第780堀:新編成
新編成
Side:ユキ
やっべ。頭痛がしてきた。
「ご、ごめんなさい……」
そう言って謝ってくるのは、ソロだ。
彼女は、ハイデンの今後の行動予定を伝えるために、ウィードを訪れたのだが、その際に……。
「なーに、謝っているのよ。大丈夫。私が何とかするから、心配しないで!!」
この超能天気女神が付いて来てしまったのだ。
状況が状況なので、とりあえず無視していたのだが、ここまで一緒にきてしまったというわけだ。
「とりあえず、邪魔だから帰れ。ハイレン」
「えー!? 何言ってるの? ハイデンの危機でしょう? 私が出て行かないでどうするのよ?」
「お前が出ても混乱するだけだ。帰れ。危機でもなんでもないからな。他国からの復興支援として援助が来ただけだ」
「ならなんで、ユキ少年たちがわざわざ出向くのよ? 何かあったからでしょう?」
「ただの顔見せだ。大陸間交流が始まったからな。新大陸の方にはちゃんと顔を出しておかないと、今後の行動に支障がでる」
「むー……」
ハイレンはこちらを疑っている感じだが、怒涛の正論にそれ以上はなにも言えないでいる。
嘘は言っていない。
そう、嘘は言っていない。
ただ心配事があるだけだ。ただの取り越し苦労の可能性だって大いにある。
「ねえ? ソロ、本当? 私の目を見ていって?」
「え? あ、はい。本当です。シーサイフォから復興支援が1万人ほどきたので、どう対応しようかとって話になっていまして……」
「へー、ハイデンの復興に1万人もよこしてくれるなんて良い国ね。なるほど、それなら大変よね。顔出しも必要か。なら、私は必要ないか。長い話は苦手なのよ」
ほっ、バカは納得してくれた。
これ以上ついてくるとかいうようであれば、ソウタさんとエノルさんに出動してもらうところだった。
ま、その心配もないようだが……。
「ハイレンちゃーん。こんな所でなにしてるのかなー?」
「うひゃ!? リリシュさま!? あ、いや、ソロが何か慌てた様子で走ってたからつい……」
「お食事の準備中に勝手に飛び出しちゃだめでしょー? みんな待っているのよ。さっさと戻りましょうねー」
「い、痛い!? 痛いです!? ご、ごめんなさーい!?」
と、そんな感じで、女神リリーシュに連行されていった。
流石のハイレンも、リリーシュには逆らえないらしい。
お前みたいなお転婆はシスターとして更生しろ。
いや、女神に何言ってんだろうなとは思うけどな。
「で、ソロ。話を聞こう。邪魔者は去った」
「邪魔者って……。ハイレン様は、その、大らかな方で……」
「遠慮はするな。今の状況では混迷しか生まない。それとも、ハイレンを呼び戻してついてきてもらうか?」
俺がそういうと、すぐにソロは首をブンブンと横に振り、ハイレンは来なくていいと意思表示をする。
口にしないのが、せめてもの敬意というやつか。
それから、ソロの話を聞くと、ハイデンの内部は今後の立場向上のために色々キャリー姫たち外交官と協力体制を作るに当たっての、シーサイフォ復興支援軍の迎え入れの手伝いに条件を入れてきそうだということだ。
「はぁ、未だに足の引っ張り合いをしているとはね。とはいえ、これからの利益を考えるという当たり前の動きではあるわね」
「まあ、よくあることではありますが、今やるのは悪手ですね」
「危機感がなさすぎますね。私たちにこの情報が伝わらないとでも思っているのでしょうか?」
「所詮ハイデンからすれば他国じゃからな。いちいち、内政にまで口は出せんよ。まあ、面倒ではあるがな」
と、セラリア、ルルア、シェーラ、デリーユの元お姫様たちは、そんな反応を示した。
当然でもあり、面倒でもある。
「それに、女性である姫様や私たちが活躍していることに対しても色々思惑があるみたいで……」
「ああー。そう言えば、そっちの大陸は男尊女卑が強かったな。それで、キャリー姫が俺たちに協力を要請してきたわけだ」
「はい。彼らも協力しないなどということはないでしょうが、目下はシーサイフォの目的を探ることが重要ですので、身内の足の引っ張り合いに付き合う気はないと……」
「ま、下手すると、王都近郊で大規模戦闘だからな。そんなアホなことはしたくないよな。それにシーサイフォ王国から不興を買っちゃまずいもんな。国内も纏められない不手際といわれるだろうな」
「はい。姫様もそう仰っていました。私たちが失敗すれば失敗したで、好都合だと」
「話は分かった。ハイデンから要請があるのなら、出向くことに問題はないし、何かあった場合は同盟だからで押し通せるだろう。それに、ハイレンの説得に使った顔見せをするのは、今後のために間違っていないからな」
「ありがとうございます。よかった。これで何かあったときも安心です」
ほっと安心するソロ。
まあ、敵陣のまっただ中に入って色々交渉をしろ言われているのと変わらんからな。
まだ敵と決まったわけじゃないが、それでも心配するのは当然だろう。
というか、俺たちがそこまで信頼されていることは喜ばしいことだが、逆に言えばそれだけ、ハイデンの身内は信用できないという意味だからな。
まだまだ、ハイデンも安定しない。
「では、私はこれで……」
「ちょっと待ってくれ」
「はい。何でしょうか?」
話が終わったので、直ぐに出て行こうとするソロだが呼び止める。
「ついでだ。俺も後でハイデン王都に向かうけど、ちょっとまだ会議があるからな。俺の代わりに、デリーユを連れて行くといい」
「デリーユ様を!?」
なんかデリーユの名前があがったことに意外と驚くソロ。
普通に学院にいた時は仲良くしていた気はするんだが……。
「何かしたのか? 苛烈な訓練とか」
「いや、エオイドやアマンダにはしたが、ソロにはしておらんぞ。ソロ、妾のことで何をそんなに驚いておる?」
「あ、し、失礼いたしました。ただ、大陸間交流でお聞きした、亡国のお姫様であり、魔王としての名も轟いているデリーユ様が私たちなんかの護衛につくなんてと驚いてしまいました」
「「あー」」
俺とデリーユは納得してしまう。
確かに、元とはいえお姫様を護衛の為に連れていけっていうのはおかしい。
というか、普通は逆だ。お姫様を守るために誰かが守りに付くよな。
だが、いまさらな話でもある。
「ソロ。妾のことは気にするな。好きでやっていることじゃからな。ついでに、この名もある意味利用できるかもしれんしな。のう、ユキ?」
「ああ、なるほどな。お姫様で魔王とでも名乗って、シーサイフォの王国の出方を見てみるか?」
「うむ。ユキが正面から出るより、女である妾の方は、向こうの習慣的に本音が出やすいじゃろう?」
「確かにな」
男尊女卑の慣習が強い新大陸ならではの方法だな。
相手がどれだけ本音を吐いてくるか楽しみだ。
……もしかして、案外ハイデンの上層部の方もそれを狙ってキャリー姫たちを宛がったか?
部下が協力するしないは別として、情報を得やすいと思ったのかもしれない。
「でも、デリーユ様が危険じゃ……」
「それを言ったらソロも危険じゃ。なに、これでも幾度となく修羅場は潜り抜けておるからな。先ほど言ったように心配はいらんよ。そして、キルエたちも動かしていいんじゃろう?」
「もちろん」
そのために新大陸の方へ連れてきたのだ。
カヤたちと入れ替わりで、新大陸でのサポートをしてもらうという約束だ。
本人たちは新しい土地の見学と息抜きも兼ねてといっているのだが、仕事漬けになりそうなのが、申し訳ないな。また、後日休暇を取らせないとな。
働き過ぎは良くない。
「じゃ、デリーユはバイデに寄ってキルエ、サーサリと合流してから、ソロと一緒にハイデンに向かってくれ。こっちも、銃もどきの解析結果を聞いたら追いかける」
「うむ。銃もどきの結果は急ぎ知りたい所じゃからな。エンチャントの杖だとはいえ、あの形はどこから来たのか知りたいものじゃ。そっちは頼むぞ」
「ああ。デリーユの方も、俺たちが間に合わないとは思わないが、迂闊な行動はするなよ?」
「うむ。心得ておる。よし、ソロ行くか」
「はい。よろしくお願いします」
そんな感じで、ハイデンの護衛要請にはひとまず、デリーユ、キルエ、サーサリが向かうことになる。
この3人がいれば多少の問題は何とかしてくれるだろう。
俺はその間に、銃に関しての情報を集めることにしよう。
「とは、言うものの、今のところは解析の結果を聞くだけだしな」
俺がそうぼやくと、リーアの代わりに護衛についているシェーラたちが口を開く。
「ですが、大事な情報です」
「そうね。そう言うのが大事だっていうのはユキが常々言っていたことでしょう?」
「そうなのです。情報を集めることは大事なのです」
「だねー。ちゃーんと調べるから、的確に動けるんだよねー」
3人とも逞しく成長してくれて何よりだ。
「ま、その通りだ。どんなわずかな情報でもしっかり集めていけば、何か分かってくるかもしれないからな。というか、4人は今回新大陸なんだな」
「はい。今回はカヤさんたち警官3人組がキルエさんたちと、サマンサ様たちイフ大陸外交官3人とは私たちが入れ替わりです」
「なるほどな。じゃあ、ミリーがリーアの代わりか?」
「はい。そうです」
と、嬉しそうに返事をする、ミリー。
今回リーアも久々に護衛を外れて家でのんびりでもないが、子供たちのお世話に回ってもらっている。
俺が誘拐召喚されて以来今まで、本当に朝から晩まで徹底的にくっ付いていたからな。
本人は大丈夫だと言っていたが、ジェシカが大陸間交流で忙しくなり、実質護衛はリーア一人だけとなってしまったから、負担は大きかった。
新大陸に行った、誘拐された当初は、緊急事態ということで、ヴィリア、ヒイロ、ドレッサが俺の護衛についてくれたが、彼女たちも今は外務省の手伝いで超が付くほど忙しいし、なにより元々学生の身でもある。
まあ、それを言うのなら、アスリンたちもそうだが、今までの経験が圧倒的に上なので、ヴィリアたちよりもアスリンたちというわけになったのだ。
「でも、セラリアやルルアも来たがっていましたけどね」
「女王陛下と、医療の権威が何を言ってるんだか」
「それを言ったら、ユキだって王配でしょ?」
「それをいったら、ここのメンバーは全員ウィードの重鎮だけどな」
「もう、ああ言えばこう言うわね」
ラビリスはそう言って頬を膨らませて、ぽこぽこ叩いてくる。
「すまんすまん。とはいえ、セラリアやルルアもこっちに来る機会を設けないとな。まあ、ルルアは一度こちらに足を運んだことはあるが」
「あれを、足を運んだと言って良いのか物凄く疑問ですが」
「ひどかったらしいわね。教会の地下」
ああ、拷問部屋ね。
とはいえ、あれだけというわけでもないんだが、あれがインパクトは確かにあったよな。
「そうだな、いい印象はないだろうから、そのイメージを変えるためにも一度連れてくる必要はあるだろうな」
「そうね。で、そろそろ、銃の話を聞きに行きましょう」
「と、そうだ。それが本題だ」
いかんいかん。
まずは、銃の話を聞いて、何かわかることがないか調べないとな。
そういうことで、俺たちは新しい編成で、再び新大陸の問題へと立ち向かうのであった。
新大陸問題対応編成
ユキ・デリーユ・シェーラ・ミリー・キルエ・サーサリ・アスリン・フィーリア・ラビリス
カグラ・ミコス・ソロ
ウィード外交編成
セラリア・ルルア・エリス・ラッツ・リーア・トーリ・リエル・カヤ・ジェシカ・サマンサ・クリーナ・ヴィリア・ヒイロ・ドレッサ
こうして、新大陸対策メンバー新結成!!
ミリー、キルエ、サーサリが久々に冒険の舞台へ。
アスリン、フィーリア、ラビリス、シェーラも暴れるのか?
あ、もちろん、何かあればウィードからの救援はもちろんでますよ?




