第753堀:入場口の騒ぎ
※えー、前回、ユキが会議場に到着した際に、アスリンたちも一緒の描写がございましたが、別行動だったので、こちらで書いております。前回の方は修正しておりますので、ご安心ください。皆様にはご迷惑をおかけいたします。
入場口の騒ぎ
Side:ラビリス
「さて、これでここのゴミの回収おわりね。っと?」
ゴミ回収をしていると、私は不意に変な感覚に襲われる。
なんか、ユキが好きだという感情が感じられるのだ。
具体的にいうと、もう好きで好きでたまらないという感覚。
「どーしたの、ラビリスちゃん?」
「なにかあったのです?」
私が動きを止めたのが気になったのか、直ぐに声をかけてくるアスリンとフィーリア。
「いえ、いつものあれよ」
「あれ? ああー、あれかー」
「兄様は素敵な男性なので仕方がないのです」
2人には、というかユキの奥さんたちには私のこの能力を伝えている。
所謂、ユキの味方センサーだ。
ルナに話を聞く限り……。
『へー、人の特定の感情を読み取れるようになったわけね。恐らくだけど、ラビリスのスキルが昇華した。つまりレベルアップしたんでしょうね。まあ、ユキのことに関してだから、そこまで好きか? って疑問に思うけどね』
と、失礼なことを言っていたが、つまるところ、ユキを愛した結果の力だということ。
しかしながら、アスリンたちの感情は流れてこないのが不思議なのよね。
まあそれだときっと四六時中聞こえてくるだろうから、カットしているのかもしれないということになった。
まあ、この力を知ったのは新大陸、カグラとミコスのことからだ。
余りにもあれだったので、セラリアたちに相談したのが始まりだ。
というか、徐々に分かり易くなって、最後には納得の力だった。
どう見ても、カグラたちはユキが大好きになっていたし。
とはいえ、まだ力を制御できているわけじゃないし、判断が付くまでに時間がかかるのよね。
距離が遠いとか近いとか関係ないからさらに判断しにくいのよね。
「ま、きっと。ユキが今、大会議場で頑張っているから、それを見て惚れた子でもいるのでしょうね」
「きっとそうだよー」
「そうなのです。だから、確かめるためにもフィーリアたちも早くごみ回収を終えて、兄様のお手伝いにいくのです」
「そうね。そういう子はユキを助けてくれるはずだから、見つけたいわね」
そう、カグラとミコスのことがあり、この力は有用な人材を見つける手段の一つ?となっている感じだ。
新大陸の新たな問題も浮上してきて、本当に人手が足らないから、どうにか補充は欲しいところなのよ。
そんなことを話していると、ごみ収集車を運転しているヴィリアがやってくる。
「ラビリス、アスリン、フィーリア、ごみを入れてください」
「はーい」
アスリンは素直に返事をしてごみ収集車へごみを入れ行く。
「ヴィリアが羨ましいのです。フィーリアも運転したいのです」
「いや、フィーリアは無理でしょう。手足が届かないじゃない」
「むー。ドワーフはこういうところが駄目なのです」
「大丈夫。運転はヴィリお姉と、ドレお姉に任せればいい」
私も小さいままだから、運転はできないのよねー。
いや、ユキ曰く、軽自動車とかならいけるんじゃとは言われたけど、こういう大型に乗れないと役に立たないわよね。
自分の趣味で運転することはないし、ユキの隣に座ってのドライブは好きだけどね。
と、そんなことはいいとして、私たちもごみをぽいぽいゴミ収集車に投げ入れていく。
最初はゴミをアイテムボックスにという話があったのだけど、他の食べ物とか、洋服も入っているのに、それはなしということになった。
当然よね。以前も同じような話はでたけど、衛生上よろしくないわ。
そもそも、他の子供たちはアイテムボックスやその手のマジックアイテムを持っていないのだから、ゴミ収集車というわけ。
「でも、よくヴィリアとかドレッサは運転できるわね。確か車の免許はウィードでは結構厳しいはずだけど?」
一応、車はウィードの公共施設に限り配備してある。
ゲートだけでは移動に不便なため、バスなどを使っているからだ。
しかしながら車は走る凶器にもなりえるので、未だつたないウィードの住人たちに、乗用車としての販売はしていないのだ。
なので運転免許の取得はウィードの国家資格である。
厳しい試験をクリアして取得できるもので、私たちユキの奥さんですら、全員は持っていない。
条件はみんな同じということで、結構凄い資格になっている。
私やアスリン、フィーリアも一応筆記試験はクリアしたが、実技の問題で軽自動車のみとなったのよね。
いや、身長の問題だけど。
ということで、最初からユキから色々教えてもらった私たちならともかく、たいして教えてもらっていないというのはあれだけど、時間が少なかったヴィリアとドレッサが免許をとれているのだが驚きなのよね。
「それはもう頑張りましたから。お兄様の役に立つのであれば何でも習得してみせます」
「私は、ゴミ収集車は一度仕事で見かけてたから、運転してみたかったのよね。ま、ユキの為ってのも、無きにしも非ずだけど……」
なんというか、どちらも納得の理由だった。
そして、相変わらずドレッサは素直になれないわね。
いい加減、カグラたちに追い越されそうだけど。
「すごいねー。ヴィリアちゃん、ドレッサちゃん」
「凄いのです」
「お兄様の為なら当然のことです」
「ま、これぐらい簡単よ」
「……どうでもいいけど、お仕事終わったんなら、お兄の所に行きたい」
「「「直ぐに行こう」」」
ヒイロの一言で雑談は終わって、私たちは迅速に即座にゴミを捨てて、仕事完了をギルドに伝えて、お風呂に入って着替えて、大会議場を目指したんだけど……。
ざわざわ、がやがや……。
大会議場の前では人がごった返していた。
「すごく人が多いねー」
「お祭りの時みたいなのです」
「実際、出店がでていますから、お祭りみたいなものですね」
「私たちも設営手伝ったしね」
「そう。食べ物屋さんたくさんでてる」
「まあ、今回の大陸間交流大会議開催は、歴史に残るものでしょうからね。そりゃ、お祭りみたいになるわよ」
それを想定して、ユキや私たちは大会議場の周囲を広く場所は取ったつもりなんだけど、それでも人が多いわね。
今回はロガリ大陸だけの観光客しかいないはずなんだけど。
これで、ほかの大陸の観光客も来るとなると、ぞっとするわね。
「さて、ここで驚いていても仕方ないわ。さっさと会議場の方へ行きましょう。それとも何か買う?」
「いえ、別に飲み物とか、軽食は持ってきて来ますし、会議場に行きましょう」
「そうね。今から出店で買い物してたら、会議が終わっちゃうわ」
そういうことで、私たちは人混みを抜けて会議場の前へとやってきたんだけど、そこも多くの人でごったがえしていた。
「あー、通常入場口だね。チケットはもう売り切れみたい」
「仕方ないのです。大会議場とはいえ、全員が入れるわけがないのです」
「でも、1万人は入れる場所だったはずですが……」
「ウィードの総人口の約3分の1は入れるはずよね?」
「観光客も来てるからね。それであぶれたんでしょう」
「私たちは優先入場口から行けばいい。お兄とお姉を見る」
チケットが買えない人はかわいそうだとは思うけど、すでに開会式が始まる11時に差し掛かろうとしている。
それから考えると、ここで騒いでいる人たちは、出遅れたというやつだ。
チケットのことを知らなかったのかもしれないけど、告知はしているし、ある意味自業自得だ。
そう思いつつ、私たちが優先入場口の方へ歩いていくと……。
「待て!! あの小汚い子供を通せて、私たちをなぜ通せない!!」
なぜか、そんな声が私たちに向けて聞こえてきた。
足を止めて振り返ると、そこには貴族らしい男と供回りがこちらをにらみながら、入場受付の女性に対して怒鳴っていた。
「あちらは優先入場ですから。そういうチケットを持っているんです」
「なら、私もそちらで通したまえ!!」
「無理ですよー。あの子たちはちゃんと事前に調べてチケットを持っていた。しかし、お客様はそれがない。ルールは守ってもらわないと」
貴族相手なのだが、受付の女性は動じる様子が……って、あの女性は……。
「あ、キナさんだ」
「ギルドで見かけないと思いましたが、こちらにいたんですね」
「というか、よく見たら、入場ゲートの受付、ほぼ冒険者ギルドの受付嬢と、クアルの部下ばかりよ」
「あー、なんかそういうこと言ってたのです。脅されてもきちんと対応できる人がいいって」
そういえば、言ってたわね。
どこにもああいうバカはいるのね。
というか、このバカな貴族以外は、後ろに並んでいない。
つまり、この人混みの原因は、あのバカを遠巻きから見ていることが原因ね。
はぁ、ここはこのダンジョンマスターとしてしっかり対応しないといけないわね。
「皆。面倒だけど、少し付き合って」
「いいよー」
「仕方ないのです。これもフィーリアたちのお仕事なのです」
「ええ。ウィードの秩序を乱すことは許されません」
「そうね。ガツンと言ってやりましょう」
「お兄の邪魔する馬鹿は許さない」
全会一致でまずは馬鹿の対処をすることになり、その男に近寄って行くと……。
「分からない女だな。私はロガリ大陸内、最大国家であるリテア聖国傘下の……」
「あー、はいはい。どこのどちらさまでも、たとえ王族であろうが、王様ご本人であろうが、チケットが無い限りは中に入れることはできません。というか、リテア聖国傘下の貴族様たちなら、既に貴賓専用口から入っているはずですが?」
「そ、それは、私が諸事情で遅れたからだ」
苦しいいいわけね。
「そんな報告を受けておりませんし、万が一そうだとしてもチケットの話や、貴賓専用口を知らないというのはおかしいですねー」
「ええい!! お前は黙って通せばいいのだ。もうよい!! 勝手に通る!!」
果てには強引に突破する宣言。
横に付く騎士たちも馬鹿貴族を補佐するように前に出る。
「こら、そこのおバカ。止まりなさい」
キナや警備のみんなも前に出るが、その前に私が声をかける。
「誰が馬鹿だ!!」
直ぐに馬鹿は反応して、私をにらみつける。
馬鹿だという自覚はあるようね。
「あなたよ。そこの恥知らずなおじさま」
「小娘が、誰に向かって口をきいているのか分かっているのか?」
「ええ。おバカなおじさまにお話をしているわね。ルールがあるのにそれを無理に通せと言っている人がおバカでないと思うかしら?」
「きさまっ……。と、ん? そう言えば、小娘、優先入場のチケットを持っていたな? それを渡せば、このことは不問にしてやろう。どうだ?」
……馬鹿はどこまでも馬鹿のようね。
様子を見ているキナたちもあーあー、って顔しているもの。
「お断りするわ。私たちだって、ちゃんと頑張って手に入れたんだもの」
普通に並んで買ったわけではないが、これは私たちがユキやウィードの為に頑張って得たものだ。
頑張って手に入れたものには間違いない。
それを、このバカ貴族に渡すつもりなどない。
「きさまー!! この記念すべき大陸間交流大会議に参加する名誉がどれほどのものか、頭の足りぬお前たちにはわかるまい!! 宝の持ち腐れというのだ!! えーい、奪い取れ!!」
「「「はっ」」」
そう言って、バカ共の部下がチケットを奪おうと向かってくるが……。
「えーと、なんだっけ? ふじょぼうこう?になるんだよね?」
「そうなのです。あと、強盗未遂なのです」
「現行犯ですね。キナさん後はお任せいたしますね」
「はっ、これで騎士とは笑わせるわ」
この程度の連中に、私たちが後れを取るわけもない。
あっという間に警備や冒険者たちに取り押さえられるおバカ貴族。
「お、お前たち!! 私はリテア聖国傘下の……」
未だにそう叫ぶおバカに止めがやってくる。
「いえ。私は貴方のような貴族は知りませんが?」
「だれが、お前のような小娘が……」
そう吠えておバカが振り向いた先には、リテアの聖女様であるアルシュテールが貴族や大臣などを引き連れて立っていた。
ま、私が知らせたんだけどね。
リテア聖国傘下の貴族と名乗る者が入場口で騒いでいるから、何かしらないか? ってね。
「小娘ですが、これでもリテア聖国聖女のアルシュテールと申します。で、貴方はどちらの国の貴族殿で? 大臣見覚えは?」
「いいえ。存じませんな。お名前をお聞かせいただけますかな?」
「あ、いや、その……」
まさか、本物の聖女様が来るとは思わなかったのだろう。どんどん顔色が悪くなってくる。
「わ、わざわざ、聖女様に名乗るほどのものでは……」
「いえ、是非お聞かせください。我がリテア聖国傘下という言葉で、無理に会場に押し入ろうとしたというのは、リテアにとって大変不名誉、この記念すべき会議を汚すことになりますわ」
そう、この男の言動は、リテアにとって非常に不味いものだ。
各国の前で、こんな馬鹿が部下にいるのだと宣言しているようなものだからね。
「ど、どうか、お許しを、まだ未遂ですし……」
「どこが未遂ですか。この開催地ウィードのダンジョンマスターに対し、失態どころではなく、襲い掛かったなど、今すぐ打ち首になってもおかしくありませんわ」
「は? ダンジョンマスター? あんな子供が?」
「……それすらも知らないとは、ラビリス様。大変失礼をいたしました。この者はちゃんと調べ、今後こういうことが二度と無いように対処いたします」
「ええ。よろしくお願いいたしますわ。しかし、今は大会議を優先してくださいませ。この者は私たちの所でお預かりしておきますので」
「はい。助かります」
ということで、バカな貴族はこうして連行されるのだった。
「さ、ユキに会いに行きましょう」
「うん。お兄ちゃんのお手伝いするぞー」
「兄様を助けるのです!!」
そして、時刻は11時をちょっと過ぎてしまったが、まだ間に合うわよね?と思っていると……。
『これより、第一回大陸間交流大会議開催式を始めます』
ウィード全体にそう放送が響く。
「いよいよね」
私たちの夢がまた一つ叶う時が来た。
ということで、お約束の偉そうな貴族の人はこうして撃退。
そして、大陸間交流開催まであと少し。
トラブルは何も起こらずに無事に開催できるのか?




