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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第718堀:元夫婦喧嘩と……

元夫婦喧嘩と……



Side:ファイデ



いずれ来るとは思っていたが、こうしてその時を迎えてみると、やっぱり嫌だな……。

そんなことを考えつつ、私は荒野に立っていた。


「……まあ、周りに被害がでないというのが救いか」


俺はそう言って、辺りを見回す。

ここは、命の気配が少ない荒野。

私がこんなところに来ることはめったにないのだが、ここはユキ殿に頼んで貸してもらった場所だ。


『喧嘩しても被害の少ない場所なら、演習場しかないよなー』


ということで、軍の演習場の一つを貸してもらったのだ。

リリーシュと話し合うために。

そう、私はリリーシュと話し合うためにこの場所を借りた。


「いやいや、私たちに被害がないように頼みたい」

「そうだな」


そう言って、私の後ろから話しかけるのは、ノゴーシュとノーブルだ。

万が一の時のために同行してくれた。


「私もそうしたいが、なかなか厳しそうだ」

「本当に、あのリリーシュと戦闘になると思っているのか?」

「私たちにはどうも想像ができない。リリーシュとお前はどちらも戦闘向きではないだろう?」


だろうな。

あのポヤポヤしたリリーシュが戦うとは思えないからな。

だが……。


「別にー、戦闘と呼べるようなものじゃー、ないですよー?」


そんな声が不意に聞こえ、私はすぐにその場を離れる。


ズドンッ!!


「うぉぉっ!?」

「な、なんだー!?」


巻き込まれて吹っ飛ぶ二人。


「ちょっ!? リリーシュ!!」

「何やってるんですか!! 話し合いでしょう!?」


そして、誰かの声により、その襲撃者の正体が判明する。


「……リリーシュ。いきなり、ご挨拶だな」

「あらー。よけなければ一撃で終わったのにー」


クレーターの真ん中にいたのは、いつものポヤポヤしたリリーシュだ。

違うところといえば、片腕を地面にめり込ませていることぐらいか。

全く、意見をたがえればすぐに拳がでるのは変わってないか。


「くぉら!! 話聞きなさいよ!!」

「リリーシュ、流石にこれはいけません」


そんなことを考えているうちに、ノノアとヒフィーがリリーシュへと詰めよる。


「いったいなんだ!! って、リリーシュがさっきのをやったのか?」

「……おそらくそうだな。いったいどういうつもりだ」


そして、巻き込まれて吹っ飛んだ二人も復帰して、現状を把握したようだ。

だが、そんな周りの言葉はリリーシュにはどうでもいいことのようで……。


「いいのよー。ファイデにはこのぐらいでー。あとー、あの二人は無事だから問題ないわよー。この程度でどうにかなるようならー、とうの昔に死んでるわー」


のほほんとそんなことを言い。


「そういう問題じゃないでしょう!!」

「国際問題ですよ!?」


ノノアとヒフィーがそう言って止めにかかるが……。


「問題ってー、二人とも変なこと言うのねー。これは、私とそこのバカの話し合いなだけよ? なんで、私が国際問題になんかにするの? それともー、あの二人はこの程度でどうにかなるような、へなちょこで、心が狭い、器も狭い、小さい男だからってことかしらー?」

「「この程度で文句を言うものか!!」」


男としてのプライドを突かれたノゴーシュとノーブルはつい反応をしてしまう。

これが意味するものは……。


「じゃ、なにもー問題ないですねー」

「「あっ!?」」


つまり、リリーシュの行動を黙認したということになる。


「いや、ちょっとまて、それとこれとは……」

「趣旨が違うだろう?」

「おやー、舌の根も乾かないうちに発言を撤回するのですかー? 小さい男だったんですねー。それとも、この私のような、か弱い女性にそこのバカがぼこぼこにされると思っているんですかー?」

「「……」」

「んー? どうしたんですかー?」


とりあえず、反論をしてくれるが、何を言っても藪蛇でしかない状態になってしまった。


「まて、リリーシュ。その2人は俺たちを心配してきてくれたんだ。そんなことを言うんじゃない。わかってるだろう? というか、誰だってこのクレーターを発生させる奴の拳を受けて無事だとは思わんだろう?」

「そうかしらー? 曲がりなりにも神とか名乗ってるんですから、これぐらはいけるでしょー?」

「ちっ、ああいえばこういうな」


俺がそう皮肉をいうと、リリーシュの雰囲気が変わった。


「……それはあなたよ。ああだこうだ言って、私がどれだけ頼んでも手伝わなかったくせに。実はリテアにこっそり支援していました? なら最初っから手伝いなさいよ!! なに、私がそんなに嫌いだった!?」

「……そうじゃない。そうじゃないんだ」


いや、最近は嫌いになりかけているが、当時はそうじゃなかった。


「何がそうじゃないよ!! 結局はそうでしょう!! いいから殴らせなさい!! 私はともかく、あなたの優柔不断で、助かったかもしれない命が失われたわ!! 何のための神の力よ!! あんたの農耕の力は、人が食べてこそ意味のあるものでしょう!! なんで出し惜しみしたのよ!! このバカ!!」


そう言って、殴りかかってくるリリーシュを止めもせず、その拳を受ける。


ドズン!!


だが、やっぱり素人の拳だ。

この程度じゃどうということはない。

そして不用意な殴り方をすれば。


「いたっ!?」


拳を痛める。

特にリリーシュは思い切り殴ったので、手が赤くなっている。


「慣れてもない拳を振るうからだ。治しとけ。そういうのは得意だろう?」

「……ふんっ。で、なんで出し惜しみしたのよ?」

「……そうじゃないっていってるだろう? 俺は確かに農耕神と呼ばれてはいるが、別に作物の育成を早くしたり、収穫量を上げるってわけじゃない。それはお前が知っているだろう? 俺ができるのは耕した分だけしっかりと育つぐらいだ。焼け石に水だ」

「……それでも、少しは足しになったのよ」

「それで、元々いた土地の人は見捨てろというのは違うだろう?」

「……」


そう、俺とリリーシュが仲をたがえたのはそこだ。

リテアが大志を抱いて旅立ったのはよかった。

だが、それをある日手伝いたいと言い出して出て行った。


「リリーシュ。お前は俺にリテアが旅立つときに手助けはしないと言ったのに、なぜ意見を変えて手伝った? なぜ俺と村を捨てて出て行った?」

「……」


今まで問うことのなかったことだ。

まあ、気分が変わったと言われればそれまでの話だ。

だから、聞こうとも思わなかったが、こうして友人に暴力まで振るわれればそういうわけにもいかない。


「親が、子供を助けちゃいけないの? あの子がお母さんとお父さんがいればって手紙をくれたのは知っているでしょう?」

「それも何度も話したはずだ。リテアのために、手は貸さないと」

「……本当に頑固ね!!」

「……お前はこらえ性がなさすぎる。まあそこはいいか。だから俺は神としてはでなく、一人の一般人として、多く作れた農作物をリテアに送ってただけだ」

「物は言いようね!!」

「お前がな」

「ふんっ」


そう俺がいうと、くるっと背を向けて立ち去ってい……。


「立ち去るなバカ」

「ふぎゃ!?」


そんな言葉の後、いきなり転ぶリリーシュ。

気が付けば、ユキ殿がリリーシュのすぐそばに立って足を引っかけていた。


「いったー。いったいなにするのよー」

「いったーじゃないわ。お前らがどんな理由でわかれようが、ケンカしようが知ったことじゃないが、自分がやったことには責任もて」

「えー、責任ってなんですかー?」

「ここを穴ぼこを開けた修繕費払え」

「……はい?」


リリーシュは理解するのに一瞬間があったが、すぐにその口が動き出す。


「ここはー、ユキさんがファイデに貸した場所よねー?」

「ああ。その通りだ。リリーシュとの話し合いのためにといわれてな。ま、案の定というか、会議室とか貸し出さなくて正解だったな。で、修繕費払え」

「えー? なら、ファイデに責任が……」

「あるわけないよな。この穴ぼこはリリーシュお前が空けたんだ。それとも違うというか? おいおい、自分のやったことに責任を取るのは、世の中当たり前だぞ?」

「ぬぐぐぐ……」


……すごいな。

リリーシュが言いくるめられている。


「って、ちょっとまってー。ここはユキさんの力で一瞬でなおせるでしょー? それなら……」

「修繕費はいらないとかいうのか? バカだなー、修繕費の中には人件費も含まれるんだよ。人を雇うからな。あと、技術料だな。俺に直させるなら、俺の能力の希少性とその力をこの修復に費やす時間の対価として費用で賄わないといけない。ま、さ、か、リリーシュはウィードでの教会活動はお金を使わずに現物の寄付と奉仕活動だけで賄っているのか?」

「……いや、そうじゃないけどー」

「じゃ、わかるよな。というか、いい加減にしとけ。暴行罪、器物破損、および景観侵害、もろもろの罪でしょっ引くことになる。みんな驚くだろうな。リリシュ司祭がこんな騒動を起こすなんて」


そう言って、ユキ殿は止めといわんばかりに、カメラを取り出す。

録画してたのか。

いや、当然か。


「で、どの面さげて、汝人を愛しましょうとか言うわけ? ね、教えてくんない?」

「あ、あのー、ユキさん。ちょっとおちつきましょー。国際問題になるかもしれないわよー?」

「おいおい。自ら、そっちのバカ二人にこの程度のことで国際問題にしないわよねー。とか言っておいて自分は言うのか? ま、いいぞ、そういうクズな感じは俺と気が合う」

「そ、そうよねー。なら……」

「だからこそ、俺も気兼ねなく、気持ちよくやれる。情報操作もお手の物だからな。で、どうする?」


そこでリリーシュはどうやっても勝てないと悟ったのか、素早く土下座をして謝る。


「すみませんでしたー。でもー、修繕費はちょっと、お金がないのよー。わたしー、司祭だから、お給料が少なくてー」

「じゃ、そこらにいるお友達に、お金でも借りてこい。ちょうど、お金持ちそうなのが沢山いるぞ」

「あれー? ここは、反省しているようだから、これで許してくれるところじゃないのー?」

「それが通じるのは、子供の時ぐらいだな。いや、被害がでているから、子供であっても許されないぞ? 親か保護者が代わりに弁償することになるからな。ああ、自分で埋めるか?」

「おにー!!」

「鬼じゃねーよ。今度はもっとおとなしく話し合うことだな」

「今度なんてないわよー」

「おう。こんなことが二度も三度もあってたまるか。次は大人しく会うって言ってくれて助かったよ」

「ちょっとー、次もあうってー……。だめねー。今回は退散するわー。もともと帰るつもりだったしー。ノノアちゃーん、ヒフィーちゃーん、お金かしてー」

「……あんたねー」

「はぁ、ある意味いい機会ですね。お金は貸しますから、これに懲りて少しは大人しくしてください」


そんなことを言いながら去っていくリリーシュ。

なんだか、毒気を抜かれたな。


「よ。随分豪快な話し合いになったな」

「ああ、助かった」

「まあ、いろいろと大変だな。もうちょっと、わかりやすい話ならフォローのしようもあったが、あの話じゃなー。これが精一杯だな」

「そうでもなければ、今まで仲たがいしていないさ」


私がそういうと、ユキ殿は苦笑いをして……。


「違いない。ま、今後は被害がないようにやってくれ」

「そうしたいが、リリーシュがな……」

「借金がある間は大人しそうだけどな。手紙の件でまた突っかかってくると思うか?」

「いや、それはないな。今日のこの状況では信用がないかもしれないが、リリーシュはあれでちゃんと周りのことは考えている。被害がでても私だけだ。ユキ殿たちに迷惑をかけるのはリリーシュにとっても本意じゃないだろう」

「そうか。なら、安心だ。ま、周りに迷惑をかけそうならここを使えばいい。どうせ軍の演習場で穴ぼこだらけだからな」

「それで、修繕費を請求したのか?」

「まあ、それぐらいはしてもいいだろう。こっちもこの場を用意したんだからな」

「そうだな。さて、私たちは風呂でも入ってくるとする」

「ああ、それがいい。役には立たなかったが一応、ファイデをかばおうとしたからな」


そう言って、見る先には、リリーシュの攻撃で土埃を受けて埃だらけになっているノゴーシュとノーブルがいた。


「「お前のおごりな」」

「ああ、それぐらいならかまわない」


結局、私とリリーシュの仲は変わらなかった。

いや、これまで通りというべきか。




結局変わらない関係。

何事も解決に向かうわけではないという話。


そして、大陸間交流へと戻っていく。



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