第765堀:各大陸の様子 下
各大陸の様子 下
Side:ドレッサ
「それは理解している。それを広めようとは思わない。ただ内密にというわけだ」
「そもそも、このウィードに戦争を仕掛けて勝てるなどとは思わんからな。仕掛けるのであれば、内部からだ。それは、ユキも理解しているだろう」
「それに、建前上断ったのだから、良いだろう?」
そんなことを言って、ユキとの事前交渉を迫るエナーリア王、ジルバ王、アグウスト王。
まったく、事前通達であらかた各国への交易予定はあらかじめ決めていたはずなのに、やっぱりこうなったか。
まあ、仕方ないとは思う反面、ユキの仕事が増えるからやめてほしいんだけど。
エクスのノーブル神、いえ王は私の方をみて軽く会釈をしてきた。
あの人、未だに私の国を奪ったというか、不慮の事故で接収したことを気にしているのよね。
もちろん当初、恨みは有ったわ。いえ、ありまくったわ。
もう、呪いで人が殺せたらと何度も思ったわ。というか、今なら、私とユキの娘であるシュテンに頼めば呪殺ぐらいはしてくれる気がするけど、子供にそんなことをさせるつもりはない。
というか、国のことは既に和解ではないと思うけど、私の中では整理がついているから、もういいのよね。
ま、いつかこのことに関してもう一度話をする必要があるわね。
軽い会釈だったけど、ジルバ王やアグウスト王がその行動に気が付いて、私に視線を向けてきた。
エクスとは両隣の国だから、私の正体にも大体察しがついているのでしょうね。
今は変に仕掛けてくるとは思わないけど、私の存在を利用しようとする可能性がないとはいえないから、注意しないと。
ユキにもこのことは相談しておいた方がよさそうね。
「交渉といってもな。これ以上物資をもらおうが、お金を積まれようが、交易品や技術の開示を増やすことはないと、ジェシカたちから聞いていただろう?」
そんなことを考えている間に、ユキはウィードとの交易に関しての答えを返す。
「それは聞いている。だが、それはこれ以上出せないという話ではないだろう?」
「ああ、DPで物資を出せるのであれば、まだ余裕があるはず。物資はともかく、こちらの大陸の貨幣などは欲しいはずだ」
「うむ。私たちとしても別にほかの大陸、ロガリ大陸やハイデンやフィンダールがある大陸に自慢をするわけでもない。自国で消費するだけだ。これを使って内部や小国などの安定に使うのだ」
しかし、この3人も引かずに交渉を続ける。
理屈はわかるけど……。
「無理だ。こっちとしてもDPは有限だ。それを無理して削ることはできない。そもそも、小国へのウィード説明説得用物資は既に資料で計上しているだろう?」
「まあな。しかし多ければ多いほどいいのもわかるだろう?」
ユキがいうように私たちのウィードで使うDPを過剰に消費するのはねー。いざというとき対応ができないことになるわ。
でもジルバ王の言うように説得材料が多くなれば、ウィードに不満を言う連中が減るのも事実よね。
私としては、私のユキがバカにされるのは非常に腹立たしいから、悩むわね。
「それはわかるが、そっちの大陸に予定より多くの物資を引き渡しているというのは、どう考えてもバレるぞ? バレないと思う方がおかしい。小国にばらまくからな。最初は交流が本格的に始まっていないから隠せるだろうが、結局、本格的な交流が始まってバレることになる。そうなると面倒だ。ウィードが不公平な取引をしたことになるからな。そこでほかの大陸から突き上げを食らう」
「うむむ……。ならば、事情を話して、多めに渡してもらうことを承認してもらうか、ほかの大陸にも同じように増量を約束すれば?」
「各大陸に納得してもらうっていうのはありだな。しかし、ほかの大陸にも同じように増量をするのは厳しい。DPにも限界はあると言っているだろう? そもそも各大陸の国全域にいきわたるように配分しているんだ。余裕があるんだったら、最初から資料の物資量はもっと多かったよ」
ユキの言う通りよね。余裕があるなら、そちらがいらないっていうほど最初から書類に載せているわよね。
まあ、事情を話して納得してもらうっていう、エナーリア王のやり方はわかるけど、その分イフ大陸はほかの大陸に借りを作ることになる。今後、なにかほかの大陸から譲歩を求められれば、それを飲まないといけないことになる。そこはちゃんと考えているのかしら?
「確かにな。では、技術の方はどうだ? 各国に均等に教えるのであれば問題はないのでは?」
「教えてほしい分野が全員一緒ならな。俺としては、公開できる分は全部覚えて行って自ら生産してほしいぐらいだが、そもそも全分野を教える場所がないし、教員もいない。技術公開、習得の場所もこれ以上広げるのはきつい」
そうなのよねー。物資が駄目なら技術でって話なんだろうけど、ウィードだってまだまだユキがいた地球の技術には届いていないのよね。
そして、それを学ぼうと必死になっている最中だから、教員と呼べるレベルの人がいないのよねー。
まあ、ナールジアさんや、ザーギス、コメット、タイゾウなんかは教えることはできるだろうけど、この4人は教えることより自分の研究ってタイプなのよねー……。
人も場所も足りないんじゃ提供したくてもできない。
「……どれもやはり厳しいか。騎士ジェシカから話はもちろん聞いていたがな。まあ、こうして話を聞いて納得した。ほかの国もだろう?」
ジルバ王がそう言うと、ほかの国も頷く。
なんだ、最初からそこまで本気でもなかったのね。
「まあ、急いでやる必要もないだろう。まずはウィードとの交易をした結果を広めるだけなんだから、そして各大陸に存在する小国も今後はこの大陸間交流の場で話し合って、ここでウィードや各国とのやり取りを始める。その分を奪うことにもなりかねないし、大国がウィードとの交易を管理していると思われるから反発がひどいぞ?」
「それは避けたいな。また小国が騒ぐ」
「となると、この資料の通りに交渉するでいいだろう」
「あとは、ローデイ王みたいに何か個人的な希望はないか? それぐらいなら贈り物ってことでどうにでもできるが」
「「「いや、ない。王としての常識はある」」」
速攻で答えるイフ大陸の王たち。
「おいまて、みんなで俺をバカにしているような感じじゃないか? まあいい。ユキ、ラーメン屋頼むぞ!!」
「はいはい」
ローデイ王は本当にすごいわね。
よこでげっそりしている家臣や、サマンサが本当に気の毒だわ。
とまあ、イフ大陸との話し合いは何とか20分以内に収まって、残るは新大陸だけとなった。
「あとは、カグラたちとスタシア殿下、エノラの新大陸だけですねー」
「リーア、一応国の名前で呼ぼうな」
「あはは、すみません。なんか私としてはカグラたちのイメージが強くて。えーと、ハイデン、フィンダール、ハイレ教でしたね」
「そうだ。各国の前では間違ってもカグラの国とか言ってくれるなよ?」
そう注意されるリーアだが、私もカグラたちのイメージが強いのは同意。まあ、私たちはユキと一緒に新大陸に召喚されて色々あったんだけど、接してきたのは常にカグラとかキャサリンだったから、あまりハイデンって認識は薄いのよね。
ああ、フィンダール帝国は認識は強かったかしら? バイデに攻めてきていた敵だったし。
ハイレ教は……、エノラというかハイレンのおかげでなんか印象薄いのよね。
アクエノキもユキの前ではただのおバカでしかなかったし……。
そんなことを考えていると前方の廊下の先で立っている人がいるのが見える。
「あ、ユキ。じゃなくて、ユキ様。お待ちしておりました」
「「ユキ先生お待ちしておりました」」
そう言ってカグラたちが礼をしてユキと私たちを迎える。
「何かあったのか?」
「いえ。もうすぐ到着する時間なのでお出迎えしておりました」
「会議の方は落ち着いているのか?」
「はい。まあ、参加国が少ないですからね」
「ええ。ですので、こうしてお出迎えしておりました」
なるほど。既に話はまとまっているということね。
参加国が2国に1宗教だけというのが早い理由ね、大陸全体を考える状態ではないから、その分は楽なのかしら? それとも後回しになっているから今後が大変になるのかしら?
そんなことを考えている間に私たちは新大陸用の会議室へと入って行く。
中ではハイデン王、フィンダール王、そしてハイレ大司教は身を寄せて座っていた。
なんでそんな表現になったかというと……別に各大陸に合わせて会議室を用意したのではないので、最大10国が会議できるぐらいの広さはあるので、3か国しか参加していないから、ガランとしているのだ。
その中で、会議がしやすくと考えると、3か国が身を寄せて座った方が話やすいので、余計に広く感じるわけね。
「ユキ殿、よく来てくれた。寂しい会議室だがな」
「うむ。流石に会議が終わって退屈していた。もっと参加国を増やさねばな」
「まあ、今は仕方ないですけれど」
この会議室の寂しさは使用している方も感じているらしく、王だけでなく、後方に控えている要人たちもウンウンと頷いていた。
まあ、一応150人は収容できる会議室で、埋まっているのは、僅か45席ぐらいだからね。
一国当たり15名の参加、座るスペースを用意しているので、寂しい限りね。
いつかは新大陸もこの席が埋まることを期待しましょう。
「カグラやスタシア殿下から話は聞きました。既に会議が終わっていると。一応、聞いておきますが、何かご要望や問題などは有りませんか?」
私がそんな感想を抱いている間に、ユキはさっさと話を進める。
大陸間交流大会議までもうすぐなのだから仕方ないわよね。
今までの流れは、開会式、会議開催宣言、現状の各大陸の説明会、各国会議での調整、各大陸会議、そしてその確認で回っている私たち、で、この後ようやく、大陸間交流大会議が始まるのよね。
大陸間交流会議を開催すれば終わりと思っていた私の頭の中がどれだけ幸せだったか思い知ったわ。
ま、だからこそユキが頼りになるってわかるんだけど。うん、流石私のユキよね。
「いや、特にこれと言って問題は無い」
「この資料の通りに進められればありがたい。今後、シーサイフォ王国との件も片付けば色々話も進むだろうが、今はこれが限界だな」
「ええ。色々備えなければいけないこともありますし、ロガリ、イフ大陸の国々とは違ってまだ私たちの大陸は混乱の兆しがありますから」
確かに、エノル大司教の言う通り、未だに新大陸はまとまっておらず、問題を抱えているからね。
そう言う意味でもまだ新大陸の各国は本格的に交易に臨むわけにはいかないのよね。
何かあれば、其方に物資をもっていかれるから、資料通りに物資がでて行く方がありがたいわよね。
「分かりました、新大陸の方は資料通りということで、なにか特別に配慮してほしいことなどは?」
「アクエノキやシーサイフォ王国と戦争になった際の援軍だな」
「ああ。まずはそこを明らかにしてほしい」
「はい。それが我らの国の安全保障となりますから」
「わかりました。その話は当初の予定通り話すつもりでしたのでお任せください」
新大陸の国々にとっては、この大陸間交流同盟を使った防衛戦力の確約が欲しいのよね。
未だに各国の動きが分からない。というかアクエノキのおかげで散々国を荒らされたからね。
まあ、そんな感じで、各大陸の様子を聞いて回って、ようやく大陸間会議が始まるのであった。
やはりイフ大陸の方は結構野心ありともいえるけど、自国のためを思えばやっぱりはずせないことでもある。
だが、それでもローデイ王ほど非常識じゃないらしい。
で、意外に新大陸は大人しい。
まあ、まだまだ混乱するかもしれないって言い不安もあるからね。
こうして、最後の確認が終わったのでした。
そしていよいよ、大陸間交流会議の始まり始まり。
とはいえ、予定通りの話をして、サインするのが主な会議だけどねー。
演出として必要ってこと。




