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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第752堀:未来の為に 色々な意味で

未来の為に 色々な意味で



Side:エージル



何度乗ってもこの車という乗り物は便利だと思う。

いや、乗るたびにより強く、凄く便利なものだと実感する。

馬車なんかよりも乗れる人数も多く、揺れも少ない。

何より、馬車なんかよりも圧倒的に速く、そして馬の様に疲れたりしない。

そんな風に改めて感心していると、隣の席からも感動の声が聞こえる。


「うわー!! やっぱりすごいですねー!!」

「ああ、凄いな!! 何度乗ってもいいものだとわかるわ。私も一台欲しいわね」


そう言う感じではしゃいでるのは、聖剣使いのライトと、我が同僚のプリズムだ。

で、そんな楽しそうな話が聞こえたと思ったら、今度は……。


「やはり、ユキ殿。ここは、我が国も血縁者の件を押して友好を深めるべきか」

「そうでございますな。ここまでの技術力、国力を有しているウィードと縁を深めるというのは、我が国にとっては有益です。他の国もそれを行っております。ジルバは女騎士、ローデイは公爵令嬢、アグウストは宮廷魔術師の娘、内2人は王家の養子となっており、姫君という立場を与えておりますな」


後ろから陛下と大臣の陰鬱な話し声が聞こえてくる。


「確かにな。アグウストとローデイはあからさまな手に出てきたものだ。しかし、ジルバが女騎士で済ませているのも不思議だが、いずれにしても私たちが出遅れていることには変わりないな」

「そうですね。ユキ殿がエナーリアに来られた時は、あの魔物襲撃事件で活躍した聖女ルルア殿と仲が良いといわれて、利用できないかと思っていましたが……」


ルルア殿は最初からユキの奥さんだよ。残念。

というか、エナーリアの生まれでもないし、ロガリ大陸の5大国の1つリテア聖国の元聖女様だよ。

国レベルとしては同等か、それ以上の大物だからね。


「まさか、他国の元聖女とはな」

「まあ、ある意味納得できる実力でしたな。流石は聖女を名乗っていただけのことはあります」

「ふむ。まあ、いない者を惜しんでも仕方あるまい。新たなる手段を選べばいいのだ」

「となると、ユキ殿に新しい女性を宛がうことですが……。なかなか難しいですな」

「すでに周りには各国の有力なモノばかり。下手な女性を宛がえば周りの反感を買ってしまうからな」

「となると、すでに交流があるものがそのままというのが、反発が少ないでしょうが……」

「とはいえ、エージル将軍はなぁ……」

「一応命令しているとはいえ、体形が……」


……そろそろ謀反しても許されるんじゃないかーとか思ったり思わなかったり。

基本的には自分の体形のこと言われても気にしないけどさ、ここで言われるとイラっとするよねー?

というか、わざと聞こえるように言ってるから、殺してくれっていってるのかな? やるか?

いや、待てよ? ユキとは仲がいいし、亡命ぐらいさせてくれるような気がする。

やっぱりやるか? やっちゃうか?


「落ち着いて。エージル」

「そうですよ。エージル将軍」

「別に、僕は落ち着いているよ。というか、君たちは、はしゃぎっぷりがいきなり収まったね?」

「会議場が見えてくればそうなるわよ」

「はい。大きいですね」

「ん? ああ、まあそこまで離れていないからね」


目と鼻の先とは言わないが、徒歩で30分かからない位置にある。

何かあって徒歩になったときもそこまで時間がかからないように、ということを考えたホテルだとユキが言っていた。


「大会議まであと少し。各国の王や要人もそろっている中で、エナーリアが刀傷沙汰を起こしたらどうなるか」

「とんでもないことになりますよ」

「はっ。自殺志願をした連中は無視かな?」

「陛下や大臣も悪気があったわけじゃないわ」

「色々政治の事情があるみたいですし」

「それはわかっているけど、ここまであからさまにいわれるとねー」


と、そんなことを話しているうちにバスが停車して、ドアが開く。

ちっ、やり損ねたか。

そう思いながら、僕は外交官として真っ先に下りていくとそこには、ユキが私たちの迎えで立っていた。


「ようこそ。エージル将軍」

「本日はよろしくお願いいたします」


怒りを抑えつつ、外交官としての仕事を果たす。

亡命するにしても、確かに、今この場をぶち壊せば、ウィードに逃げることはできないだろう。


「……なんか疲れているか?」


相変わらず察しのいい男だね。


「ま、色々あるんだよ」

「そうか、俺にできることがあれば言えよ。カグラの方も色々風当たりが強くてな」

「ああ、彼女たちもか。いや、まあ、ある意味当然の話か」


若いカグラ君たちには汚い大人が群がることだろう。

精神的に折れないといいが。


「あ、そうだ。それなら、僕を愛人にでもしてくれよ」


それで万事解決。

まあ、断られるだろうけど……。


「愛人はいらんが、エージルなら欲しいな」

「は?」


今なんか、意外な言葉が聞こえてきた気がする。


「ちょ、ちょっと……」

「詳しい話は後でだ。まあ、仕事も含むが、エージルのことを信頼しているのが一番だな」

「……まあ、わかったよ。仕事って言うなら多少は納得しておく」


仕事の関係だけなら納得だ。

今の彼は山ほど仕事を抱えている。

それを処理できる有能な人材が欲しいだろうね。

だが、信頼している、か。

まあ、当然の話ではある。彼の仕事は本当にとんでもないことが多い。

新大陸のことはもちろん、それ以外にも沢山秘密があるんだろう。

それを共有して支えてくれる人材が欲しいってことなんだろうな。


だからこそ、愛人は嫌なんだろうね。

彼の性格もあるだろうが、役に立たない者を抱える余裕はないというのもある。

その条件に僕が当てはまったということだろう。

くく、信頼しているか。これは転職にはもってこいか?

ん? でも待てよ? 愛人は否定して、能力が欲しいではなく、エージルが欲しいといったよね?

……あれ? つまりはそういうことかい?


「……ル。エージル!!」

「はっ!?」


気が付けばすっかり考え込んでいたようで、プリズムにゆすられていた。


「あんた、ユキ様や陛下たちを放って何ボーっとしているのよ」

「ん? ああ、ちょっとユキ様から大事な話をされてね。検討していたんだよ」

「なにかトラブル?」

「新大陸関連かな?」

「ああ、そういえば、エージルはユキ様の求めに応じて新大陸に向かったんだったわね。魔術がとても達者な国があるって話だったかしら?」

「そうそう。ま、それで追加情報だよ。ほら、それを証拠にユキ様は特に私に不満を言うことなく、陛下たちの相手をしているだろう?」

「というか、エージルがとても役に立っていますって言っているわよ」


それほどまでに僕が必要なわけか。

これで僕が陛下たちに疎まれることはとりあえずないか。

ユキとの交渉には必要だと思うからね。


「ま、僕はエナーリアの為に頑張っているからね。こうした評価を貰えるわけさ」

「あんたがねー。普段は研究ばっかりだから、こんな珍しいモノがあるウィードにきたらずっと研究機関にでも籠ってるかと思ったんだけど……」


流石は長年の友であるプリズム。よく僕のことを分かっている。

来た当初は無論入り浸ったさ。

だが、僕はフィールドワークタイプの研究者でもあるから、外も出るんだよ。

ふふん。と威張りつつ、ユキの言葉を考えると、僕はこのまま他のお嫁さんたちと同様に、エナーリアの繋ぎをしつつ、ウィードの、ユキを支えろってことか。

ちゃんと女性として扱ってもらって。


ふむ。冷静に考えてみると、悪くはない。

というか、そうなれば普通にウィードで永住決定、しかもユキの側近ならパラダイスだね。

よし、転職決定だ。

まあ、名目上はエナーリアの外交官ということにはなるだろうけどね。


「なにいきなり嬉しそうにしているのよ? さっきまでは、陛下たちの言葉を聞いて不機嫌だったくせに」

「いやー。バスから降りて、愚痴から解放されたからね。これからウィードとの交流が始まると楽しくなるなーと思って笑っていたよ」


咄嗟にそれらしい嘘をつく。

流石に、プリズムにあばよ行き遅れ。僕は結婚するよ。とかいうと殺されるだろうからね。

こんな体形でも、それなりに女の幸せというのには興味があるのさ。

今までの環境ではないと思っていただけでね。

と、落ち着こう。

まだ、ユキから決定的な言葉を貰ったわけじゃないんだ。

この会議で失態をすればなしになる可能性もある。


「よし、気合いを入れるか!!」

「うわっ!? いきなりどうしたのよ」

「ど、どうしたんですか?」

「ん。いや、気合いを入れただけだよ。というか、イフ大陸の他の国の連中も降りてきたから挨拶にいくぞ。国を代表する魔剣使いに聖剣使いが顔出さなくてどうする」

「はぁ? ちょっと、まちなさい」

「エージル将軍!?」


そういうことで、まずはユキの奥さんたちへの印象をよくするのがいいだろうと踏んで、ほかのイフ大陸国の引率をしている外交官の奥さんたちへ挨拶をすることにする。

プリズムとライトがいれば魔剣使い挨拶という体裁もできるからね。


「やあやあ、マーリィ」

「ん? なんだ。エージルたちか」


ということで、さっそく声をかけたのはバトルジャンキーの風の剣姫といわれているマーリィ。

つまり、部下の……。


「エージル将軍。お疲れ様です。エナーリアはどうですか?」


そう言って近づいてくるのは、ユキの奥さんであるジェシカだ。

まあ、ほかは偉い貴族だったり、宮廷魔術師の子供だったりと、立場が一癖二癖あるからね。

先ずは同じ騎士のジェシカの方がいいだろうということで、ジルバ連中に話しかけてみた。

無論、マーリィがそこまで深く考えないだろうという打算もある。


「あれからは、王家と教会も仲がいいよ。不安は解消されたからね。そこのライトを立ててもらって助かったよ」

「何、あれで戦争が無くなるならいくらでもやるさ。ほかの国の連中も同じさ。なあ?」


マーリィがそう言って僕の後ろを見ていう。


「ええ。私たちとて戦いを望んでいるわけではないですから」

「もとより、私たちは、国民を守るために戦っていたのだからな。平和になることはこれ以上ない成果だ」

「ここまで来るのには随分長かったけどな」

「そうね。本当に長かった」


ローデイのドージュ、アグウストのラライナ、エクスのキシュア、ホワイトフォレストのカーヤと各国の魔剣使いがそろい踏みしていた。

そして、皆も今回の大陸間交流には賛成のようだ。

誰だって、好き好んで人を殺しているわけではないし、村や街を攻めているのではない。

色々な利害の関係でそうせざるを得なかっただけだ。

そして、キシュアやカーヤの言うように、ここまで来るのは長かった。

僕の人生どころか僕が生まれる遥か前から、この戦いの連鎖はあったからね。

イフ大陸の戦いの歴史が、ここで今幕を閉じるという意味でもあるんだ。この大陸間交流会議を開催するというのは。


「とはいえ、小国はいまだ、このイフ大陸連合及び、3大陸連合の結成には反対している連中がいるからな。気を抜きすぎて、戦死するなよ」

「マーリィに言われたくはありませんよ」

「まあまあ、プリズム将軍。この会議が成功したのに、死亡などと笑い話にもなりませんから、心配しているんでしょう」

「ドージュ将軍の言う通りだな。私たちが戦死すれば本当に笑い話にもならん。再び乱れる原因なるかもしれない」

「ま、気を引き締めて、またここで会おうって話だよな」

「はぁ、キシュアは相変わらずね。ともかく、軽率な行動はしないようにってことね。まだまだ、先は長いんだから」


カーヤの言う通り、まだ先は長い。

この会議が終われば全て済むわけじゃない。

僕たちが、いや、連合に参加している人々すべてが協力して明日を創っていかなくちゃいけない。

1人でやれることなんてたかが知れている。

だからこそ……。


「ジェシカ。これから世話になるかもしれないよ?」

「ええ。私としては歓迎しますよ。ま、周りにどう説明して納得してもらうかですが」


僕は自分の意思で彼を助けようと思う。

とはいえ、ジェシカの言う通り、プリズムとかにはなんて言うべきかね?

いや、理由は仕事でいいとして……、一番の問題はプリズムが1人行き遅れになることだよなぁ。

と、そんなことを悩み始めるのであった。







ここでエージルが転職を覚悟する。

まあ、エージルがどういうことになるかはまだ決めていない。

とはいえ、人材は欲しい。


悩むところだよね。



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