第754堀:大陸間交流宣言
大陸間交流宣言
Side:ユキ
「ねえ。リテアの連中が出て行ったけど、大丈夫なの?」
「別に遠くに行ったわけじゃない。入場口でバカが騒いだようで、そこのお手伝いに行ってもらったわけだ」
俺とセラリアは控室でそんなことを話していた。
まあ、心配になるのはわかる。
ロガリ大陸の大国の一つが急遽出て行ったんだからな。
この場でドタキャンでもされれば、こっちの面目もつぶれるってもんだ。
国民の不信も高まるだろう。
「バカって、その対応は私たちがするものでしょう?」
「それがリテアの傘下の国の貴族と名乗って押してきてな」
「はぁー。それで、アルシュテールが出て行ったのね」
「そういうこと。こっちで勝手に処理することもできるが、後々変な問題にされないためにも、当事者を向かわせた方がいいからな」
「ついでに、アルシュテール、リテアの面々は面目もあるから、どうにかするってわけね」
「だな。名前を使われて、他国で暴れているバカがいるんだからな。早急に調べて手を打たないと問題になる」
国とかあると色々立場の維持のために大変だよなー。
俺も、こんな面倒から早く解放されたいわ。
と、そんなことを話している間も、大陸間交流大会議開催式は続いている。
目の前では、ゴブリン軍楽隊が初っ端の前座を務めている。
いやー、適当とは言わないが、そこまで本気で作った軍楽隊ではないが、しっかりと音楽になっているのが驚きである。
人も魔物もおもちゃとはいわないが、そういうのを与えれば、勝手に成長するんだなと改めて実感した。
俺は音楽はギターが少しと、カスタネット叩くぐらいだぞ。
「意外と見栄えするものね。軍楽隊も。私たちの方でもやってみようかしら」
「まあ、悪いことではないと思うが、楽器を持ったからってできる物でもないからなー」
「それはそうね」
「というか、こっちの世界の楽器って何があるかさっぱりなんだが?」
「そうねぇ……。私もそこまで詳しくないんだけどギターを小さくしたような、リュートや、木製の笛ってところかしら?」
「弦楽器と管楽器ってところか。金管楽器もあるかもな」
「トランペットとかは、あそこで使っているものにはちょっと質は劣るけど、見たことはあるわね」
楽器の歴史は地球でもかなり古い。
そういう楽器があっても不思議じゃないだろう。
「ま、今回のことで、こういう演奏も国力を示すものの一つって認識されたわね」
「あー、そうだろうな」
俺たちの目の前にある各国のモニターでは、驚いてまじまじとゴブリン軍楽隊を見ているところが多い。
「もともとああいう、軍楽隊はしっかり統率が取れていないとできる物じゃないからな」
「そうね。それが各国にもわかったんでしょう」
行進を乱さずに音楽を鳴らし、仲間と合わせる。
これが超難しい。
どれだけ、ゴブリン軍楽隊が頑張っているのかは、各国のお偉いさんになればなるほどわかるだろう。
俺もここまでのパフォーマンスをするとは思ってないから、びっくりだよ。
スティーブが「軍楽隊の連中が前座を務めたいって言ってるんすけど、いいっすかね?」って言われて、許可したのだ。
いや、普通に立って楽譜読んで吹くのは見ていたから問題ないとは思っていたが、まさか行進しながらやるとはおそるべしゴブリン。
我が国で一番多才な種族かもしれん。
とはいえ、前座は前座。
『素晴らしい演奏でした。ゴブリン軍楽隊のみんなに、皆さま拍手をお願いいたします』
わー!! パチパチパチ……。
エリスのアナウンスと共に、会場がスタンディングオベーションとなる。
いや、盛り上げすぎじゃね?
後でスティーブに釘さしておこう。やりすぎ。
「やりすぎね。これから私の挨拶だってのに……」
ここから挨拶を始めるセラリアにとってはさらなるプレッシャーになるだろう。
「まあ、今更言っても仕方ないわね。会場は盛り上がっているし、各国の王たちも驚いているし、いいことだと思いましょう」
「だな。フォローは任せとけ」
「ええ。お願いするわ」
そういうことで、俺たちは、控室から出ていよいよ開催宣言をして、各国の紹介を始めることになる。
『では、これより、大陸間交流大会議開催に伴い。開催国であるウィードの女王陛下セラリア様より、お言葉を頂きます』
エリスのアナウンスにより、俺たちは大会議場の中央へと歩いて行き真ん中に置いてある無駄に豪華な彫刻が施された白い演説台の前にたどり着く。
「女王陛下。後は任せます」
「後でこの頑張りのご褒美はもらうからね」
そう言って、俺は後ろに少し下がり、セラリアは演説台の横にたち、ゆっくりだが、ぐるっとその場で回り、この場に集まっている観客を見回して、演説台の前に立つ。
『あー、うん。マイクは良いようね。みんな聞こえてる? 聞こえていたら手を振って頂戴』
セラリアがそう言うと観客が一気に湧いて、そこら中から手を振ってくれる。
それをちゃんと確かめるように、もう一度ぐるっと回る。
『聞こえているようね。じゃあ、そろそろ始めさせてもらうわ。みんな静かにお願いするわ』
セラリアのその一言で湧いていた観客たちは一瞬で静まり返る。
やはりというか、こういうのは為政者の凄い所だよな。
セラリアの王族としての気品や立ち居振る舞いがあってこその業だろう。
『長い。といっていいのかはわからないわ。このウィードが出来てもう5年近く。いや、まだ5年というべきなのか。それは私には判断が付かないわ。でも、確かにわかっていることがある。今、今日この場があるのは、ウィードの、いや、各国の、多くの人の後押しがあってのこと。決して、私一人の力で成しえたことではないわ。まずは、この場、この放送を聞いている全ての人に感謝を。みんな、ありがとう』
セラリアがそうお礼を言う。
女王がこうして、国民にお礼を言うことはなかなかない。
国のトップの言葉は安いモノではないからな。
簡単にお礼や頭を下げると色々問題になる。
だが、この場でそんなことを言うやつはいない。
なにせ……。
『そして、今、この時より、大陸間交流大会議の開催を宣言する!!』
そう。今から始まるのは、大陸間交流大会議。
その時、歴史は動いたというやつだ。
裏では色々あったが、それでも、小競り合いをやめた各大陸の国々が一堂に会するこの場は、歴史的瞬間である。
地球でいう主要国首脳会議、サミットの初開催だ。
セラリアに文句をつけるということは、このサミットに参加している国々への敵対を意味する。
そして。この宣言により、ウィード全体が震えることになる。
ワァァァァーーーー!!
大喝采。
祭りの始まりであり、署名はまだだが、この大陸間交流大会議の開催宣言こそが、平和の始まりだと思っている人は多いだろう。
今この場に来て、署名しなければ各国の要人だけでなく、この場にいる人すべてに伝わるからな。感情最悪だろう。
まあ、ある意味それをやってくれる根性持ちがいるのなら、見てみたいという気持ちもあるけどな。
ちなみに俺にはそんな空気をよめないことはできない。
ほら、俺って空気よむじゃん?
『ありがとう。でも、喜ぶのはまだ早いわよ? これから、この大会議に開催するにあたって、新しい報告もあるからね』
観客たちはセラリアの言葉に首を傾げる。
不安に思うような顔つきもちらほらとある。
まあ、わかっている連中もいるようだが。
『ああ、心配しなくてもいいわ。悪い話じゃないわ。今回、この大陸間交流大会議に参加する大陸は、当初、この大地、ロガリ大陸。そして、ダンジョンの向こう側、海の向こう側である、イフ大陸だけだった。しかし、もう一つ大陸が見つかったの』
セラリアが簡単に重大な事実を告げる。
おかげで観客は新たな事態についていけていない。
まあ、ほかの大陸がさらに見つかったとか言われても実感わかないよな。
『そして、その大陸からも、今回の大陸間交流大会議に急遽参加してくれた国があるわ』
ざわっ……。
そして、さらなる驚きの事実。
新しい大陸を見つけただけでなく、その大陸に存在する国がさっそくこの大陸間交流大会議に参加するというのは、驚愕モノだろう。
『紹介するわ。新大陸の国家、ハイデン王国、フィンダール帝国、そしてその大陸の祈り、癒しをもたらすハイレ教会よ』
セラリアのその言葉で、新大陸の2か国と教会が横一列で並んで会場に入ってくる。
どこの国が最初に入場とかで揉めるのは面倒なんで、横一列ということになっている。
もちろん、各国の王だけではなく、カグラたち、そして護衛の近衛兵は正装にフル装備だ。
そこで思ったが、一番後ろにいる、旗持ちの人は大変やな。偉丈夫が担当して持っているが、ずっと持っているのは大変だろう。
いや、旗持ちは大変名誉なことではあるけどな……。
まあ、さっさとセラリアが話を進めてくれることを祈ろう。
と、そこはいいが、やはりというか、まあ見るからに異国ものというわけでもないので、観客は半信半疑のようだ。
そこらへんは想定済みというか、今後交流して認知してもらうしかないだろう。
『では、新大陸の同盟者たちよ。あちらに旗を』
セラリアも旗持ちのことを考慮したのか、先に旗を収めることにしたようだ。
まずは、各国の挨拶からだったのだが、流石にまずいよな。
ということで、新大陸のメンバーは横一列に旗立てのところに並び、同時に旗を立てる。
これが、大陸間交流に参加しているという証でもあるからな。
この旗を守るというのも、俺たちの大事な仕事となる。
とまあ、こんな感じで、旗を立てたあと、各国から参加の宣誓の言葉とサインをもらうという流れになるわけだ。
これが、えーと新大陸が3回、イフ大陸が6回、ロガリ大陸が5回なので、計14回あるわけだ。
まあ、長いよな。
でもなー、これでもずいぶん簡略化したんだよな。
本来であれば、各国の実力を示すためのパフォーマンスもやるべきなのだが、そんなことをしていては、会議に進めないので、そういうパフォーマンス系はまたの機会ということで、今回は国民というか、同盟国中にどの国が大陸間交流に参加しているのかを示すということ優先させてもらったわけだ。
そして、14回の同じ行動の果てに今回の大陸間交流参加国の旗が会議場に翻り、最後に開催国となった我がウィードの旗が、刺さる順番となる。
『そして、最後は大国とは違うけど。我がウィードが参加の署名を書かせてもらいます』
そう言って、セラリアが大陸間交流参加宣誓書に署名し、旗を持ち……セラリアが歩いて、最後の場所にスッと旗を挿し、ウィードの旗が翻る。
『この時より!! 大陸間同盟は成った!! 平和が成った!! 今この場にいる、皆が証人である!! ありがとう!!』
ワァァァァーーーー!!
再び大喝采、セラリアの宣言で今日この時より、大陸間交流、同盟が成ったのである。
「いい加減、目的を忘れそうだけどな……。というか、普通ならここで物語おわりじゃね?」
『あっはっはっは。そんな普通の物語じゃないわよ。ま、これからが本番よ。頑張りなさい』
ちっ、めでたい記念すべき日に俺は悪魔の囁きを聞いてしまうのであった……。
まだまだ、俺の話は続くらしい。
そして、伝説がはじ……。
これは、有名RPGすぎるな。
そこまでの歴史はないけど、この世界においてはとても大事なことです。
ここまで長かった。
だが、物語は続いていくのがこのお話です。




