第679堀:嫌な事実
嫌な事実
Side:ユキ
和やかに、終わりそうだった話し合いの場に爆弾が投下された。
「イニス。よい。して、何があった?」
「はっ!! 申し上げます!! 量産型魔剣を保管していた倉庫ですが、確認したところただの剣とすり替わっていました!!」
「「「何!?」」」
まあ、何があったかは単純明快。
フラグ回収の流れがとても綺麗でした。
先ず初めに>アグウスト王が俺からジルバ帝国の問題を聞く>アグウスト王が量産型魔剣の管理は注意しなければならん>少し他の話をして、さあ解散って時に……>兵士到着、量産型魔剣がただの剣と……。
流れ的に、一回間を置くという呼吸までいれてくる、ノリツッコミにも似た嫌らしさ。
正直、アグウスト王たちの痛打というより、俺たちにとって痛打かもしれない。
これから、各国に連絡を回さないといけないし、独自で調査も開始しないといけない。
「詳しく話せ」
「はっ!! 本日、宰相様の命で各物資の確認作業が行われることとなり、私たちの隊が量産型魔剣の確認を行うこととなりました。そのため、箱を開けて内容物を確認したところ、挿絵と剣の形が違うことに気が付き、大至急報告に上がった次第です。どれだけの数が入れ替わっているのは、確認中のため、まだわかっていません。続報をお待ちください」
「何かと見間違えた、という可能性は無いか?」
「それは、ほぼないかと思われます。剣の柄に宝玉がなく、ただの剣が納められておりました」
それは見間違えの無いような、違いだな。
んなわかりやすい入れ替えをするとはな……。
「そうか。イニス」
「はっ」
「大至急、ファイゲル老師と共に、現場の封鎖と、確認作業の引継ぎを行い、お前自身の目で、確認してモノを持ってこい」
「仰せのままに。では、失礼いたします。老師」
「はっ。クリーナ。婿殿。学長。皆々様方。色々話足りないですが、失礼いたします」
「すまんな。老師」
「いえ。では、兵士殿。案内頼めるかな?」
「はっ!! こちらです!!」
事態が事態なので、イニス姫とファイゲル爺さんが陣頭指揮を預かり現場を確認するようだ。
こっちも潜入させるか。
『霧華。聞こえるか?』
『はい。聞こえています。しかし、今は会談中では?』
『問題が発生した。量産型魔剣が紛失したらしい。一個だけなのか、沢山なのかはいま、イニス姫とファイゲル爺さんが確認に行っている。霧華も潜入して確認を』
『畏まりました』
霧華はアグウスト城下町の隠れ家で待機をしてもらっていたが、量産型魔剣の確認へと向かってもらう。
そんなことをしていると、横からラビリスがこそっと話しかけてくる。
「ねぇ。アグウストの王城の下はダンジョン化しているんじゃないの? 監視はなんで?」
「アグウストの方は、城下町の方だけだ。ヒフィーやエクスの関係があったから、最小範囲でそのままだった」
「ああ、そういえばそうだったわね」
「ついでに引き継ぎもしたからな、イフ大陸の監視についてはエクスのノーブルの管轄だ」
そうじゃないと、スティーブたちが過労死するわ。
「ん? エクスがどうかしたのか?」
俺とラビリスの話が、アグウスト王の方へ漏れ聞こえたようだ。
「いえ。量産型魔剣をどこかに運ぶにしても、ジルバの方へ流れるのは何としても阻止したほうがいいでしょう」
「それは当然だな」
「アグウストがジルバと争っている小国を支援していると思われかねません」
「ああ、だから、エクス王国か。国境を閉じろということか」
「ええ。公爵派が何かした可能性もありますし、この事態を知って何も動かなかったというのは、不味いでしょう」
「その通りだな。至急国境へ連絡を……」
ふう、ごまかせた。
間違ったことも言ってないし、問題ないだろう。
と、そんなことより、ここは一旦出直した方がいいだろう。
「アグウスト王。お忙しい所すみませんが、これ以上私たちがこの場にいるのは不味いでしょうし、話の続きをするというわけにもいきませんから、今日の所は出直します」
「あ、ああ。そうだな。これ以上は不味いか」
そんな感じで、俺たちはまた客室へと戻っていくことになった。
「で、これからどうするの? 一応、話すべきことは終わったのよね?」
ラビリスは部屋のベッドに寝転がりながらそう聞いてくるが、俺が答える前に、アスリンたちが答える。
「でもー、ラビリスちゃん。まけんがーとか言ってたよ?」
「量産型の魔剣が流出したみたいなのです」
「まったく……ガタガタですね」
そう、次なる問題が出てきた。
量産型魔剣のことだ。
シェーラと同様に俺も頭が痛い。
「ねえ。ジェシカ。とりあえず。アグウストへの用事は終わったってことでいいのかな?」
「はい。リーアのいう通り。アグウストの問題は一応解決しました。次は、量産型魔剣の話ですね。本来であれば、アグウスト国内の問題で、手出し無用というか、わざわざ苦労を共にする必要はないのですが……」
「大陸間交流の障害となる可能性が高いといいますか、ジルバ帝国が量産型魔剣でもめていますから、こちらで何か対処しないと不味いでしょう」
「……と、言っても。僕たちがアグウスト国内で量産型魔剣の追跡なんてできないよ? どうするつもりだい?」
エージルはそういって、俺に視線を向けてくる。
「とりあえず、関係各所に通達だろう。ノーブルの方にはより詳しく。しかし、今までの流れを見て考えると、あの公爵は囮って感じか?」
「囮ですか?」
「そう。あの公爵を囮に、量産型魔剣の確保を行うって感じかな」
「なんで、そんな真似を?」
「さあ、まだただの予想だしな。でも、戦力を増強するのなら、あのフール公爵よりも、量産型魔剣を確保する方がいいだろう?」
あのフール公爵が全権を握るのはどう見ても、被害が拡大するだけだし、大将が全部を管理するというのはあり得ない。
恐らく、部下の兵站管理とかが動いているとみていいだろう。
これが、フール公爵の指示の下、動いたのならば大した奴といっていいが、そもそも、俺たち使者に対してあの態度だから、まずありえないだろう。それに、俺たちに敗れて、量産型魔剣の流出がばれたんだからな。
フール公爵が企んだのなら、この時点で戦力増強は頓挫だ。
「ふむ。まあ、公爵よりも量産型魔剣を確保した方がいいってのは同意だね」
エージルがそう言うと、他の皆も頷く。
あのアホよりも、魔剣の方が戦力になるというのは同意のようだ。
「じゃ、俺は今からノーブルの方に連絡をとるから、ジェシカたちは各国の方へ通達を」
「「「了解」」」
「ラビリスたちや、カグラたちは周りを警戒。盗み聞きされるようなことはないが、やろうとしている連中がいれば確保を」
「「「はい」」」
俺はそう指示して、ここの管理人の方へと連絡を取る。
「もしもし。ユキです」
『はい。こちらノーブルだ』
「今、大丈夫か?」
『ああ。問題ない。執務室だ。で、アグウストの方はどうだ? 上手くいったか?』
「アグウストの公爵派の方は、上手く行ったと思う。いきなり喧嘩を売って来たんで、公爵派を捕縛して、王家の連中に引き渡して、今後の交渉は王家とって感じで」
『予定通りだな。外務省設立の方はどうだ』
「そこも、同意してもらって、サインも貰った」
『おお。なら、さっそく予定をすり合わせて、会議を始めるべきか』
ここで、話が素直に終わればよかったんだが、そうもいかないんだよなー。これが……。
「残念ながら、そうもいかない。その公爵派を押さえたあとに、問題がでてきた」
『問題? なんだ?』
「アグウストで保管していた、量産型魔剣がただの剣とすり替えられていた」
『なに!? 詳細は?』
「現在、イニス姫とファイゲル老師が出張って、直々に調査中で、詳細は分からん。ジルバの小国との戦いに何か関係あるかもしれない。というか、そっちは量産型魔剣の監視とかしてたのか?」
『自国の方は監視しているが、流石に、他国の方までは監視できていない。というか、ユキが作った拠点をそのまま監視している感じだからな』
ああー、やっぱりそうか。
そもそも、このイフ大陸は魔力枯渇現象が酷く、迂闊に魔力を拡散するようなこと、主に戦争での大量死や、ダンジョン化による魔力の充実などを迂闊に行えば、スタンビード、魔物の大量発生、大氾濫が起こる可能性がある。
そのため、俺たちはイフ大陸で不必要にダンジョン化を行わず、限られた地域でしか、そこ掘れワンワンシステムを利用した監視体制は敷けてないのだ。
「わかった。調べられていないのは当然だな。それで調べてほしいことがある。アグウストの量産型魔剣が消えた時期は、そんなに昔というわけでもないはずだ。だから……」
『ジルバに送るには、エクスを通すのが一番の近道。すでに通り過ぎたという可能性もあるが、まだ輸送している途中という可能性もあるか』
「話が早くて助かる。それと、こちらからも、外交ルートでアグウストでの量産型魔剣の流出について知らせるが、そちらはそちらで調査を頼む。こっちはあまり調査に割ける人員がいないからな」
本当に、うちも一杯一杯だから。
こんな調査してる暇ないからね。
外務省設立の準備もしないといけないんだからさ。
『いや、こっちも人員は限られているんだがな……。ま、イフ大陸の管理は私の管轄だ。請け負った。で、ユキたち自身はどう動くつもりだ?』
「一応、アグウストの量産型魔剣の流出事件の詳細を聞いたあと、各国に動くって感じになるな。まあ、恐らく、ジルバへの抑えに回るだろうな」
『……まさか、この量産型魔剣の流出の件、ジルバのいざこざと繋がっているとか言わないだろうな?』
おう、俺と同じ思考ですな。
「俺も考えた。だが、まだ証拠はない。まずは地道に調べるしかない。だから、流出した量産型魔剣の調査だ。俺たちウィードは知らせるだけで、各国の情報を聞くのはノーブルだからな。よろしく頼む」
『わかった。厄介事にならないことを祈りたいがな。こっちもこっちで外務省設立会議の案件をまとめている最中でな』
「そりゃ、こっちも同じだ。というか、一体どれだけ量産型魔剣ばら撒いたんだよ? お前のせいだからな?」
お前が祈るなよ。
量産型魔剣をばらまいた張本人だろうに。
『……いうな。現実逃避ぐらいさせろ。とは言え、報告は上げているだろう? 量産型魔剣を他所へとばら撒いた総数は1万と5千だ。各国に2千本。小国に合計5千ってところだな』
「小国群だけで、5千本か。ジルバと争っている小国群が集めているのはどのぐらいだろうな?」
『事前情報だけでいいのなら。6大国、私のエクスを除く、各国は約2500本は確保しているという話はでていた。まあ、申告だからな、多くしたり少なくしたりはあるだろうが、これをもとに考えると、2500が残りの本数になるな。だが、残りの魔剣をすべて集められるわけもなし。量産型魔剣を買いあさるとしても、小国だからな。精々1千本集めるのが精一杯だろうな』
「あー、そう言えば、小国の方は、ホワイトフォレストを除く5大国に魔剣は回収されてたっけ?」
『ああ、どこの国も反乱を恐れたからな、量産型魔剣の回収を影響下にある小国に頼んでいた。まあ、実質命令だろうが、報酬は破格だったからな。結構集まったわけだ』
「とりあえず、話は分かった。こっちもイニス姫から情報を聞いたら、一旦ウィードに戻って、どう動くかみんなと考えてみる。そっちはそっちで量産魔剣の確認や追跡案がないか模索してみてくれ」
『ああ。わかった。とりあえず、各国の在庫確認ぐらいだろうがな』
そういって、ノーブルとの情報交換が終わる。
はぁ、在庫確認か。
ま、それしかないよな。
さて、イニス姫の在庫確認は明日にはおわるかねー。
イフ大陸には超微妙兵器が拡散されている事実が判明。
当事者ということで、またユキたちは動き出す!!
さあ、一体これからどうなるのか?




