくように言いました。
まったく、ネジ一つで飛行機が破損して空中分解なんてこともあり得るんですから、教育がなっていませんね!!
格納庫の整理整頓は基本!!
とまあ、そんなトラブルがありつつも、CDC、戦闘指揮所にやってくると……。
「コンディション再度確認するっすよ」
「「「了解」」」
スティーブさんが指揮をとって、艦の調子を見ているようです。
「やあ、スティーブ君」
「ん? ああ、タイゾウさんっすか。それと……ナールジアさんたちっすか」
なんか非常に嫌そうな顔で見られました。
「なんですか? 文句があるなら聞きますよ? ちゃんとスティーブさんを改善させますから」
「あれ? なんか文句を言うおいらが悪いみたいになってません? おいらを改善っておかしくないっすか? というか、文句じゃないっすよ」
「あら、そうでしたか。では、なんでそんなに嫌そうな顔をしたのか教えてください」
「えーっと、一応、この艦の掌握をしている最中っすから、脇からいじくりまわすのはまた今度にしてくれません? 艦隊要員も完璧じゃないんで、説明もできないんすよ。突然のことだったっすからね」
「ああ、そういえば、この空母二隻はルナさんがいきなり出したとか言ってましたね」
「そうっすよ。まあ、いつもの大将とのやりあいの最中に思いついたみたいっす。それで、この兵器群の名簿登録すら終わっていないっす。それを無視して無理やりどうこうしようっていうなら、冗談抜きで捕縛して牢屋に放り込むっすよ? 皆さんは、この兵器の管理をいい加減にしちゃいけないっていうのは一番わかっているはずっすよね?」
「「「……」」」
おっと、このスティーブさんはマジですね。
目がやばいです。
戦力的には、スティーブさんの方が正直上です。
私たちはあくまでも、技術者、開発者であり、それを使いこなす兵士ではないのです。
流石に状況を正しく把握している私たちは素直に黙ります。
確かにこの兵器の管理登録が終わってすらいないのに、貸せというのはダメすぎますね。
「で、今回は忙しいんで、後日にしてほしいんですが? というか、なんでタイゾウさんはこの技術屋たちを連れてきたんですか? 完全に暴走しているっすよ?」
「それは彼らがどこかで情報を聞きつけて、コントロールなしにこっちに飛び火した時よりはマシかと思ってね」
「あー」
くっ、納得されるのが悔しい!!
でも、否定できない。
今も暴走気味だったのですから。
「まあ、ナールジアさんたち、技術屋用に引き渡しできるのは用意してありますから。そっちは既に登録や整備は済んでいるはずっすよ?」
「「「本当!!」」」
スティーブはやっぱりできるゴブリンでした。
ちょっと、融通が利かない頭の固いゴブリンだなーとか思ってしまってごめんなさい。
「本当っす。だから、CDCの説明とかはまた後日っす。いいっすね?」
「話は理解しました。で、私の戦闘機はどこですか?」
「……いや、戦闘機は個人の……。言うだけ無駄っすね。ジョン。聞こえるっすか?」
『なんだ? 今のところそんなに早く、艦載機の確認なんて終わらないぞ? こっちも二番艦のCDC掌握でクソ忙しんだよ』
「それはこっちも同じっすよ。そっちの話じゃなくて、こっちにナールジアさんたちが来たっす。だから、そっちの甲板に用意している……」
『ああ、もう来たのか……』
なんか、心底嫌そうな声が腹立たしいですね。
「何か文句があるのなら、ジョンさんの装備に自爆機能を仕込んでもいいんですよ?」
『それはやめてください。甲板に整備済みのF-15があるから存分に見てください』
「「「やったー!!」」」
F-15っていうと、イーグルが愛称の傑作機じゃないですか!!
わくわくが止まらねえぜ!!
「って、そういえば、こういうのはユキさんも大好きだと思うんですけど?」
「ああ、大将は、検査が既に終わったけど、今回のミッションでは積み込めない艦載機とか物資をアイテムボックスに入れてるっすよ」
「はぁ? 載せられないってどういうことですか?」
「一応、シーサイフォ王国で運用予定っすからね。必要なのは、対潜装備とか魔物なんすよ」
「なるほどって、それならユキさんに見せてもらった方がいいじゃないですか!?」
「いやいや……。飛行機を整備、離着陸できる場所がこの空母だけしかないんですってば」
「あー……。じゃ、ユキさんは結局、宝の持ち腐れですね」
「本人に言っちゃだめっすよ。嫁さんたちから戦闘機に乗っちゃだめだって言われてすっかり落ち込んでるっすから」
いや、流石にユキさんが戦闘機に乗るのはダメでしょうに。
あれ? でも、あれだけ飛行機が好きだったユキさんが素直にあきらめるのかしら?
と、そんな疑問が頭をよぎりつつも……。
『じゃ、迎えを寄こしますから……』
「あ、飛んでいきますから」
目の前の戦闘機に意識を奪われるのでした。
世の中、好きなものは人よりけり。
そして、兵器であっても人によってはとても興奮する物になるんだ!!
みんながFA-22を見ると興奮するのと同じさ!
そして、リボン付きだと、もっと興奮して鼻血をだすのと同じさ!!
な!! そうだろう!!




